音楽

2009年12月25日 (金)

演奏会に行ってきました「クラシカル・プレイヤーズ東京 バロック de クリスマス ビーバー、コレッリ、ヴィヴァルディ、バッハ、テレマン」(2009・50)

 お陰様でブログに対するアクセスが25,000を超えました。ご愛読ありがとうございます。これからもブログを書き続けますので、今後ともご愛読よろしくお願いします。

 東京文化会館小ホール(東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅下車徒歩7~8分)

《プログラム》

ビーバー:「戦争(バッターリア)」

コレッリ:クリスマス・コンチェルト(合奏協奏曲 ト短調 Op.6-8)

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲「冬」ヘ短調 Op.8-4Rv.297

J.S.バッハ:オーボエ・ダモーレ協奏曲 イ長調 BWV1055(編曲版)

J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043

テレマン:フルート、ヴァイオリン、チェロのための協奏曲 イ長調 TWV-53:A2(ターフェルムジーク第1集)

《印象 感想など》

 私の席:F列22番(全席指定)ほぼ満席 曲の始めに、有田正広が進行役でソリストとともに曲の説明を行う。(プログラムに曲の解説は無し)。

ビーバー:「戦争(バッターリア)」

Ⅰ.ソナタ  Ⅱ.アレグロ(歩兵たちのだらしない散兵戦  Ⅲ.プレスト  Ⅳ.軍神マルス  Ⅴ.プレスト  Ⅵ.アリア  Ⅶ.戦い  Ⅷ.負傷者の哀歌(アダージョ)

 指揮者無し。弦のみの演奏。コントラバス、中央後ろ。生き生きとした音楽を展開。

 Ⅱ 不協和音的な音楽。  Ⅲ 早い演奏。主にコンミス(ヴァイオリン)の演奏。そしてコントラバスとの掛け合い。  Ⅷ アダ-ジョ。帰ってくる様子の音楽。

 ビーバー(ハインリヒ・イグナーツ・フランツ・フォン・ビーバー)1644~1704。

 オーストリアのヴァイオリニスト、作曲家。17世紀後半のドイツ語圏におけるヴァイオリン音楽の代表者。おそらくウイーンでシュメルツアーに師事。1670年以降はザルツブルクの領主司教に仕え、1679年に副楽長、1684年に楽長に昇進。1690年には貴族に叙された。ヴァイオリン技巧の発達に多大な貢献をなし、代表作には《ロザリオのソナタ》がある。(以上 新編音楽小辞典(音楽之友社刊)

コレッリ:クリスマス・コンチェルト(合奏協奏曲 ト短調 Op.6-8)

レコード等ではよく曲。

 Ⅰ.ヴィヴァーチェ-グラーヴェ  Ⅱ.アレグロ  Ⅲ.アダージョ・アレグロ・アダージョ  Ⅳ.ヴィヴァーチェ  Ⅴ.アレグロ  Ⅵ.パストラーレ ラルゴ

 コレッリ(アルカンジェロ・コレッリ)1653~1713。イタリアンの作曲家、ヴァイオリニスト。ボローニャでヴァイオリニストとして研鑽を積んだ後、ローマに拠点を移し、パンフィーリ枢機卿、オットポーニ枢機卿、元スエーデン女王クリスティーナといった貴族の宮廷に仕え、作品を提供したり、演奏会を催した。作品の中心はヴァイオリン曲であるが、生前出版された5つのソナタ曲集(トリオソナタOp1からOp4,Op.5)死後出版されたコンチェルト・グロッソ集Op.6はヨーロッパ各地に広く流布し、後期バロックの器楽様式、ヴァイオリン奏法などに関して後世においても大きな影響をおよぼした。(新編 音楽小辞典 音楽之友社刊)

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲「冬」 ヘ短調 Op.8-4 RV.297

 Ⅰ.アレグロ ノン モルト  Ⅱ.ラルゴ  Ⅲ.アレグロ

 有田のコメントでは、1楽章の出だしは、寒さで歯がカチカチする様子を描いたとのこと。ソロ・ヴァイオリンはパウル・エレラ。生き生きとした活気に満ちた演奏。流れるキビキビとした演奏。アーノンクールの古楽器による演奏を思い出す

 ヴィヴァルディ(アントニオ・ヴィヴァルディ)1678~1741。

 イタリアの作曲家。ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂でヴァイオリニストを務める父親から音楽の手ほどきを受けるが、1693年から聖職者になるための教育を受け、1703年司祭に叙任。しかし音楽活動に専心するため、教会での務めには熱心ではなかったとされる。1703年ヴェネツィアのピエタ養育院の音楽教師に任用、同施設で暮らす少女たちの音楽教育を担当するほか、付属礼拝堂での奏楽用作品を書いた。中断はあるものの、彼は40年までピエタのために数多くの器楽曲やオラトリオ《ユディータの勝利》などの宗教音楽を作曲した。その評判は、トリオソナタOp.1(1705)を皮切りに、協奏曲集《調和の霊感》(Op.3) (1711) ,《和声と創意への試み》Op.8(1725)などの出版で国際的な名声を獲得。彼が駆使した急-緩-急の3楽章構成によるソロ・コンチェルト形式もヨーロッパ各地に広まった。バッハも彼の作品編曲を通じてこの形式に精通したことはよく知られている。またサンタンジェロ歌劇場を基盤にオペラ活動にも没頭し、約50曲(21曲が現存)のオペラを手がけている。作曲ばかりではなく、劇場や歌手の手配といった興行活動もおこない、ヴェネツィア、マントヴァ、フェッラーラなど北イタリアを中心に活動した。しかしこの分野で成功することはなく、1741年国際的な成功を夢見て旅立ったウイーンで貧困のうちに没した。

J.S.バッハ:オーボエ・ダ・モーレ協奏曲 イ長調 BWV1055(編曲番)

 Ⅰ.アレグロ  Ⅱ.ラルゲット  Ⅲ.アレグロ

 有田、三宮コメント。元はチェンバロ協奏曲。三宮がオーボエ・ダ・モーレ協奏曲に編曲、復権した

 

 オーボエ・ダ・モーレは、ややひょうきんな音。洋梨形。

オーボエ・ダ・モーレ

 オーボエ属の木管楽器。「愛のlオーボエ」という意味。オーボエより単3度低く、管体全長は約63㎝。イングリッシュ・ホルンと同様、下端が球根状になっている。バッハに用例があるが、常用楽器ではない。(新編 音楽小辞典 音楽之友社刊)

バッハ(ヨハン・セバスチャン・バッハ)1685~1750。

 ドイツの作曲家。エアフルトの町楽士だった父と、毛皮加工職人の娘だった母との間に8人兄弟の末っ子として生まれる。10歳までに両親と死別した後、オールドルーフでオルガニストを務めていた長兄ヨハン・クリストフのもとに引きとられ、音楽家としての研鑽を積む。1700年には、地元のラテン語学校からリューネブルクのミカエル教会の附属学校に給費生として転校、聖歌隊員として活動するかたわら、大都市ハンブルクの音楽文化にも触れる。1703年3月以降、一時ワイマールで宮廷楽士を務めた後、同年8月、アルンシュタットの新教会のオルガニストに就任。1705年にはリューベックに旅行し、ブクステフーデの演奏を聴く。1707年にはミュールハウゼのブラージウス教会オルガニストに転任、同年、又従兄弟のマリア・バルバラ・バッハと結婚する。1708年、ワイマールに宮廷オルガニスト兼楽士として転任、多くのオルガン作品を生みだす。また、当時ドイツでは目新しかったイタリアの協奏曲様式に接し、大きな影響を受ける。1714年楽士長就任にともない教会カンタータの作曲も職務の一環となるが、やがて宮廷内の権力闘争を背景に君主との関係が悪化、1717年にはケーテンに宮廷楽長として転任する。同地では理解ある君主と有能な音楽家たちに恵まれ、宮廷のための祝賀音楽(大半が消失)やチェンバロ曲(《平均率クラヴィーア曲集》第1巻ほか)が多数成立、また正確な作曲年代こそ不明だが、室内楽や管弦楽作品のうち相当数が同地で生まれたとみられる。なお1720年には妻が他界、翌年宮廷歌手のアンナ・マグダレーナ・ヴィルケと再婚する。やがてケーテンにおける政治的確執を背景に、宮廷の財政事情にかげりが見えはじめる。そのこともあってか、かねてより息子たちの大学教育をつよく望んでいたバッハはライプティヒのトーマス・カントル職が空席となったのを機に応募を決意、1723年、採用される。ライプティヒでのバッハの任務は、主要教会における毎日曜日および祝祭日における礼拝音楽の提供であり、このため教会カンタータ(これ以前に由来するものも含め約200曲が現存)や受難曲が作曲された。またカントルは市の音楽監督も務めていたため、市の公的行事の音楽も担当した。1729年にはコレギウム・ムジクムの指揮も引きうけ、コーヒー店で市民に音楽を提供するかたわら(チェンバロ協奏曲など)、《クラヴィーア練習曲集》(全4巻)など、自作品の出版にも力を注ぐ。その一方で行政当局とは衝突が絶えず、またもや転職の可能性を模索、ザクセン選定候ドレスデン宮廷での地位の獲得をねらって一連の表敬音楽を献呈し、1736年には宮廷作曲家の称号を授与される。晩年は《フーガの技法》など、抽象的な音楽構成の可能性を追求した一連の体系的作品にとりくむが、1749年に失明、翌年受けた眼科手術の失敗で他界した。

 バッハはバロック音楽の頂点をなす作曲家であり、のちの西洋音楽の歴史にたいして与えた影響は計り知れない。既存のさまざまな様式を磨き上げ、独創的な仕方で総合することによって表現の地平を拡大し、またパトスと情緒の深みを極めると同時に、最新のギャラント様式にたいしても目配りを怠らなかった。しかしバッハがのちの音楽家たちにとってつねに新たな霊感の源泉でありつづけてきた最大の理由は、音楽のもっとも純粋で本質的な核心を、人間経験の生きた可能性として具現化する彼の比類のない手腕にある。(新編 音楽小辞典 音楽之友社刊)

J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ長調 BWV1043

 Ⅰ.ヴィヴァーチェ  Ⅱ.ラルゴ・マノン・タント  Ⅲ.アレグロ

 有名な曲。快活な演奏。ヘンリック・シェリングのLPで楽しんできました。

テレマン:フルート、ヴァイオリン、チェロのための協奏曲 イ長調

 (ターフェルムジーク 第1集)

 Ⅰ.ラルゴ  Ⅱ.アレグロ  Ⅲ.グラツィオーソ  Ⅳ.アレグロ

ターフェルムジーク 「食卓音楽」の意で、17世紀以降宴会用音楽にたいして用いられた言葉。もっとも有名な例はテレマンの器楽曲集で、1733年刊。原題はフランス語で《ミュジック・ド・タブル》。全3巻で、いずれも序曲(管弦楽組曲)、四重奏曲、協奏曲、トリオ・ソナタ、ソロ・ソナタ、終曲からなる。(新編 音楽小辞典 音楽之友社刊)

テレマン(ゲオルク・フィーリップ)1681~1767。

 バロックから古典派への移行期を代表するドイツの作曲家。聖職者の家庭に育ち、法律を学ぶべく1701年にライプティヒの大学に入るが、音楽的才能を一気に開花させ、コレギウム・ムジクムの創設やオペラ監督、大学教会オルガニストへの就任を通して既成の枠を超えた活動を繰り広げた。ゾウラウやアイゼナハ宮廷、フランクフルト市の職を経て、1721年には終生の地となるハンブルク市の音楽監督に就任。聖俗両分野の活動を手中におさめ、市に比類ない文化的興隆をもたらした。啓蒙思想を背景に楽譜出版にもいちはやくとりくみ、平易さと力強さを兼ねそなえた音楽作りをめざしたことで、当時絶大な人気を博す。膨大な数の作品を残しており、各国の器楽様式とジャンルを百科全書的にまとめた《ターフェルムジーク》や家庭音楽のための《忠実な羊飼い》が有名だが、ハンブルク・オペラのための《ピンピノーネ》、受難曲、教会カンタータなどの声楽曲も歴史的に重要な位置を占めている。(新編 音楽小辞典 音楽之友社刊)

《プロフィール》

フルート&音楽監督:有田正弘

 最新の研究で名曲に新たな光を当てる日本古楽界の至宝。日本の古楽界をリードする有田正弘は、国内外の数々のコンクールで輝かしい受賞歴をもち、クイケン兄弟やトレヴァー・ピノックなど世界的なアーティストともしばしば共演。古楽器と現代楽器の双方を駆使した広範な活動を繰り広げる、日本が世界に誇る国際的な音楽家の一人。

 1989年には「東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ」を結成し、指揮者としても活動を開始。2006年には、モーツァルトのフルートと管弦楽のための作品を全曲録音するとともに、東京芸術劇場で同作品の全曲演奏会を行い、“モーツァルト・イヤー”の大きな話題となった。以後、東京芸術劇場で定期的に演奏会を開催。今年5月には、交響曲第41番《ジュピター》、フォルテピアノ独奏にピート・クイケンを迎えてのピアノ協奏曲第21番による「東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ」東京芸術劇場公演のCDも発売され、好評を博している。2009年4月には、ロマン派をレパートリーとする日本初のオリジナル楽器によるオーケストラ「クラシカル・プレイヤーズ東京」を結成。新たな音楽的創造を常に探求し、古楽器と現代楽器の枠を超えた新たな音楽的創造の領域へとさらに活動の場を広げている。また、演奏家としてばかりではなく、研究者としても世界の注目を集めており、国際的な学会やレクチャーでその研究成果を高く評価されている。

 現在、精力的な演奏活動や研究活動とともに、昭和音楽大学、桐朋学園大学で後進の指導にあたっている。

ヴァイオリン:戸田 薫(かおり)

 愛知県生まれ。名古屋市立菊里高等学校音楽科を経て東京藝術大学を卒業。ヴァイオリンを若林正伸、林茂子、景山誠治各氏に、ピリオド楽器による演奏法について若松夏美女史に師事。1992年山梨古楽コンクールにて最高位受賞。同年オランダのデン・ハーグ王立音楽院に留学。シギスヴァルト・クイケン、エリザベス・ウォルフィッシュのもとで研鑽を積む。1996年ディプロマ取得。これまでに、バッハコレギウムジャパン(鈴木雅明指揮)、ラ・プティット・バンドシギスヴァルト・クイケン指揮)をはじめとしたオーケストラに参加、また室内楽ではアンドレアス・ショル、アニュエス・メロン、フィラソワ・フェルナンデスなど多くのミュージシャンとともに数々のコンサート、レコーディングをこなしてきた。

 2001年、パウル・エレラとともにアンサンブルグループ「アニマ・コンコルディア」を結成。17世紀、18世紀のトリオソナタを中心とした室内楽に焦点を当てた演奏活動にも力を注いでいる。

 桐朋学園大学古楽科講師。富山古楽音楽協会主催古楽講座で講師を務めるほか、名古屋市立菊里高等学校音楽科で室内楽指導にあたっている。クラシカル・プレイヤーズ東京(有田正広指揮)コンサートミストレス。

オーボエ:三宮(さんのみや)正満

 1971年埼玉生まれ。中学時代、バロック・オーボエのサウンドに魅了され、本間正史氏に師事。その後、モダン・オーボエを本間正史、吉成行蔵、殻崎耕三の各氏に師事。1995年、武蔵野音楽大学卒業。在学中より演奏活動を始め、数々のオーケストラで演奏。バロック&クラシカル・オーボエプレイヤーとして、ソロ、室内楽、オーケストラを中心に活動。アンサンブル「ラ・フォンテーヌ」のメンバーとして1997年、古楽コンクール(山梨)最高位、2000年、ブルージュ国際古楽コンクール第2位受賞。1996年より「バッハ・コレギウム・ジャパン」J.S.バッハ=カンタータ全曲レコーディングプロジェクトに参加し、数々のオーボエ・オブリガートを演奏。2001年「オーケストラ・シンポシオン」とルブランのオーボエ協奏曲を本邦初演。同年サイトウキネンフェスティバル・バッハプログラムにソリストとして招かれる。2002年より東京藝術大学古楽科講師として後進の指導にもあたっている。・・・・

 現在「バッハ・コレギウム・ジャパン」及び「オーケストラ・シンポシオン」主席オーボエ奏者、管楽合奏団「カライドスコープ」、「ラ・フォンテーヌ」他メンバー。東京藝術大学古楽科講師。

ヴァイオリン:パウル・エレラ

 ヴェネズエラ、カラカス市出身。ジュリアード音楽院のマスターコースでマーガレット・パーディ、ルジェーロ・リッチ、オーグスティン・ドュメイの各氏に指導を受ける。ヴェネズエラ国内ではシモンポリパルシンフォニーオーケストラのメンバーを10年間務め、その間主要音楽祭ではオーケストラのソリストとして多くのコンサートをこなした。

 1988年来ピリオド楽器の演奏法に焦点をあて、イギリスのロイヤルロンドンアカデミーでバロック音楽の分野において更なる研鑽を積んだのち、オランダのデン・ハーグ王立音楽院へ留学。シギスヴァルト・クイケンに師事し、1996年ソリストディプロマを得て卒業。・・・・・

 現在は日本に本拠を移し、バッハ・コレギウム・ジャパン、クラシカル・プレイヤーズ東京(有田正広指揮)などのグループとともに演奏活動を行っている。・・・・

チェロ:山本 徹

 東京藝術大学を経て、同大学院古楽専攻を終了。これまでにチェロを土肥敬、河野文昭、北本秀樹、鈴木秀美の各氏に師事。また藝大バッハカンタータクラブにて小林道夫氏の指導のもと研鑽を積む。バッハ・コレギウム・ジャパン、オーケストラ・リベラ・クラシカ、レ・ポレアード、クラシカル・プレイヤーズ東京(有田正広指揮)、など主要な国内のオリジナル楽器オーケストラのメンバーとして、公演・録音・海外ツアーに多数参加する一方、チャイコフスキーやショスタコーヴィチのチェロ協奏曲をオーケストラと共演するなど、モダン・オリジナル楽器双方の分野で活動を展開している。2006年、第20回古楽コンクール〈山梨〉第2位、・・・・2008年、第16回ライプティヒ・バッハ国際音楽コンクールのチェロ部門で第2位を受賞。

クラシカル・プレイヤーズ東京

 フルート&音楽監督:有田正広

 オーボエ:三宮正満

 ヴァイオリン:戸田 薫、パウル・エレラ、大内山 薫、荒木優子

 ヴィオラ:成田 寛、深沢美奈

 チェロ:山本 徹、長谷川弘樹

 コントラバス:諸岡典経

 チェンバロ:有田千代子

 (今回のコンサートは選抜メンバーによるものです)

 有田正広音楽監督、指揮のもと、日本最初の本格的古楽器オーケストラ「東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ」は1989年4月に結成され、2009年3月公演をもって20年の歴史の幕を閉じた。その後「東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ」のメンバーを中心に2009年6月に「クラシカル・プレイヤーズ東京」と改称し、バロック、古典派にロマン派のレパートリーを加え、活動を開始。この第一回目の公演はメンデルスゾーンの生誕200年記念としてヴァイオリン協奏曲とベートーヴェンの「英雄」交響曲を有田正広氏の最新の研究成果を基にピリオド楽器で演奏された。「クラシカル・プレイヤーズ東京」の活動は、歴史的資料に基づいた解釈とその演奏という、日本のクラシック音楽界に新しい一条の光を当て、日本の管弦楽演奏史のエポックメイキングとなっている。

   

   

 

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2009年12月17日 (木)

演奏会に行ってきました「第21回サンシティ市民合唱団定期演奏会 ブラームス:ドイツ・レクイエムほか」(2009-49)

2009年12月13日(日)14:00開演 サンシテイホール(JR武蔵野線南越谷駅・東武伊勢崎線新越谷駅徒歩3分)サンシテイホール大ホール〈第21回サンシティ市民合唱団定期演奏会〉

 我が越谷市の合唱団の演奏会が近くでありましたので聴いてきました。

《サンシティ市民合唱団》 団長 平松信之

 本日はご来場賜りまして誠にありがとうございます。

 お陰様で第21回定期演奏会を迎えることが出来ました。厚く御礼申し上げます。

 今回はブラームスの作品を演奏いたします。前半はソリストによる独唱をピアノ伴奏にて演奏します。後半はブラームスの代表的な「ドイツレクイエム」を二人のピアニストの伴奏により演奏いたします。この曲は亡くなった母親に捧げた曲とも言われています。時間をかけ丁寧に作られていて美しいメロディが随所に見られます。

 今年は宇宙ステーションの打ち上げ成功から大リーグの松井選手のMVPなど明るい話題があった反面、世の不況で非常につらい思いをされている方々がおられます。みんなが楽しく平和に暮らせる世の中になるよう願いを込めて歌います。どうぞご静聴ください。

《プログラム》

第一部 ヨハネス・ブラームス

 ナイチンゲールに寄せて Op.46の3

 乙女は語る Op.107の3

 乙女の歌 Op.107の5

 我が恋は緑(若い歌Ⅰ) Op.63の5  独唱:和泉純子  ピアノ:村本麻里子 

歌曲集「4つの厳粛な歌」 Op.121

 1.人におこることは

 2.私は振り返って見た

 3.おお死よ、おまえはなんと惨いことか

 4.たとえ私が人や天使の言葉で語ろうとも  独唱:金沢 平  ピアノ:長谷川真美

第二部

 ~ヨハネス・ブラームス:自身の編曲による自筆楽譜に基づいた

  4手のピアノと2人の独唱者と合唱の為の~

 ドイツ・レクイエム Op.45 

  第1楽章 悲しんでいる人は幸いです (マタイによる福音書:第5章 第4部)

  第2楽章 人はみな草のようです (ペテロの第1の手紙:第1章 第24部)

  第3楽章 主よ、お教えください (詩篇:第39篇 第4節)

  第4楽章 万軍の主よ、あなたの住まいはなんと麗しいことでしょう (詩篇:第8 4編 第1~2節)

  第5楽章 このように、あなたがたにも不安があります (ヨハネによる福音書)

  第6楽章 この地上に永遠の都はありません (ヘブル人による手紙:第13 第14節)

  第7楽章 今から後、主にあって死ぬ人は幸いです (ヨハネの黙示録:第14章 第13節) 

  指揮:黒川和伸

  ピアノ:長谷川真美  遠藤祐子

  独唱:和泉純子(ソプラノ)  金沢 平(バリトン)

  合唱:サンシティ市民合唱団

《印象 感想など》

 私の席:21列8番(自由席)

ヨハネス・ブラームス:ナイチンゲールに寄せて Op.46の3

 独唱:和泉純子

 ピアノ:村本麻里子

 透き通った声。よく通る。

《訳詞》

 作詞:ルートヴィッヒ・ヘルティ

 恋に燃える歌の豊かな響きを

 花咲く林檎の木の枝から

 そんなに声高らかに降り注いでくれるな、

 おお、ナイチンゲールよ!

 

 お前の歌いかける愛らしい声で

 私の愛が目覚める。

 なぜなら、お前の優しい嘆きが

 私の心の底までぞくぞくさせてしまうもんだから。

 そうなると、今度は私が眠れなくなり、

 死人のように青ざめ、やつれ、

 濡れた眼差しで

 空をじっと見つめるのだ。

 

 ナイチンゲールよ、逃げてくれ。

 緑の闇の中へ、森の木立の中へ、

 そうして巣の中で、貞節な妻に口づけしてやるがいい。

 逃げ去ってくれ、逃げ去ってくれ!

 《プログラムノート》 和泉純子

 ヘルティ(1748~1776)の詩に対して、1868年の夏に作曲され、「4つの歌曲」作品46として出版された。ナイチンゲールの歌に妻への愛を思い出し、苦悶する男の心を歌っている。伴奏のシンコペーションの用法は不安な感じを出し、歌声のリズムの多様さは、ヘルティの一癖ある詩に由来する。甘い魅惑的な憂愁にあふれた作品である。

乙女は語る 作品107の3

 作詞:オートー・フリードリッヒ・グルッペ

 燕よ、話しておくれ、

 あんたが一緒にその巣を作った相手は

 昔からの夫なの?

 それともその人とは

 最近ねんごろになったばかりなの?

 ねえ、朝っぱらから

 そんなに仲良く

 あんたたち何をさえづっているのさ?

 ねえ、あんたはやっぱり、

 お嫁さんになったばかりなんでしょう?

 

乙女の歌 作品107の5

 作詞:パウル・ハイゼ

 夜、紡ぎ部屋では

 娘たちが歌い、

 村の若者たちが笑い、

 紡ぎ車のすばやく回ること!

 恋人に喜んでもらおうと、

 僕の恋はにわとこの繁みのように緑色で、

 僕の恋人は太陽の美しく、

 その太陽はにわとこの繁みの上に光を注ぎ、

 繁みを香りや喜びで満たす。

 めいねいの娘が嫁入り支度のそばで糸を紡いでいます

 婚礼の鐘が鳴るのも

 そう遠くないことでしょう。

 誰もかれも私に無愛想で、

 私のことなど構ってくれない。

 私のこんな不安な気持ちを

 誰に訴えたらいいのでしょう?

 涙が、

 私の顔をこぼれ落ちますー

 私は何のために糸を紡ぐのでしょう?

 それがわからないのです!

《プログラムノート》 和泉純子

 ブラームス(1833~1896)の歌曲で最後期の作品に属する、1886年作曲の5つの歌曲に含まれる作品。

 「乙女の歌」はハイゼ(1830~1914)の詩による民謡調の歌。紡ぎ車のまわる音を背景に、嫁入り支度に大わらわな仲間の娘たちを眺めながら、孤独の嘆きを歌う娘の歌である。

 「乙女は語る」はグルッペ(1804~76)のこれも民謡風の詩により、結婚への憧れを歌うあどけない少女の歌で、2節の有節歌曲であるが、伴奏は異なっている。

我が恋は緑(若い歌Ⅰ) 作品63の5

 作詞:フェリックス・シューマン

 僕の魂は尚チンゲールの翼を持ち、

 花咲くにわとこの中を飛びかい、

 花の香りにうっとりして、歓声をあげ、

 恋の陶酔をあまた歌う。

《プログラムノート》 和泉純子

 作品63は9曲の歌曲からなり、1874年に出版された。その第5曲目「我が恋は緑」は18734年12月24日、クリスマス前夜に作曲された。作詞者は作曲家シューマンの最後(8番目)の子、フェリックス・シューマン(1854~1879)である。ブラームスがこの曲を作曲した時、フェリックスは19歳だった。これにつけられた音楽は、詩の幼稚さや感情表現の不足を十分におぎなった傑作といえるもので、楽しくしかも情熱にあふれていて、いかにも青春を謳歌したものといえよう。ブラームスはこの曲を、つぎの作品63の6と一緒にして「若い歌 Junge Lieder」と呼んだが、まさにこの曲はこの名に恥じない作品である。

歌曲集「4つの厳粛な歌」

 1.人におこることは

 2.私は振り返って見た

 3.おお死よ、おまえは何と惨いことか

 4.たとえ私が人や天使の言葉で語ろうとも

 独唱:金沢 平

 ピアノ:長谷川真美

 張りのある、よく通る声。

《プログラムノート》 山崎純子

 ブラームス最後の独唱歌曲。ブラームスの死の前年1895年5月7日、ブラームスの63歳の誕生日に完成した作品である。テキストは聖書からとられ、個人的な内面告白と考えらていたリートの世界に、普遍的な宗教感情を代表する聖書が持ちこまれたことが異例であるといわれている。

 この日、彼の元に生涯変わらぬ敬意を寄せ続けていたクララ・シューマンから、誕生日を祝う手紙が届いた。そのクララがこの年、絶望的な病に倒れたことは、ブラームスにとって一層の無常観をつのらせた。(クララはこの曲の完成2週間後の5月20日にこの世を去っている)。母の死に「ドイツレクイエム」を捧げたように、ブラームスの心は再び宗教的なものに向かい、普遍的でありながら同時に個人的な感情を聖書の中に見出したのである。ブラームス自身 病におかされ、自らの死の予感の中で、それと対話し、人間にとって死とは何かを深く追求しようとしていた。第1曲から第3曲までは、死を主題として虚無的な厭世観の中に、死と対峙している人間が語られる。第4曲になって一切の信仰も知恵も、それなしには空しい大いなる賛歌となって、生の肯定が歌われる。

第二部

 ~ヨハネス・ブラームス自身の編曲による自筆譜に基づいた

     4手のピアノと2人の独唱者と合唱のための~

     ドイツ・レクイエム Op.45

 第1楽章 悲しんでいる人は幸いです

 第2楽章 人はみな草のようです

 第3楽章 主よ、お教えください

 第4楽章 万軍の主よ、あなたの住まいはなんと麗しいことでしょう

 第5楽章 このように、あなたがたにも不安があります

 第6章 この地上に永遠の都はありません

 第7章 今から後、主にあって死ぬ人は幸いです

  指揮・黒川和伸

  ピアノ:長谷川真美  遠藤祐子

  独唱:和泉純子(ソプラノ)  金沢平(バリトン)

  合唱:サンシティ市民合唱団

《印象 感想など》

 伴奏は、ピアノ1台による連弾。

 第1楽章 コーラスはいまひとつ。高音部が少しきつい。  第2楽章 忍びやかなしっとりとした曲。  第3楽章 バスの独唱。よく通り、張りのある声。  第4楽章 コーラスの音程が少し下がり気味。  第5楽章 コーラスは座る。ソプラノ・ソロ、よく声が通る。  第6楽章 コーラス立つ。バスの独唱。コーラスも付く。曲が盛り上がる。第7章 最後、曲は静かに終わる。

「ドイツレクイエム」 訳詞(口語訳聖書による)

第1楽章

 悲しんでいる人たちは幸いである。

 僕らは慰められるであろう。(マタイによる福音書:第5章 第4節)

 涙をもって種まく者は、

 喜びの声をもって刈り取る。(詩篇:第126編 第5節)

 種を携え、涙を流して出て行く者は、

 束を携え、喜びの声をあげて

 帰って来るであろう。

第2楽章

 人はみな草のごとく その栄華はみな

 草の花に似ている。草は枯れ、花は散る。(ペテロの第1の手紙:第1章 第24節)

 だから、兄弟たちよ。

 主の来臨の時まで耐え忍びなさい。

 見よ、農夫は、地の尊い実りを、

 前の雨と後の雨とがあるまで、

 耐え忍んで待っている。(ヤコブの手紙:第5章 第7節)

 人はみな草のごとくその栄華はみな

 草の花に似ている。

 草は枯れ、花は散る。

 しかし、主の言葉は、とこしえに残る。(ペテロの第1の手紙:第1章 第24節)

 主にあがなわれた者は、帰ってきて、

 その顔に、とこしえの喜びをいただき、

 歌いつつシオンに来る。

 彼らは悲しみと喜びを得、

 悲しみと嘆きは逃げ去る。(イザヤ書:第35章 第1節)

第3楽

 主よ、わが終わりと

 わが日の数のどれほどであるかを

 わたしに知らせ、わが命のいかに

 はかないかを知らせて下さい。(詩篇:第篇 第4節)

 見よ、あなたはわたしの日を

 つかのまとされました。

 私の一生はあなたの前では無に等しいのです。(詩篇:第39篇 第5章)

 まことに、すべての人はその盛んなときでも、

 息にすぎません。

 まことに人は影のようにさまよいます。

 むなしいことのためにさまよいます。

 むなしいことのために騒ぎまわるのです。

 彼は積みたくあるけれども、

 だれがそれを収めるのかを知りません。

 主よ、今わたしは何を待ち望みましょう。

 わたしの望みはあなたにあります。(詩篇:第39篇 第6~7節)

 正しい者の魂は神のみ手にあって、

 いかなる責苦も彼らに届くことはない。(旧訳続編:ソロモンの知恵:第3章 第1節)

第4楽章

 万軍の主よ、あなたの住まいは

 いかに麗しいことでしょう。

 わが魂は絶えいるばかりに

 主の大庭を慕いわが心と身は

 生ける神にむかって喜び歌います。(詩篇:第84編 第1~2節)

第5楽章

 このように、あなた方も 今は不安がある。

 しかし、わたしは再びあなた方と会うであろう。

 そして、あなた方の心は

 喜びに満たされるであろう。

 その喜びをあなた方から取り去るものではない。

    (ヨハネによる福音書:第16章 第22節)

 眼をもって見よ。

 いかにわたしが少なく労してわたしのために

 多くの休みを得たかを。(旧約続篇:ペン・シラの知恵:第51章 第13節)

 母のその子を慰めるように

 わたしもあなたがたを慰める。(合唱のみ:イザヤ書:第66章 第13節)

第6楽章

 この地上には永遠の平和はない。

 きたらんとする都こそ、

 私達の求めているものである。(ヘブル人の手紙:第13 第14節)

 ここで、あなたがたに奥義を告げよう。

 わたしたちすべては、眠り続けるものではない。

 終わりのラッパの響きと共に、

 またたく間に一瞬にして変えられる

 というのは、ラッパが響いて、

 死人は朽ちない者によみがえらされ、

 わたしたちは変えられるのである。

 そのとき、聖書に書いてある

 言葉が成就するのである。

 「死は勝利に呑まれてしまった。

 死よ、おまえの勝利はどこにあるのか」。

   (コリント人への第1の手紙:第15章第51~55節)

 われらの主なる神よ、あなとこそは、

 栄光とほまれと力とを受けるにふさわしいかた。

 あなたは万物を造られました。

 御旨によって、万物は存在し、

 また造られたのであります。(ヨハネの黙示録:第4章 第11節)

第7章

 今から後、主にあって死ぬ人はさいわいである。

 御霊も言う、

 「しかり、彼らはその労苦を解かれて休み

 そのわざは彼についていく」。(ヨハネの黙示録:第14章 第13節)

《アンコール》

モーツァルト:合唱で「アヴェヴェルム コルプス」

 人数が増える。

《全体の印象》

 やはり、オーケストラの伴奏で聴きたいと思った。重厚な管弦楽、ティンパニーなどを聴いてみたいと思った。

《プロフィール》

指揮・合唱指揮:黒川和伸

 1979年生まれ、千葉県出身。

 千葉大学教育学部と同大学合唱団にて音楽教育と生涯教育、合唱指揮を研鑽。

 千葉大学卒業後、東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。藝大在学中に栗友会ユースクワイヤの一員として、皇居内桃花に於ける天皇陛下古希奉祝音楽会にて御前演奏。小澤征爾音楽塾に塾生として参加。

 声楽を多田羅迪夫氏、指揮法を高階正光氏、合唱指揮をアントン・トレムメル氏に師事。井上道義指揮、東京藝術大学創立120周年藝大定期グリーグ《ペール・ギュント》にて合唱指揮を担当し、コーラスマスターとしてデビュー。高関健指揮、同大学演奏芸術センター・音楽学部主催グルック《オルフェウス》(森鴎外訳)合唱副指揮(合唱指揮:栗山文昭)など、コーラスマスターとしての研鑽を積んでいる。・・・・・

ソプラノ:和泉純子

 茨城大学教育学部卒業。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業、同大学院修士課程独唱科終了。2003年「茨城の名手・名歌手たち 第14回」に出演。2005年第6回藤沢オペラコンクール奨励賞受賞。・・・・・埼玉県立大宮光陵高校音楽科講師。

バリトン:金沢 平

 「秋田県出身。東京藝術大学声楽科卒業。卒業時に同声会賞受賞。同大学院独唱科終了。

ピアノ:村本麻里子

 兵庫県立西宮高等学校音楽科卒業。東京藝術大学音楽学部卒業。ベルリン・ハンス・アイスラー音楽大学を経て、ドイツ国立シュツットガルト音楽大学を卒業。ディプロム取得。第9回和歌山 コンクール第2位・・・・・現在、ソロ、アンサンブルの両面で活動する傍ら、後進の指導も積極的に行っている。

ピアノ:長谷川真美

 国立音楽大学器楽科ピアノ専攻卒業。岡田九郎奨学金受賞。・・・・・ミラノ国立コモ校主席で卒業。・・・・・ラッコニージ音楽コンクール室内楽部門第1位、ポッジェ・ア・カイアーノ国際音楽コンククールにてデュオ部門優勝。・・・・・聖徳大学ピアノ非常勤講師。

ピアノ:遠藤裕子

 武蔵野音楽大学ピアノ科卒業。徳川愛子、久富綾子両女史に師事。

サンシティ市民合唱団

 平成元年に設立。埼玉県越谷市で活動している混声合唱団。越谷サンシティ開業10周年ベートーヴェン『第九』を歌うことになり、一般公募で集まってできた合唱団で定期公演を毎年12月に行っている。

 20~70代までの幅広い年代の団員で構成され、定期公演以外に市民合唱音楽祭、市民文化祭、とーぶ500人の第九への参加。渋谷混声合唱団、越谷西高等学校吹奏楽部、他市の「第九」等への賛助出演、・・・・・

ソプラノ:14人、アルト:10人、テノール:5人、バス:6人。

《レコードやCDなど》

ブラームス:ドイツレクイエム

 レコードやCDは、自分の気に入ったものを聴いていればいいわけですが、わたしの手元にはクレンペラー指揮ウイーン・フィルの8枚物CD(モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブルックナー、マーラー、バッハ、リヒアルト・シュトラウス、ワーグナーなどのライブ演奏)しかありません。なかなかの演奏です。

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2009年12月 7日 (月)

藝大フィルハーモニア合唱定期演奏会 J.ハイドン:オラトリオ天地創造

2009年11月23日(月・祝)17:00開演 東京藝術大学奏楽堂(大学構内) 東京メトロ日比谷線銀座線上野駅徒歩30分(上野公園奥)

《プログラム》

ヨーゼフ・ハイドン:オラトリオ《天地創造》

ガブリエル(Sop):谷垣千沙  ウリエル(Ten):吉原教夫(のりお)  ラファエル(Bas):中川郁太郎  エヴァ(Sop):朴(ぼく)瑛実(てるみ)  アダム(Bar):加耒(かず)徹

管弦楽:藝大フィルハーモニア(東京藝術大学管弦学部研究部)

合唱:東京藝術大学音楽学部声楽科学生

合唱指揮:堀 俊輔

指揮:マルク・アンドレーエ

《印象 感想など》

 私の席:16列30番(自由席) 「天地創造」を聴くのは初めて。パンフレットに歌詞が付いているが、歌詞を追いかけるのが困難。付いていて行けなかった。

 コーラスは左女性97(ソプラノ:64)(アルト:33) 右男性100(テナー:71)(バス:29)

 管弦楽はヴァイオリン22,ヴィオラ12,チェロ8,コントラバス5,フルート4,オーボエ4,クラリネット3,ファゴット4,ホルン5,トランペット2,トローンボーン1,ティンパニー・パーカッション3,チェンバロ1。

J.ハイドン:天地創造 Hob.ⅩⅩⅠ:2

 台本:ゴットフリート・ヴァン・スヴィーテン

 日本語訳:龍井敬子(本学演奏藝術センター客員教授)

第一部

 第1曲 序曲:混沌の描写

 第2曲 レチタティーヴォと合唱

  初めに、神は天地を奏造された

 第3曲 アリアと合唱

  今や聖なる光が現れ

 第4曲 レチタティーヴォ:

  神は大空を作り

 第5曲 合唱付きソプラノ独唱

  陽気な天使たちは

 第6曲 レチタティーヴォ:

  神は言われた。「天の下の水は・・・・」

 第7曲 アリア

  浪は泡だってうねり

 第8曲 レチタティーヴォ

  神は言われた。「地は草を芽生えさせよ・・・・」

 第9曲 アリア:

  今や、野は新緑に萌え

 第10曲 レチタティーヴォ

  天使たちは第3の目を知らせ

 第11曲 合唱:弦の調べを合わせ

 第12曲 レチタティーヴォ

  神は言われた。「天の大空に光る物があって・・・・」

 第13曲 レチタティーヴォ:今や、太陽が

 第14曲 合唱と三重奏

  天は神の栄光を物語り

第二部

 第15番 レチタティーヴォ:

  神は言われた。「生き物は水の中に・・・・」

 第16番 アリア:

  鷲は力強い羽を広げて

 第17番 レチタティーヴォ:

  神は大きな怪物

 第18番 レチタティーヴォ:

  天使たちは永遠の竪琴を奏でて

 第19番 三重唱:起伏の富んだ丘は

 第20番 三重唱と合唱:

  主の力は偉大

 第21番 レチタティーヴォ:

  神は言われた。「大地は生みだせ・・・・」

 第22番 レチタティーヴォ

  大地はその胎をただちに開き

 第23番 アリア:

  今や、天は栄光に輝き

 第24番 レチタティーヴォ

  神は自分にかたどって人間を創造された

 第25番 アリア:

  威厳と気高さを備え

 第26番 レチタティーヴォ

  神はお造りになったすべてのものをご覧になった

 第27番 合唱:大いなる御業は成就され

 第28番 三重唱:おお、主よ、万物があなたを仰ぎ

 第29番 合唱:大いなる御業は成就された

第三部

 第30番 レチタティーヴォ:

  バラ色の雲を破り

 第31番 合唱付き二重唱

  おお、主なる神よ。天地はあなたの恵に満ちている

 第32番 レチタティーヴォ:

  今や、最初の義務として

 第33番 二重唱:やさしい妻よ、おまえの側にいれば

 第34番 レチタティーヴォ:永遠に幸せな者たちよ

 第35番 独唱付き合唱

  皆、主を讃えて歌おう!

第一部

 印象は、総じて独唱はよく通る歌唱。合唱は活気のある、元気な声。伴奏は皆、なかなか上手い。

台本:ゴットリート・ヴァン・スヴィーテン

日本語訳:瀧井敬子(本学演奏芸術センター客員教授)

 第一部

  第1曲 序曲:混沌の描写

  第2曲 レチタティヴォと合唱

  ラファエル

  初めに、神は天地を創造された

  地は形がなく、空虚で、

  闇が深淵の面(おもて)にあった

  合唱

  神の霊が

  水の面(おもて)を動いていた

  神は言われた

  「光あれ。」

  こうして光があった

  ウリエル

  神は光を見て、良しととされ、

  神は光と闇を分けられた

          (創世記Ⅰ:1-4に基づく)

  第3曲 アリアと合唱

  ウリエル

  今や、聖なる光が現れ、

  灰色がかった暗黒の影は消えた

  第一の日であった

  混乱は終わり、秩序はが兆してきた。

  地獄の亡霊たちは恐れおののき、

  深き淵へ、

  永遠の夜へと逃げ落ちる。

  合唱

  絶望と激怒と恐怖が

  地獄の亡霊たちと一緒に消え去り、

  新しい世界が

  神の言葉に従って生まれる。

  第4曲 レティタティーヴォ

  ラファエル

  神は大空を造り

  大空の下と

  大空の上に

  水を分けさせられた。

  そのようになった。

         (創世記Ⅰ:7に基づく)

  そこに嵐が吹き荒れ、

  風に飛ばされる籾殻のように雲は飛び、

  火のような稲妻が大気を切り裂き

  雷鳴が轟き渡った。

  神のみ心のままに、

  洪水から恵の雨が、

  猛威をふるう驟雨が降り、

  真綿のような雪が降った。

  

  第5曲 合唱付きソプラノ独

  ガブリエル

  陽気な天使たちは

  この奇しき観業に目を見張り、

  声高らかに

  創造主を讃え、

  第二の日を讃えて歌う。

  合唱

  声高らかに

  創造主への讃え、

  第二の日を讃えて歌う。

  第6曲 レチタティーヴォ

  ラファエル

  神は言われた。

  「天の下の水は、

  一つ所に集まれ。

  乾いた所よ、現れよ。」

  そのようになった。

  神は乾いた所を地と呼び、

  水の集まった海と呼ばれた。

  神はこれを見て、良しとされた。

         (創世記Ⅰ:9,10に基づく)

  第7曲 アリア

  ラファエル

  浪が泡だってうねり

  海が荒れ狂う。

  丘と岩があらわれ、

  山頂がそびえ立つ。

  平原がはるかに遠くまで広がり、

  大河が曲がりくねって

  蕩々と流れる。

  小川がさらさらと

  静かな谷間を流れる。

  第8曲 レティタティーヴォ

  ガブリエル

  神は言われた。

  「地は草を芽生えさせよ。

  種を持つ草と、

  それぞれの種を持ち実をつける果樹を、

  地に芽生えさせよ。」

  そのようになった。

         (創世記Ⅰ:11に基づく)

  第9曲 アリア

  ガブリエル

  今や、野は新緑に萌え

  目を楽しませてくれる。

  花々は楚々と咲き

  眺めはいっそう素晴らしい。

  ここでは、草木が芳香を放ち、

  ここでは、傷を癒してくれる。

  枝は黄金の果実をちけて撓み、

  生い茂る葉は涼しい緑陰をなし、

  鬱蒼たる森が険しい山々を覆う。

  第10曲 レティタティーヴォ

  ウリエル

  天使たちは第3の日を知らせ、

  神を讃えて歌う。

  第11曲 合唱

  合唱

  弦の調べを合わせ、竪琴を奏で、

  賛美の歌を響かせよ!

  主に向かって喜びの声をあげよ!

  主は天と地を

  素晴らしく飾ってくださったのだから。

  

  第12曲 レチタティーヴォ

  ウリエル

  神は言われた。

  「天の大空に光る物があって、

  昼と夜を分け、

  地を照らし、

  季節のしるし、

  日や年のしるしとなれ。」

  神はまた星も造られた。

         (創世記Ⅰ:14の16に基づく)

  第13番 レチタティーヴォ

  ウリエル

  今や、太陽が

  燦然と輝き渡る。

  この喜びに満ちた花婿、

  この巨人は誇らしげに

  陽気に軌道を回る。

  月はやわらかな光を放ちつつ、

  静かな夜をしのび歩く。

  無数の明るい星が

  果てしなく広い空を飾る。

  天使たちは

  聖なる歌で、

  第4の日を告げ知らせ、

  神の力を、高らかに賛美する。

  第14曲 合唱と三重唱

  合唱

  天は神の栄光を物語り

  大空を御手(みて)の業(わざ)を示す

             (詩篇 19:2)

  ガブリエル、ウリエル、ラファエル

  昼は昼に語り伝え

  夜は夜に知識を送る。

          (詩篇 19:3)

  合唱

  天は神の栄光を物語り

  大空は御手(みて)の業(わざ)を示す。

              (詩篇 19:2)

  ガブリエル、ウリエル、ラファエル

  話すことも、語ることもなく

  声は聞こえなくとも

  その言葉は世界の果てにまで向かう。

          (詩篇 19:4,5)

  合唱

  天は神の栄光を物語り

  大空は御手(みて)の業(わざ)を示す

              (詩篇 19:2)

 第二部

  第15番 レチタティーヴォ

  ガブリエル

  神は言われた

  「生き物は水の中に群がれ。

  鳥は地の上、

  天の大空の面(おもて)を飛べ。」

               (創世記Ⅰ:20)

  第16番 アリア

  ガブリエル

  鷲は力強い翼を広げて

  誇らしげに舞い上がり、

  風を切って

  猛スピードで

  太陽に向かってゆく。

  雲雀は陽気な歌で

  朝にあいさつし、

  優しい番(つがい)の鳩は

  愛を囁き合う。

  どの藪からも森からも

  ナイチンゲールの甘いさえずりが聞こえてくる。

  その胸が苦しみに塞がれることは、まだなかった。

  その魅惑的な歌が

  嘆きの調子を帯びることは、まだなかった。

  第17番 レティタティーヴォ

  ラファエル

  神は大きな怪物、

  うごめく生き物をそれぞれに奏造された。

  神はそれらのものを祝福して言われた。

  生めよ、増(ふ)えよ、

  空に棲む鳥よ、殖えよ。

  枝という枝で歌え!

  水に棲むものよ、殖えよ、

  淵という淵を満たせ!

  産めよ、育てよ、植えよ。

  神とともにあって、喜べ!」

         (創世記Ⅰ:21)

  第18番 レティタティーヴォ

  ラファエル

  天使たちは永遠の竪琴を奏でて、

  第5の日を奇しき御業(みわざ)を歌った。

  第19番 三重唱

  ガブリエル

  起伏の富んだ丘は

  新緑で身を飾って

  優美な姿をしている。

  その水脈からは

  流れる水晶のように

  清涼な小川が湧きだしている

  ウリエル

  鳥の群れが元気に、

  楽しげに輪になって

  空に舞っている。

  太陽の黄金の光を浴びて、

  翼の色もさまざまに輝いて

  飛び変わっている。

  ラファエル

  魚たちは澄んだ水面で跳ねて、

  キラキラ光り、縦横無尽に

  所狭しと泳ぎ回っている。

  深い海底からは

  巨大な怪魚[レヴィアタン]が波を泡立ててあらわれ、

  身を躍らせている。

  ガブリエル、ウリエル、ラファエル

  おお神よ!御業(みわざ)をなんと多いことか。

  数え切れない数だ!

  おお神よ!

  数え切れない数だ!

  

  第20番 三重唱と合唱

  合唱、ラファエル、ガブリエル、ウリエル

  主の力は偉大、

  その栄光は永遠に続く。

  第21番 レティタティーヴォ

  ラファエル

  神は言われた。

  「大地は生みだせ、

  それぞれの種類の生き物を

  家畜、這うもの、地の獣を

  それぞれに生みだせ。」

          (創世記Ⅰ:24)

  第22番 レティタティーヴォ

  ラファエル

  大地はその胎をただちに聞き、

  神の御言葉のとおり、

  あらゆる生き物を数知れず、

  丈夫に産んだ。

  喜びにあふうれて、ライオンが吠え、

  敏捷な虎がすくっと立つ。

  俊足の鹿が角の生えた頭をもたげ、

  駿馬はたてがみを風なびかせ、

  凛々しくいななく。

  緑の牧場では、はや

  牛はいくつかの群れに分かれて、草を食み、

  毛のふさふさした温和しい羊は

  まるで種を蒔いたように、牧場にいっぱいいる

  虫の群れが渦巻いて

  塵のように

  散らばっている。

  うごめくは虫類は

  長い跡を残して地を這っている。

  第23番 アリア

  ラファエル

  今や、主は栄光に輝き、

  今や、大地はその装いを誇示している。

  空は軽やかに飛ぶ鳥でいっぱになり、

  水は魚の群れでいっぱいになり、

  獣は大地をしっかり踏みつけている。

  しかし、すべてが終わったわけではない。

  神の御業に感謝させる。

  それまで讃えさせる生き物が

  欠けている。

  第24番 レティタティーヴォ

  ウリエル

  神は自分にかたどって人間を創造された。

  神にかたどって、

  男と女を創造された。

  その鼻に命(いのち)の息を吹き込まれた。

  人間はこうして生きる者となった。 

         (創世記Ⅰ:27に基づく)

  第25番 アリア

  ウリエル

  威厳と気高さをそなえ、

  美と勇気と力を授けられた人間は、

  男にして自然の王たる者、

  天を仰いで立ち上がる。

  その広く秀でた額は、

  知恵の深さを示し、

  その澄み切った眼差しには、

  神の霊と息吹とお姿が輝いている。

  彼の胸には、

  彼のために彼から造られた妻が、

  優しく寄り添う。

  魅惑的な春の姿の妻は、

  無垢の微笑みを湛え、

  彼に愛と幸と至福をもたらす。

  第26番 レティタティーヴォ

  ラファエル

  神はお造りになったすべてのものをご覧になった。

  それらはすべて極めて良かった。

         (創世記Ⅰ:31)

  天使たちは、

  第6の日の終わりを賛美して歌った。

  第27番 合唱

  合唱

  大いなる御業は成就され、

  創造主はそれをご覧になり、満足された。

  私たちの喜びを歌え、高らかに響け、

  主を賛美しよう!

  第28番 三重唱

  ガブリエル、ウリエル

  おお、主よ、万物があなたを仰ぎ、

  その糧をあなたに求める。

  あなたは御手を広げ

  満たしてくださる。

  ラファエル

  あなたが顔をそむけられれば、

  万物が恐れおののく。

  あなたが息を奪えば、

  万物が塵となる。

  ガブリエル、ウリエル、ラファエル

  あなたが再び息を吹き込めば、

  新しい力が生まれる。

  大地の姿は若さを取り戻し、

  魅力的で力強いものとなる

 第29番 合唱

  合唱

  大いなる御業は成就された。

  主を讃えて歌おう!

  万物は主を讃えて歌おう!

  万物は主の名を賛美するがいい。

  高きところにおられるのは、主のみだからだ!

  アレルヤ、アレルヤ!

  第三部

  第30番 レティタティーヴォ

  ウリエル

  バラ色の雲を破り

  甘い響きのうちに

  生まれたばかりの美しい朝があらわれる。

  澄んだハーモニーが

  地上に流れてくる。

  見よ、幸福な一組の男女が

  手に手を取って歩いてくる。

  彼らの眼差しは

  熱い感謝の気持ちで輝いている。

  彼らの口は

  創造者を讃えて歌う。

  さあ、彼らの声に合わせて

  共にうたおう。

  第31番 合唱付き二重唱

  エヴァとアダム

  おお、主なる神よ。

  天地はあなたの恵に満ちている。

  かくも広く、かくも見事な世界は

  あなたの御手がなされたことだ

  合唱

  主の力に祝福を!

  主の誉れは永遠に!

  アダム

  明るく輝く星よ、おまえは

  朝の訪れをなんと美しく告げることか!

  万物の霊にして、目である太陽よ。

  なんと煌びやかに朝を飾ってくれることか!

  合唱

  おまえたちのはるけき道に立って、

  主の力と栄誉を広く知らしめよ!

  エヴァ

  夜を飾り、慰めるあなた、

  そして、すべての輝くものたちよ

  おまえたちの賛歌の合唱により

  主の賛美をくまなく広めよ。

  アダム

  休むことなく新しい形を産む力をもつ

  もろもろの元素よ、

  風が集め、風が散らす

  霧と雲よ。

  エヴァとアダムと合唱

  万物よ、主なる神を讃えよ、

  主の力は、その御名のように、偉大である。

  エヴァ

  おお泉よ、主を讃えて水音をさわやかに響かせよ、

  木々よ、梢を垂れよ!

  草よ、芳ばしき香りを放て!

  花よ、芳しき香りを放て!

  アダム

  小道を上ってゆくものよ、

  低きを這うものよ、

  空を飛びかうものよ、

  深い水のなかを泳ぐものよ。

  エヴァとアダムと合唱

  すべての獣の、神を讃えよ!

  命あるものよ、神を讃えよ!

  エヴァとアダム

  暗い森よ、山と谷よ

  おまえたち、私たちの感謝を証(あか)すもの、

  朝に夕べに

  賛美の歌を響かせよ。

  合唱

  おお神よ、創造主よ、幸いあれ!

  あなたのみ言葉から世界ができた。

  天地はあなたを崇め、

  私たちは永遠にあなたを褒めたたえよう!

  第32番 レティタティーヴォ

  アダム

  今や、最初の義務として、

  創造主に感謝を捧げた、

  さあ、生涯の伴侶よ、私について来なさい!

  おまえを導き、歩むたびに

  新しい喜びを胸に呼び起こし、

  至るところで、奇跡を示す。

  言葉で尽くせない幸福を

  主が私たちにお与えくださったことを

  知るがよい。 

  永遠に主を讃え、心と語感を捧げ、

  ついてきなさい、おまえを導こう。

  エヴァ

  おお、私が生まれてたのはあなたのため。

  私の保護者、私の盾、私のすべてよ!

  あなたの意志はわたしの掟。

  主はそのように定められ、

  あなたに従うことは

  私に喜び、幸福、誉れをもたらす。

  第33番 二重唱

  アダム

  やさしい妻よ、おまえの側にいれば、

  時は静かに過ぎる。

  どんなときも至福となり、

  不安に曇ることはない。

  エヴァ

  かけがえない夫よ、あなたのそばにいれば、

  心は喜びに満たされる。

  私の命はあなたのもの。

  あなたの愛があれば、何もいらない。

  アダム

  露にぬれた朝は

  なんと元気づけてくれることか!

  エヴァ

  涼しい夕べは

  なんと爽やかなことか!

  アダム

  熟した果実の甘い汁は

  どんなに元気を回復させてくれることか!

  エヴァ

  芳しい花の香りは

  なんと魅惑的なことか!

  エヴァとアダム

  しかし、あなた(おまえ)がいなかったら

  私はどうなろか?

  アダム

  朝露も

  エヴァ

  夕べのそよ風も

  アダム

  果実の甘い汁も

  エヴァ

  芳しい花の香りも

  エヴァとアダム

  あなた(おまえ)と一緒なら喜びは増し、

  あなた(おまえ)と一緒なら喜びは2倍になり

  あなた(おまえ)と一緒なら人生は至福、

  命のすべてが、あなた(おまえ)のもの!

  第34番 レティタティーヴォ

  ウリエル

  永遠に幸せな者たちよ、

  分相応以上を欲したり、

  分相応以上を知ろうという、

  偽りの妄想に誘惑されないかぎり、

  おまえたちは永遠に幸せだ。

  第35番 独唱付き合唱

  皆、主を讃えて歌おう!

  主の御業に感謝せよ!

  主の名のために

  競って賛美の歌を響かせよ!

  主の栄光は永遠!

  アーメン!

(壮大なコーラス、伴奏。ソロも入って歌う。)

 盛大な拍手。合唱指揮の堀俊輔も登場。盛大な拍手。

《曲目解説》 菊間史織(音楽学博士・演奏藝術センター教育研究助手)

 天地創造、それは7日間の壮大な光景である。天と地がつくら、光があらわれ、空ができ、陸に植物が蔓延し、あらゆる動物が生まれ、最後に人間がつくられる。人間が住む新しい世界に、すべてが神の言葉からはじまる。

 ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809)のオラトリオ《天地創造》では、旧約聖書の『創世記』やミルトンの叙事詩『失楽園』(1967)に綴られた天地創造の7日間のプロセスのうち、6日までがほぼたどられる。7日目は休息である。その後、第三部では、『失楽園』に語られたエデンの園へと舞台を移す。アダムとエヴァはまだ禁断の果実を食べる前で、愛と幸せに満ち溢れている。

 ハイドンは、最初のロンドン演奏旅行(1791~92)で、《メサイヤ》などの千人二千人規模の大編成のオラトリオ公演に触れ、大規模な作品を書くことへの意欲を書くことへの意欲を燃やしたといわれる。

 台本はもともと、イギリスに存在していた英語の台本に基づいている。トーマス・リドレイなる人物(チャールズ・ジェネンズという説もある)によってヘンデルのために書かれたと考えられている英語の台本がある。二度目のロンドン演奏旅行(1794~95)を行い帰国する際、ハイドンはこれをペーター・ザロモンから手渡された。オラトリオ《十字架上のキリストの七つの言葉》(1795~96)や《四季》(1799~1801)でハイドンと共同作業を行った、バロック音楽の愛好家でウイーン宮廷図書館長のゴットフリーと・ヴァン・スティーテンは、この台本を見せられるとハイドンに熱く作曲を勧めた。そして台本を独訳し、音楽に対する細かな指示も加えたのである。

 なお、《天地創造》や《四季》に取り組んだというのは、ハイドンが、すでに、彼に名声をもたらした器楽曲の分野を遠ざけ、長年仕えたエステルハージ家の新侯爵のために宗教的な声楽作品に集中的に取り組んだ時期でもあった。

 作曲は1796年秋にはじめられ、翌年秋にはいったん完成したが、演奏までに校正が重ねられた。ウイーンのシュバルツェンベルク宮殿における私的な初演は、スヴィーテンの「音楽協会」が相当な金額を保証して開催した(1798,4)。公開初演はブルク劇場にて行われ、約180人が演奏に参加した(1799.3)。楽譜は、ハイドンが、国際的な成功を念頭に置いたため、独、英の2ヶ国語の歌詞を付けて1800年に出版された。

 《天地創造》における音楽の魅力は、爽快で言葉とメロディが自然に結びついた合唱、そして、何より、冴え渡る描写力であろう。情景描写ではそのほとんどが、歌詞に音楽が先行している。宗教的な音楽でありながらも親しみやすい。また、ロマン主義の時代に足を踏み入れた、ドラマチックに絡み合う作品構成。これらを備えた《天地創造》は、初演当時から大きな成功を収め、ヨーロッパ中で度重なる演奏が行われてきた。

   ※

第一部

 第一、二部は、3人のソリストによるレティタティーヴォ(主に『創世記』を引用)、自由な歌詞で光景を強調するアリアまたは伴奏付きレティタティーヴォ、神の仕事を賛美する合唱(『詩篇』の引用等)が、一日分ずつ端正に並べられていく。大天使ラファエルやウリエルが天地創造の経緯を語る、竪琴を携えた天使たちが創造の最中に賛美の合唱を鳴り響かせる、といったスタイルは、『失楽園』を踏襲した形となる。なお、『失楽園』の翻訳者、平井正穂氏は天使たちの声を「天体の音楽」として注釈しているが、オラトリオの中では実際の歌い手たちの声として響く。

 ちなみに、天使創造には次のような事情があった。神は天使たちとともに宇宙に住んでいたが、一部の天使たちの邪悪な行為に腹を立て、彼らを深淵に追いやり、もうひとつの新しい世界を創造することに決めたのである(『失楽園』による)。

 さて1日目、混沌の中に天と地がつくられ、地球の領域が定められ、光が新しい世界を照らし、邪悪なものたちは地獄へ堕ちていく。「序奏:混沌の描写」は極めて近代的な音楽であり、ハ短調にはじまり微妙な調進行をさまよい、ときおりクラリネットのスケールが稲妻のように走る。続いて合唱「すると光があった」の部分は聴く人に衝撃をもたらす。神の言葉の後、劇的なffハ長調への転調は、まさに光の出現である。

 2日目は、空間を漂っていた水が上と下に分けられ、大空があらわれる。ラファエル(Bas)の伴奏付きレティタティーヴォでは激しい水の動きが音となる。

 3日目、地上の水が集められて海となり、陸があらわれ、瞬く間に緑の草木が生い茂る。ガブリエル(Sop)のアリアでは、草木の香りをコロラトゥーラと木管が美しく彩る。ヘンデルの影響があらわれた天使たちの合唱は、フーガとホモフォニーで賛美の歌を奏でる。

 4日目、空に太陽、月、星の天体が光を放ち、地球の周りを動きはじめる。太陽を司るウリエル(Ten)の伴奏付きレティタティーヴォでは、器楽の歩みとともに太陽と月が厳かに出現する。『詩篇』の言葉を使ったハ長調の伸びやかな合唱が第一部を結ぶ。

第二部

 5日目、水と空に動物がいっせいに生みだされ、繁殖する。ガブリエルのアリアでは、弦(鷲)、クラリネット(雲雀)、ファゴット2本(鳩のつがい)、フルート(ナイチンゲール)の各楽器がコロラトゥーラとともに鳥たちを飾る。ハイドンは楽譜以上の過剰な装飾をあまり好まなかったが、ガブリエルのアリアにはもとから多数の装飾音が付されている。

 6日目、陸に動物が生みだされ、最後に自然を支配する人間の男女一組がつくられる。ラファエルの伴奏付きレティタティーヴォでは、コントラファゴット(ライオンの咆哮)、軽やかな弦(俊足の鹿)、素朴なフルート(牛)、小刻みな弦(昆虫)の音などが歌詞に先行する。ウリエルのハ長調のアリアは自然の王となる人間を祝福し、妻エヴァの愛(Liebe)を、鳩のつがいの愛に対応するフレーズで表現する。第二部で閉じるハレルヤコーラスは変ロ長調。威厳のあるフーガに発展し、中間部に叙情的な三重唱を挟みつつ、活発な低音楽器に支えられて神の仕事の完成を支える。

第三部

 エデンの園でアダム(Bas)とエヴァ(sop)は神への感謝を述べる。第一部の序奏がハ短調の主音で物々しくはじまったのに対し、第三部はホ長調ではじまり、3本のフルートが奏でられる。安らぎと喜びに満ちた二重唱は創造されたすべてのもに神を讃えるよう呼びかけ、ハ長調の合唱は、神の言葉から世界ができたことを讃える。

 感謝を述べ終えた2人は、夫婦の契りを結ぶ。甘く愛を語り合う穏やかな三拍子の二重唱は、途中で気分を変えてリズミカルなアレグロの二拍子に一転し、2人が一緒にいることを喜ぶ。

 快活で楽天的に神の導きを信じるハイドン自身、また彼の音楽だからこそ、一瞬の陰りは際立って聴こえる。分相応以上を知ろうとしなければ2人は永遠に幸せだと告げるウリエルのレティタティーヴォでは、「永遠に」というときに近未来の罪を予言するホ音の♭がひらめくのである。第三部を閉じる合唱はホ長調。フーガとホモフォニーで力強くアーメンを歌う。

     ※

 今日まで多数の演奏が行われ、録音されている。古楽器や装飾唱法をふんだんにとりいれたもには、ソプラノのエマ・カークビーとホグウッド指揮の英語版の録音などがある。厚みのある合唱を聴かせるコッホ指揮の演奏では、ペーター・シュライヤーの優しい声がウリエル役にとても合っていると思う。

 本日は、このところ次々と奏楽堂のプログラムに出演されているキャストの方々とこだわりのアンドレーエ先生の指揮によって、またひとつの《天地創造》が演奏される。なお、楽譜はPeters版(2003)を使用している。

《プロフィール》

指揮:マルク・アンドレレ-エ

 スイスのチューリッヒ音楽大学で学び、後にパリでナディア・ブーランジェ・、、ローマとシエナでフランコ・フェラーの薫陶を受ける。1966年「ルドルフ・ケンペとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団主催の指揮者コンクール」で優勝。1968年フィレンツェのAIDEM作曲コンクール優勝。1969年~91年スイス・イタリア放送交響楽団の音楽監督。1990~93年ミラノのアンジェリクム管弦楽団芸術監督を務める。ヨーロッパではミュンヘン・フィルハーモニー、ゲヴァントハウス管弦楽団、ヨーロッパ・サンタチェチェーリア管弦楽団、スイス・ロマンド管弦楽団など主要オーケストラに繰り返し、客演指揮者として招かれている。ザルツブルク音楽祭、ルツェルン音楽祭など各地の音楽祭でのコンサートやオペラを指揮。日本にも何度か来日、NHK交響楽団、読売日響と共演。CD,DVDなど50枚以上の録音があり、ミュンヘン・フィルとのシューマンのト短調交響曲(世界初録音)はディスク・グランプリを獲得。また同曲の編纂、出版も行う。

合唱指揮:堀 俊輔

 早稲田大学英文科を経て、東京藝術大学で作曲と指揮を学ぶ。指揮科卒業後1989年東京交響楽団(東響)副指揮者に就任、1990年東響特別演奏会で正式デビュー。1991年にはニューヨーク州シラキュース響定期演奏会を指揮、アメリカデビューを飾った。1994年オラトリオ東京を設立し、1995年旗揚げ公演のハイドン《天地創造》を成功に導いた。・・・・

 2001年サンクトペテルブルク音楽祭、2003年プロコフィエフ国際指揮者コンクール審査員、2004年にはリスボン・メトロポリタン・オーケストラ(ポルトガル)客演などロシア・ヨーロッパへも行動範囲を広げている。・・・・

 現在、東京交響楽団クリエイティブアドヴァイザー、指揮者。本学非常勤講師。

ソプラノ:谷垣千紗

 神戸出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。在学中に安宅賞を受賞。卒業時に同声会賞受賞、アカサンサス音楽賞、松田トシ賞、第一回大賀典雄賞を受賞し、同声会新人演奏会に出演、藝大定期演奏会にて藝大フィルハーモニアとヘンデルのオペラアリアを共演。他に、モーツァルトのレクイエムやバッハのカンタータなどのソリストを務める。来月、第59回「藝大メサイア」ソプラノ・ソリストとして出演予定。

 これまでに門田泰子、寺谷千枝子の両氏に師事。現在、東京藝術大学大学院修士課程独唱先行1年次在学中。

テノール:吉原教夫

 新潟県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。現在、同大学大学院修士課程独唱専攻在籍中。学部卒業時に松田トシ賞、アカンサス音楽賞、同声会賞受賞。同声会新人演奏会、第76回読売新人演奏会に出演。学部在学中には、第55回「藝大メサイア」、`08合唱定期公演オラトリオ《聖パウロ》(メンデルスゾーン)のテノールソリストを務めた。・・・・

 これまでに、北住順子、押見榮喜、佐藤峰子、三林輝夫の各氏に師事。現在、川上洋司氏に師事。

バス:中川郁太郎

 青山学院大学法学部、東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。現在、同大学院修士課程(独唱)1年次在学中。多田羅迪夫、末吉利行、太田直樹、カール・フリドリヒ・デュルの各氏に師事。また、故エルンスト・ヘフリガー氏のマスタークラスを受講。音楽学部在学中より藝大バッハカンタータクラブに所属し、小林道夫氏の指導の下、多くのカンタータを研究、演奏。卒業後は母校青山学院で教鞭を執る傍ら、バッハを中心とする多数の宗教曲、及びベートーヴェン「第九」のソリストとして各地の演奏会に出演し、小林道夫氏、佐々木正利氏等の指揮者と共演している。青山学院中等部講師。

ソプラノ:朴 瑛美

 東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。同大学大学院音楽研究科修士課程独唱専攻終了、現在博士後期課程1年次在学中。学部在学時、安宅賞受賞、藝大バッハカンタータクラブに所属し、小林道夫氏の薫陶を受ける。平成16年度友愛ドイツ歌曲コンクール第2位。第14回日仏声楽コンクール第1位、並びに日本歌曲賞受賞。・・・・

 声楽を佐々木正利、朝倉蒼生、佐竹由美、佐々木典子の各氏に師事。

バリトン:加耒 徹

 福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。同声会賞受賞。同大学院修士課程独唱専攻在学中。2008年藝大メサイアのソリストを務める。・・・・・声楽を福嶋敬晃、勝部太の各氏に師事。これまでに鈴木雅明、現田茂夫等の指揮者と共演。・・・・・本年9月には藝大企画ヘンデル《アリオダンテ》に於いてオドアルド役で出演した。

藝大フィルハーモニア(東京藝術大学管弦学部研究部)

 藝大フィルハーモニア(管弦楽研究部)は東京藝術大学に所属するプロフェッショナル・オーケストラであり、オーケストラ演奏を専門とする研究部員によって組織されている。

 主な活動としては、毎年春と秋に開かれる定期演奏会、声楽科との合唱付きオーケストラ作品の演奏、オペラ研究部との共演、年度初めの新卒業生(各科最優秀者)紹介演奏がある。その他、年末には恒例のメサイア演奏会、第九公演などを行っている。

 教育面では、器楽科、声楽学生との協奏曲等の共演および作曲家学生との作品演奏(モーニングコンサート)、指揮科学生による演奏会・試験・演習など、学生の演奏経験の拡充に資する。さらに各地の音楽文化向上のための出張演奏も行っている。

 このオーケストラの前身である旧東京音楽学校管弦楽団は、わが国初めての本格的オーケストラであり、現在ではポピュラーに演奏されているベートーヴェン:交響曲第5番「運命」、第9番「合唱付き」、チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」などを本邦初演し、日本の音楽界の礎石をとしての活動を果たしてきた。  

      

  

  

               

          

        

       

 

  

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2009年12月 2日 (水)

演奏会に行ってきました「紀尾井シンフォニエッタ東京第71回定期演奏会 ハイドン、タヴナー、シューマン」(2009-47)

2009年11月7日(土)午後2時開演紀尾井ホール(JR・東京メトロ四谷駅徒歩8分) 紀尾井シンフォニエッタ東京第71回定期演奏会

《プログラム》

指揮・チェロ:マリオ・ブルネロ  紀尾井シンフォニエッタ東京

コンサートマスター:澤 和樹

ハイドン:交響曲第6番 ニ長調Hob.Ⅰ:6「朝」 (約21分)

タヴナー:奇跡のヴエール (約43分)

      ・・・・・休 憩・・・・・

シューマン:交響曲第1番変ロ長調 Op.38「春」 (約30分)

プログラムノート  吉澤隆明

 マリオ・ブルネロが指揮への情熱を語り始めたとき、そこにはまずオーケストラ・ダルキ・イタリアーナというイタリアの若い同志たちがいた。ヴェネト州カステルフランコという彼らの本拠地は、ブルネロの愛する土地である。ブルネロが音楽監督として彼らとともに来日したのは2000年が初めてで、その翌年の2月には紀尾井シンフォニエッタ東京(KST)の定期公演を指揮した。

 指揮の技術や経験という細部を超えて、ブルネロはKSTと大きく自然な音楽を交感した。弦楽奏者として共演する場面でも、指揮者としてオーケストラを歌わせるときでも、ブルネロの内面から自発的に、あるいは堅固な意志とともに立ち顕れる音楽は、アンサンブル全体を清新な空気で溢れさせた。

以来、今回で早くも5度目の客演というのは、KSTにとっては最多の客演回数になるが、彼らの精神的協同を耳にしてきた者としては、それも音楽仲間として強く望まれてのことだろう、と幸福な想像を抱くばかりだ。端的にいって、ブルネロとKSTの共振を聴くこと、それは私にとって生命とコミュニケーションの本質に関わる体験でもある。

 そして、彼らの演奏は冒険と意志の躍動に彩られている。同時代の音楽につねに積極的な姿勢を示すブルネロは、これまでのKST定期でもヘンツェ、ソリマ、アイヴズ、武満とロータを各回に取り上げてきた。今回、KST新しいシーズンの幕開けに選ばれたのはハイドンの初期交響曲の《朝》、ジョン・タヴナーの《奇跡のヴェール》、そしてシューマンの最初のシンフォニーというプログラムだ。これまで多くのレパートリーでどちらかといえば、いかにも男性的な逞しさを勇敢に謳いあげてきたブルネロのチェロは、タヴナーの神秘的体験のなかでは、聖母の象徴として響くことになる。

 また、メンデルスゾーンのイ長調交響曲《イタリア》でKSTとの録音もリリースしたり、前回もベートーヴェンを採り上げたりしてきた指揮者ブルネロが、シューマンに臨んでどのようなアンサンブルを響かせるのかも楽しみだ。2006年のKST定期でチェロ協奏曲を弾き振りした演奏も鮮烈に思い出されてくる。

 幸福な再会に心から期待したい。

《印象 感想など》

ハイドン:交響曲第6番 ニ長調Hob.Ⅰ:6「朝」

Ⅰ. Adagio-Allegro    Ⅱ.Adagio-Andante-Adagio    Ⅲ.Menuet    Ⅳ.Funale.Allegro

私の席:13列15番。満席。ティンパニィー左奥。ファゴット前(1列)、オーボエ2前(1列)、フルート前(1列)

第1楽章 爽やかな曲。フルート、オーボエなど溌剌とした演奏。  第2楽章 コンマスのヴァイオリンソロから入り、弦が刻むような演奏。いつものように充実したアンサンブル。最後は静かに閉じる。  第3楽章 フルートから入り、快調な進行。リズムをしっかりと刻む。  第4楽章 テンポの速い、リズミックな演奏。オーボエなど木管が素敵な演奏。快演。

《プログラムノート》 青澤隆明

 オーストリアの音楽家フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809)が、最初の交響曲創作を手がけたのは1757年頃で、ロンドンの聴衆のために最後の交響曲を書き終えたのは1795年のことだ。生涯の多くを宮廷付きの音楽家として送り、侯爵家の依頼のほかにも後年には外国の出版社やロンドンの興行主の注文で交響曲を作曲したハイドンの脳裏には、つねに聴き手の存在があった。

 偉才の長年の交響曲創作は、107曲の交響曲と1曲の交響協奏曲、2曲の断片楽章を後世に送り出した。ハイドンの最初期の交響曲は、ウイーンの宮廷貴族でもあるモルツィン伯爵家の楽長として働いた前後、すなわち1757年から61年5月までに十数曲とみられる一連の果実を生んだ。モルツィン家の楽団が財政的な理由で解散されると、ハイドンはアイゼンシュタットに居城を構えるハンガリーの名門エステルハージ侯爵家の副楽長に就任する。こうして、1761年5月1日から、楽長に昇進する66年の前までに、自筆譜が作曲年代を確証させる10曲を含む25曲が作曲されたと推定されている。パウル・アントン・エステルハージー侯爵は1762年に死去したが、弟のニコラウスが後を継ぎ、1790年のその死去まで楽団は存続して、ハイドンの音楽創作のホームグランドとなった。着任当初は14人から16人ほどだった楽団も、解散時には30人ほどの編成に拡大されていった。楽団は当初からすぐれた技量を持つ音楽家を擁していたようで、様々な協奏曲からもその水準がうかがわれる。

 さて、エステルハージ家のために書かれた最初期の交響曲が《朝》《昼》《晩》の標題を持つ3部作である。おそらく侯爵の勧めもあって、ハイドン自身が名づけたとされる。今日では一般に交響曲とみなされるが、音楽内容からみると、フランスのサンフォニー・コンセルタントに類似し、独奏楽器の多用や管弦楽法からみてコンツェルト・グロッソ、楽章構成などからはディヴェルティメントに通じている。

 交響曲ニ長調《朝》は1761年に作曲され3部作の冒頭で、日の出を思わせる6小節のアダージョの序奏に導かれ、ソナタ形式の第1楽章アレグロが独奏フルートの第1主題提示で始まる。この主題は後に2つの独奏オーボエでも提示され、ヴァイオリンを中心とする経過的第2主題でも木管が色彩感を生みだしている。

 第2楽章(ト長調)は、アダージョ-アンダンテ-アダージョの構成。独奏ヴァイオリンと独奏チェロのコンチェルティーノと、トゥッティが応答する。第3楽章は優雅なメヌエットで、ニ短調のトリオを持つ。アレグロのフィナーレでは、ヴァイオリン、チェロ、ホルンが技巧的な独奏でそれぞれの個性を出して活躍する。

タヴナー:奇跡のヴェール

1.奇跡のヴェール  2.聖母の誕生  3.受胎告知  4.キリストの顕現  5.十字架上のキリストと聖母の嘆き  6.キリストは復活する  7.聖母の永眠  8.奇跡のヴェール

 全体はうっとりするような流れる曲。ブルネロは中央で弾き振り。ライト消え、ブルネロのみ照らす。チェロの独奏で始まる。弦楽合奏へ広がる。またチェロの独奏。素敵な曲。チェロ独奏も凄い。幻想的な曲。チェロが響く。弦がノコギリをひくような奏法で鳴る。ゆったりとしたメロディー。チェロがむせび泣くようなメロディーをソロで弾く。弦合奏のシャキッとしたメロディーとチェロの掛け合い。ゆったりとした大河を思わせる悠久の音楽が流れる。チェロの弱音の演奏が続き、高音のチェロ・ソロが続き、静かに終わる。曲は続けて演奏された。

《楽譜・序文より》 ジョン・タブナー

 ジョン・タブナーの「奇跡のヴェール」はギリシャ正教の会の「聖母の守護のヴェールの祝日」に思いを得て、1989年にBBCの夏の音楽祭・プロムスの委嘱により作曲された。

 「聖母の守護のヴェールの祝日」は10世紀初頭(おそらく902年)コンスタンチノープルのヴラチェルニーにある教会に聖母が現れたことを記念して正教会が設置した祝日である。サラセン人(イスラム教徒)の侵入という重大な危機にあって、「聖なる愚者」アンドリューと門弟のエピファニオスは徹夜の見張りの間に聖母を見た。聖母は彼らの上空高くにおり、聖人たちに囲まれ、祈りをささげ、キリスト教徒を守る避難場所としてヴェール(あるいなストール)を広げていた。このヴィジョンに鼓舞されたギリシャ人は、サラセン人の攻撃性に耐え、サラセン軍を追いやった。

 「奇跡のヴェール」を純粋な音楽として聴くことも全く可能であるが、作曲中の私の心に浮かんだことを述べれば役にたつだろう。私は、木材でなければ音で、筆でなくチェロの音楽で、叙情的な聖像(イコン)を作りたかった。この作品は高度に様式化され、幾何学的に形作られ、瞑想的な性格をもつ。聖母はチェロで描かれ、一貫して止まらずに歌い続ける。伴奏する弦楽は聖母の歌を巨大に拡張したものである。

 作品は8つの連続したセクションからなり、8つのビザンチン旋法を使用した。(スコアに)書いてあるようにさまざまな意味を持つ祝日が私の心にあった。2番目のセクションは聖母の誕生、3番目は受胎告知、4番目はキリストの顕現、5番目は(まったく伴奏がないが)十字架の下での聖母の悲しみ、6番目は復活、7番目は聖母の永眠、そして最初と最後のセクションは痛めつけられた世界の上にある聖母の宇宙的な美しさと力を表している。聖母の涙を思い起こして音楽は終わる。」

《プログラムノート》 青澤隆明

 1944年のロンドンに生まれたジョン・タブナーは1977年にギリシャ正教に入信して以来、信仰に深く根ざした創作を探求した独自の美学で名声を博している。それでも初期作品にビートルズが示した関心に象徴されるように、タヴナーの作品は美しい響きと瞑想性もあいまって広範なポピュラリティを獲得している。ビヨークの声に魅せられて書かれた《プレイヤー・オヴ・ザ・ハート》が彼女の歌とブロドシキー・クァルテットの演奏で2001年に録音初演されたことの、タヴナーの作品が広く支持されているひとつの証だろう。

 早くから音楽に才能を示し、ピアニストやオルガニストとして活躍したタヴナーは、ロイヤル音楽アカデミーでピアノをソロモンに、作曲をレノックス・バークリーに師事した。1965年にはカンタータ《鯨》が、ロンドン・シンフォニエッタのデビュー・コンサートで初演され、圧倒的な成功を収めて以来、タヴナーの個性的な音楽は注目を集め続けている。

 《奇跡のヴェール》は1989年にBBCの委嘱で作曲され、同年9月4日にスティーブン・イッサーリスの独奏、オリヴァー・ナッセンの指揮、BBC交響楽団によりロンドンで初演された。タヴナーの代表作のひとつで、ロシア正教が紀元前902年頃から信仰する「聖母の守護ヴェール」からの発想にもとづいて作曲されている。サラセン人の侵略でギリシャは大きな危機を迎えたが、聖母が祈り、ヴェール(あるいはストール)を広げて信徒を守る、というヴィジョンに鼓舞されて、ギリシャ人たちは抵抗し、異族の軍隊を追い払ったという。

 「この作品を純粋に音楽として聴くことは完全に可能だが、私は響きのうちにリリカルなイコンを描こうと願った。聖母のほとんど宇宙的ともいえる霊力を捉えようと私は務めた。聖母はチェロによって表現され、一貫して歌いやむことがない。弦楽の伴奏は、聖母の終わりなき歌の巨大な拡張をなす」と作曲者は記している。ビザンツ聖歌のオクトエコス(8旋法)を用いて書かれ、全曲は途切れなく演奏される8つの部分から構成される。

シューマン:交響曲第1番 変ロ長調 Op.38「春」

Ⅰ.アンダンテ ウン ポコ マエストーソ-アレグロ モルト ヴィヴァーチェ   Ⅱ.ラルゲット   Ⅲ.スケルツォ:モルト ヴィヴァーチェ-トリオ:モルト ピュウヴィヴァーチェ-トリオ Ⅱ   Ⅳ.アレグロ アニマート エ グラツィオーソ

 第1楽章 第1ヴァイオリン左前、第2ヴァイオリン右前。コントラバス3。壮大なトッティの出だし。充実したアンサンブル。春の目覚めの雰囲気。素敵なテーマがドンドン流れる。歌に満ちている。音楽が湧いてくる。相変わらず見事なアンサンブル。後半、充実した合奏。軽快に走る。トライアングルが響く。   第2楽章 夢見るようなメロディで始まる。よく音楽が流れる。   第3楽章 勢いのある出だし。活発に進行。中間にトリオ風のテーマ。そして初めのテーマを経て4楽章へ。   第4楽章 ダイナミックに4楽章へ入る。弦、刻むように、春らしいテーマが出てくる。金管が印象的な響き。また弦が刻むようなテーマを奏する。重厚な合奏。テンポを上げて走る。そしてホルンやフルートが素敵なテーマを奏でる。コーダへ。トランペットが突っ走る。トロンボーンなど力強く響き大きく盛り上がる。ブルネロは力がある。紀尾井シンフォニエッタはメッチャ上手い。ブラヴォー。

アンコール バッハ:ボラーレ

 チェロの独奏とオーケストラのチェロ、コントラバスがピチカートで続く。

《プログラムノート》 青澤隆明

 ドイツの作曲家ロベルト・シューマン(1810~56)にとって、交響曲の創作は作曲家として最大の目標であったが、初期の作品はピアノ曲にほぼ集中し、1840年にクララとの結婚が達成される頃に歌曲が旺盛に書かれている。そうして以後のシューマンはさまざまな分野の創作にいよいよ乗り出していく。1842年には室内楽の傑作が多く生みだされているが、その前年にシューマンはオーケストラの作品やそのスケッチを集中して創作し、第1交響曲も1841年1月から2月にかけて作曲された。

 1828年に十代のシューマンがライプツィヒで体験したベートーヴェン・ツィクルスを大きな思想の出発点として、交響曲のスケッチやピアノや室内楽作品のオーケストレーション、1830年代前半にはト短調交響曲への本格的な取り組みなどを経て、この変ロ長調が第1番Op.38として生みだされた。1839年頃にはドイツ人による交響曲作品の内容の乏しさに自ら訴えていたように、ベートーヴェンの達成から半世紀を経ていた。シューマンがいよいよ最初の交響曲を世に問うことになったきっかけとしては、1839年1月にシューベルトの兄フェルディナントの家で大ハ長調交響曲の楽譜を見出し、大きな刺激を得たこともある。

 シューマンの第1交響曲が《春》と呼ばれるのは、ベットガーの春の詩行に霊感を得て書かれ、自筆譜に《春の交響曲》、それぞれの楽章に「春の始まり」、「夕べ」、「楽しい遊び」、「春たけなわ」の記入があることに由来している。クラーラとの幸福な日々の充実が重なっているのだろう。

 日記を兼ねたシューマンの「家計簿」によれば、この交響曲のスケッチは1月23日に開始、26日に完成。オーケストレーションは翌日から着手、2月20日にスコアが完成された。1841年3月31日にライプティヒのゲヴァントハウスにおけるクラーラ・シューマンの演奏会で、メンデルスゾーンの指揮で初演された。本作は圧倒的な成功を収め、シューマンの保管した初版譜に添えられた記録によると59回も演奏され、彼の代表作となった。

 第1楽章(変ロ長調)は、アンダンテ・ウン・ポーコ・マエストーソの堂々たる序奏と、アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ、ソナタ形式の主部からなる。

 第2楽章のラルゲット(変ホ長調)では、シンプルな音階旋律を主題として、多彩な楽器が豊に歌い継いでいく。トローンボーンの奏でるエピローグを経て、第3楽章はモルト・ヴィヴァーチェ(ニ長調)、2つのトリオ(ニ長調、変ロ長調)を持つ独創的なスケルツォが展開する。フィナーレは、アレグロ・アニマート・エ・グラツィオーソ(変ロ長調)。短い序奏を経て、明るく遊興に充ちたソナタ形式に主部に入る。スタッカートで演奏される第2主題の前半部(ト短調)には、《クライスレリアーナ》Op.16の終曲の旋律が聴こえる。

《プロフィール》

指揮・チェロ:マリオ・ブルネロ

 1960年イタリアのヴェネト州カステルフランコ生まれ。アドリアーノ・パンドラメリ及びアントニオ・ヤニグロに師事。1986年、イタリア人として初めて第8回チャイコフスキー国際コンクールに優勝および批評家特別賞、聴衆賞を受賞。その後、世界に活躍の舞台を広げ、これまで、アバド、ビシュコフ、インパル、ヤノフスキ、ムーティ、小澤征爾、メータ、サヴァリッシュら世界の名だたる指揮者と共演。また、室内楽でもクレーメルやアルバン・ベルク四重奏団などの名手たちと共演を重ねており、まさに世界一流の指揮者、オーケストラ、演奏家から共演を臨まれる世界屈指のチェリストである。・・・・・

 近年は指揮者としても活躍中で、2002年、2003年には自身が主宰するオーケストラ・ダルキ・イタリアーナを率いて来日。2002年~2004年にはパドヴァ歌劇場管弦楽団音楽監督を務めたほか、2001年、2003年、2006年、2007年と紀尾井シンフォニエッタ東京を指揮し、高い評価を得る。・・・・・

 現在使用している楽器は、以前フランコ・ロッシが使用していた17世紀製作の「マッジー二」。

コンサートマスター:澤 和樹

 1973年東京藝術大学に入学。1979年同大学院修了。ロン=ティボー、ヴィエニアフスキの両国際コンクールに相次いで入賞。SAWA QUARTET、東京弦楽合奏団を主宰。東京藝術大学教授。英国王立音楽院名誉会員。

《レコードやCDのことなど》

 ハイドン:交響曲第6番「朝」

 レコードやCDは自分の気に入ったものを聴いていればいいわけですが、私はジギスヴァルト・クイケン指揮のハイドンの交響曲選集のCDをよく聴いてきました。しかし第6番「朝」はありません。

 鈴木秀美指揮オーケストラ・リベラ・クラシカがハイドンの交響曲全曲演奏・録音を目指していますので、それを期待しますか。(「朝」は先だって演奏会にかかりましたのでほどなくCD化されると思います。)

 シューマン:交響曲第1番「春」

 私はサヴァリッシュ指揮ドレスデン国立オーケストラのLPレコードをよく聴いてきました。爽やかな演奏で気に入っています。

   

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2009年11月28日 (土)

演奏会に行ってきました「「レクチャー・コンサート『作曲家の挑戦』シリーズ3rd ピアノ300年の旅 ナビゲーター&フォルテピアノ、モダンピアノ:菊池洋子 「モーツァルト、ウェーベルン、シェーンベルク」(2009-46)  

2009年11月6日(金)19:00開演 東京文化会館小ホール(東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅徒歩8分

《プログラム》

ピアノ300年の旅

ナビゲーター&フォルテピアノ、モダンピアノ:菊池洋子

モーツァルト:ロンド ニ長調 KV485

モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第1番 ハ長調 KV279

ウエーベルン:ピアノのための変奏曲 Op.27

モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第5番 ト長調 KV283

     ・・・・休 憩・・・・

モーツァルト:ロンド イ短調 KV511

モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第15番 ハ長調 KV545

シェーンベルク:6つの小さなピアノ曲 Op.19

モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第8番 イ短調 KV310

《印象 感想など》 レクチャーの聞き書き( )は、文責:モントウー

 会場はほとんど満席。人気のレクチャー・コンサート。ナビゲーター、奏者の菊池洋子は艶やかなレッド(燃えるような赤の衣装~上着:シャツ)、明るい焦げ茶色のスカートで登場。

モーツァルト:ロンド ニ長調 KV485

 フォルテピアノ。ひなびた音。有名な愛らしいテーマ。的確なテクニック。

 (フォルテピアノは、クラヴィコード、クラヴサンとも言う。ショパンの愛用したのはプレイエル。クラヴィチェンバロは、1700年、アントンワルターのコピー楽器。モーツァルトは、アントンワルターの楽器を愛用した。)

《解説》 寺西基之

 この愛らしい小品のはモーツァルト(1756~91)が女弟子のために1786年に書いた曲である。18世紀におけるロンドという曲種の概念どおり、軽快で明るい性格を持つ曲だが、形式的にはロンドの形をとらず、単一主題のソナタ形式によっている点が注目される。

 また主題は1782年に死去したヨハン・クリスティアン・バッハの五重奏曲Op.11-6からとられている。クリスティアン・バッハは大バッハの末子で、モーツァルトは幼い時に彼の教えを受けて大きな影響を受けた。そのため、このロンドは尊敬する亡き師へのオマージュとして書かれたのではないかとする説ももある。

モーツァルト:ソナタ第1番 ハ長調 KV279

第1楽章 (フォルテピアノの素敵な曲。強い音が出せる。)愛らしいテーマ。  第2楽章 少しテンポをゆっくりめに、ささやくようなピアノ。そして雄弁な音楽へ。  第3楽章 テンポをあげる。鳥がさえずるように、心地よく軽快に。

《解説》 寺西基之

 チェンバロからフォルテピアノ(現代のピアノの前身)への移行期にあたっていた18世紀後半に、モーツァルトは新しい時代と楽器に相応しいソナタの様式を求めていった。

 彼のソナタのうち現存する最初の一連の作品がKV279~284(第1~6番)の6曲セットである。これらは近年の研究では1775年初めミュンヘンでデュルニッツ男爵のために一気に書かれたと考えられている。短期間に書かれたにもかかわらず、各曲ごと創意工夫が凝らされ、それぞれ個性的な作品となっている点にソナタの新しい可能性を多角的に探ろうとする当時の彼の意欲的な姿勢が窺える。

 6曲の最初に置かれたこのハ長調は、アルペッジョや装飾的な音の動きなどのチェンバロ的書法や当時流行の多感様式などの影響がいまだ色濃い曲で、彼のソナタの出発点を知る上で興味深い。いずれもソナタ形式のアレグロ、アンダンテ、アレグロの3つの楽章でなっている。

(モーツァルトはイタリア留学中、古楽器にふれた。現代のピアノの音色がつまっている。古楽器はオクターブごとに音色が違う。魅力的である。フォルテピアノはペダルも足ではなく、膝で押す。鍵盤の幅も狭い。)

ウエーベルン:ピアノのための変奏曲 Op.27

 スタインウエイで弾く。(ウエーベルンはシェーンベルクやベルクの生徒だった。12音技法がきっちりと使われている。6分くらいの曲。)

 モーツァルトとは全然違う世界の音楽。しかしロマン性を感じる。ポツリ、ポツリと弾かれる感じの曲。

《解説》 寺西基之

 ウエーベルン(1883~1945)は師シェーンベルクやベルクとともに新ウイーン学派といわれる。20世紀前期に活動した彼らは、伝統的な調性音楽の語法から離れて無調の音楽を追求したグループで、最終的には無調をシステム化した12音技法へ到達する。中でもウエーベルンの音楽は極度にきりつめた密度の高い抽象性を特質とし、1936年のこの「変奏曲」でも、12音技法を厳格に用いつつ凝縮した音の世界を築いている。全体はきわめて短い3つの楽章(ごく中庸に~非常に速く~静かに流れるように)からなる。「変奏曲」とはいえ、古典的な意味での“主題と変奏”形式(第3楽章はそうした形をとるが)でなく、12音技法の音列変奏による作品である。

モーツァルト:ソナタ Op.31

 モーツァルトのOp.31~プログラムにない曲~をフォルテピアノで弾く。楚々とした音楽。そしてモダンピアノ(スタインウエイ)でも弾く。(「どのように感じたでしょうか?」古楽器から音を提供してもらう。現代は自分で音を捜していく。)フォルテピアノは長調の調べ。明るい。①キビキビとした音楽 ②可愛らしいテーマ ③少しダイナミックに活発流れる。素晴らしい演奏。

モーツァルト:ソナタ第5番 ト長調 KV283

《解説》 寺西基之

 第1番の項で述べたモーツァルトの最初のソナタ・セットに含まれるこのト長調ソナタは、6曲の中でもとりわけ自然な流れを持ち、カンターブレ豊かな性格を特徴としている。2つの対照的な主題とともに展開部ではさらに新しい主題が現れるアレグロ、ソナタ形式のうちに対照的な楽想が流麗に扱われる穏やかなアンダンテ、躍動的なソナタ形式によるプレストのフィナーレからなっている。

モーツァルト:ロンド イ短調 KV511

 スタインウエイで弾く。有名なテーマ。あまりもたれかからない、素敵な曲、演奏。少し明るさが感じられる。何とも心地よい素敵な演奏。そっと終わる。

《解説》 寺西基之

 最初に聴いたニ長調のロンドがいかにもロンド的な明るい性格を持ちながらも形式はロンドからはずれていたのに対し、このイ短調のロンドは、形式こそロンドの形(ABACA)に従っているものの、性格は当時のロンドの概念からほど遠く、悲しげな曲想を示している。曲が書かれた1787年のモーツァルトは、身近な人の死を続けて経験したことで死について深く考えるようになっていた。

 このロンドにはそうした当時の彼の思いが現れているのかもしれない。シチリアーノのリズムを持つ半音階的な主題は、いかにも悲壮感に溢れており、長調の2つの副主題(2番目のものはグルックの「オルフェオ」のアリアの引用)でさえ、その根底に寂しげな情感を宿している。後期の彼の孤高の作風を象徴する名品だ。

モーツァルト:ソナタ第15番 ハ長調 KV545

 誰でも知っている曲。出だし①軽く弾く ②滑らかに流れる。短調っぽいところも ③テンポを速めて、可愛らしい感じの曲。最後はダイナミックに。

《解説》 寺西基之

 『ソナチネ・アルバム』でもおなじみのこのソナタは1788年の作で、モーツァルト自身目録に“初心者のために"と記している。いかにも初心者向きの簡単なソナタだが、その中に示された音楽的豊かさは円熟期の彼の筆遣いが感じられよう。簡単なソナタ形式のアレグロ、優美なアンダンテ、躍動感に満ちたロンドのアレグレットといった構成をとる。

シェーベルク:6つの小さなピアノ曲 Op.19

 まさに現代曲。しかしロマン的で懐かしい感じの曲。

《解説》 寺西基之

 シェーンベルク(1874~1951)はウエーベルンの項で触れた新ウイーン学派の指導者で、12音技法も彼によって開発された。もっとも本日のこのOp。19は、まだ彼が発案する前の1911年の所産である。もちろん無調による作品で、各曲が凝縮された短いものとなっている点に特徴がある。極小形式といわれるこうした様式は、新ウイーン学派の中でも特にウエーベルンが追求することとなったものだが、シェーベルクもこのOp.19でそれを試みていて、例えばその第2曲や第3曲はわずか9小節しかない。やはり全9小節の第6曲は、尊敬する作曲家マーラーの訃報を聞いて追悼の思いを込めて書かれたという。

モーツァルト:ソナタ第8番 イ短調 KV310

 第1楽章 有名な出だし。深刻ぶらない演奏。  第2楽章 素朴な音楽。中間、左手(低音)がよく響く。  第3楽章 例の有名なテーマ。テンポよく流れる。コーダ、きっちり演奏。

《解説》 寺西基之

 モーツァルトは1777年秋から約1年半にわたりマンハイム=パリ旅行を行った。よい地位を求めての旅行だったが、その目的が果たせなかった上に同行していた母親がパリで死去(1778年1月)したり失恋したりなど、散々な結果に終わる。

 しかし当時の音楽先進地マンハイムやパリの音楽に触れたことは、彼の作風をより豊かにすることなった。このイ短調のソナタも旅行中の1778年パリで作曲されたものである。それまでの彼のピアノ・ソナタにはみられなかった短調による暗く激しい感情が打ち出されている点が特徴的で、母親の死に対する悲しみと関連づけて解釈されることも多い。悲劇的な緊張に溢れるソナタ形式のアレグロ・マエストーソ、慰めに満ちた歌が歌われるアンダンテ・カンタービレ・コン・エスプレッショオーネ、不安げに疾走するプレストと続く劇的なソナタである。

アンコール モーツァルト:グラスハーモニカのためのアダージョ

《プロフィール》

ナビゲーター&フォルテピアノ、モダンピアノ:菊池洋子

 前橋市生まれ。1933年、桐朋学園女子高等学校音楽科入学。故田中希代子、林秀光の各氏に師事。卒業後、イタリアのイモラ音楽院に留学、フランコ・スカラ、アントニオ・バッリスタ、フォルテピアノをステファノ・フィウッツィに師事。1997年、ミラノにおいてソロ・リサイタルを行う。同年ユベール・スダーン指揮シチリア交響楽団のコンサートツアーのソリストに抜擢され、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を3夜連続コンサートで演奏し、イタリアの新聞紙上で絶賛された。

 2002年1月ザルツブルグで行われた第8回モーツァルト国際コンクールにおいて日本人として初めて優勝し、一躍注目を浴びる。2003年には夏のザルツブルグ音楽祭/モーツァルト・マチネーに出演、アイヴァー・ボルトン指揮ザルツブルグ・モーツアルテウム管弦楽団とモーツァルトのピアノ協奏曲第21番で共演し、大成功をおさめた。・・・・

 2005年初のソロCD「モーツァルト・アルバム」(エイペクス)をリリース。「第18回(2005年度)ミュージック・ペンクラブ音楽賞を受賞 クラシック部門 録音・録画作品(日本人アーティスト)賞」を受賞・・・・2007年題17回出光音楽賞受賞。 

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2009年11月24日 (火)

演奏会に行ってきました「東京藝術大学学生オーケストラ演奏会Ⅲ プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番、チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」(2009-45)

平成21年10月30日(金)18時30分開演 奏楽堂 指揮:尾高忠明 ピアノ:野田清隆 東京藝術大学学生オーケストラ 入場:無料(全席自由) 東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅 上野公園:奥 徒歩25分~30分 無料演奏会なので、奏楽堂の入り口から長い列が並ぶ 私の席:11列23番

《プログラム》

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.16

チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調「悲愴」 Op.74

《印象 感想など》

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.16

 ピアノ:スタインウエイ。聴衆はかなり入る。 第1楽章 コントラバス6人、右奥。ピチカート風の伴奏で入る。プロコフィエフとしてはかなりロン的な音楽。ダイナミックなピアノ、伴奏。カッチリとしたロマン的なピアノ、相当なテクニシャン。カデンツアはなかなかのメロディーが流れる。金管楽器が壮大に響く。静かに閉じる。  第2楽章 唐突にピアノ、伴奏刻むように出る。速いテンポで快適に走る。  第3楽章 弦楽器、金管楽器、低音で小気味良くテーマを奏でる。ピアノがロマン的なテーマを刻むようにトレモロ風に奏でる。  第4楽章 テンポよく飛び出す。チューバやトロンボーンがしっとりとした旋律を奏す。ピアノがカデンツアー風に弱音でソロで奏す。ピアノがフォルテでコーダへ。「バーン」と終了。ピアノ凄腕、伴奏も上手く付ける。40分程度の大曲。ブラヴォー。

チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調「悲愴」 Op.74

 第1楽章 重く苦しい、ファゴットやコントラバスの有名なテーマの出だし。さすが尾高御大、学生オケをとても良く仕上げてくる。例のメタメタのテーマをよく歌わせ、流れる演奏。クラリネットが上手い。  第2楽章 勢いよく入る。ホールが鳴る。どんどん突っ走る。金管が凄い響き。そして例のテーマ。メタメタむせび泣く。  第3楽章 スケルツォ。弦が快調に入り、流れる。チェロやコントラバスがピチカート。どんどん音楽が盛り上がる。壮麗な音楽へ。学生オケをここまで仕上げてくるのは凄い。もっともプロの卵達だが。プロも顔負けだ。豪快、勇壮に突っ走る。合奏力は馬力が入る。なんでこの演奏が無料なのだ。  第4楽章 例のナミダ、涙のテーマ、音楽。もの凄いアンサンブル。メタメタむせび泣く。尾高はさすが凄い。コーダは盛り上がり、消えるように静かに終わる。ブラヴォーでした。

《プロフィール》

指揮:尾高忠明

 1970年桐朋学園大学卒業、第2回民音指揮者コンクールで第2位に入賞。1971年にNHK交響楽団を指揮してデビュー。1972年オーストリア政府から奨学金を得てウイーン国立アカデミーに留学、ハンス・スワロフスキーに師事、さらにオペラをシュパンナーゲルに学んだ。

 現在、札幌交響楽団音楽監督(2004年5月~)、BBCウエールズ交響楽団(現BBCウエールズ・ナショナル管弦楽団)桂冠指揮者(1996年1月~)、東京フィルハーモニ交響楽団桂冠指揮者(1991年4月~)、読売日本交響楽団名誉客演指揮者(1998年4月~)、紀尾井シンフォニエッタ東京桂冠名誉指揮者(2003年9月~)を務めるほか、東京藝術大学指揮科主任教授、相愛大学音楽学部客員教授。

 2008年9月から新国立劇場オペラ部門芸術参与を務めている。

ピアノ:野田清隆

 東京藝術大学、大学院修士課程を経て、博士後期課程を修了。浜口奈々、K.シルデ、植田克己の各氏に師事。1995年第64回日本音楽コンクール第1位、井口賞、河合賞、野村賞。1998年クロイツァー賞。ソリストとして秋山和慶、尾高忠明をはじめとする指揮者と共演するほか、各地でリサイタルや放送に出演。室内楽でも内外の名手と共演を重ねている。また現代作曲家の新作初演や、自らのプロジュースによるコンサートも行う。ブラームスと20世紀作品を組み合わせた一連のリサイタルにより、博士号を取得。

 現在、東京クライスアンサンブル・メンバー。東京藝術大学ピアノ科非常勤講師ならびに東京音楽大学指揮科助手。

東京藝術大学音楽学部学生オーケストラ

 東京藝術大学音楽学部学生オーケストラは、学部の2年~4年次までの弦楽・管・打楽専攻学生を主体として編成され、古典から現代までのオーケストラ作品(管弦楽曲・協奏曲・オペラ等)を中心に学び、授業の成果を学内外で発表している。今年度の計画は、学生オーケストラ学内演奏会Ⅰ~Ⅲ、伊澤修二記念音楽祭、第41回学生オーケストラ定期演奏会の他、日本国際賞受賞記念演奏会、音楽大学オーケストラフェスティバル、妙高公演等の出演が予定されている。また、今年度の指揮・指導は、尾高忠明、湯浅卓雄、梅田俊明、迫 昭嘉、M.アンドレ(敬称略)が予定されている。

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2009年11月23日 (月)

藝大フィルハーモニア第35回定期 メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」、マーラー:歌曲集《少年の不思議角笛な》(2009-44)

2009年10月23日(金)19:00開演 東京藝術大学奏楽堂(大学構内)(東京メトロ日比谷線・銀座線徒歩25分・上野公園奥(私の席19列22番:自由席)

《印象 感想など》

 コントラバス6人 左奥、コンサートマスターは女性:たぶんソロコンサートマスター:野口千代光

F.メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 作品90「イタリア」(1833/34年改訂版)

第1楽章 Alegro vivace    第2楽章 Andante  con  moto    第3楽章 Menuetto,Con moto grazioso  第4楽章 Saltarello Allegre di molto

第1楽章 有名な出だし。明るく張りきって出る。オケは締まった演奏。第2ヴァイオリン、右手前。快調に飛び出す。  第2楽章 少し憂いを帯びたテーマ。このホールは、とても良く鳴る。聴き慣れた曲とは違うメロディーが時折流れる。改訂版のせいか。  第3楽章 明るいテーマ。聴き慣れないメロディーが時折流れる。滑らかにメロディーを歌う。トリオのホルンとトランペットが印象的。  第4楽章 リズミックに生き生きと飛ばす。「イタリア」の醍醐味。また聴き慣れないテーマが出る。快調に盛り上がる。快演。

《曲目解説》 島野聖章(本学演奏藝術センター教育研究助手)

 メンデルスゾーン(1809~1847)は1830~31年にかけてイタリアに滞在した。その際、音と風景の両面で受けた印象から着想を得て、ローマ滞在中に早速交響曲の作曲にとりかかった。しかし、曲は仕上がらず、一度は中断する。

 その後1832年11月5日、メンデルスゾーンはロンドン・フィルハーモニック協会から、2年間のうちに交響曲1つ、序曲1つ、声楽曲1つを100ギニーで作曲することを依頼された。このうち交響曲の依頼に応えるべく、中断していた交響曲の創作を再開、1833年3月13日に完成させた。そして4月にロンドンに渡り作品を協会に提出したのである。これが交響曲第4番「イタリア」である。

 初演は1833年5月13日、ロンドンで作曲者自身の指揮により行われ、大成功をおさめた。しかし徹底した完璧主義者であったメンデルスゾーンはこれに満足せず、翌年第2,3,4楽章の改訂を行った。初演時の楽譜は契約通り協会に預けられたので、記憶を頼りに主題の輪郭は大まかに残しつつも、速度表示、旋律、フレージングありとあらゆるところを書き直したのである。第1楽章についてもメンデルスゾーンは改訂の必要を感じていたが、あまりに大がかりになると判断、それを断念した。

 残された手紙から、メンデルスゾーン自身、この改訂にかなり満足していたとがわかっている。しかし結局は自分の手元に楽譜を置き、生存中に楽譜を出版することもなければ、自身の指揮で演奏することもなかったのである。

 メンデルスゾーンの死後、1851年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から「メンデルスゾーン全集」の一部として「イタリア」の楽譜が出版されたが、このとき元になったのは「1833年稿」だと考えられる。そしてこの楽譜は事実上「イタリア」の決定版として長い間使われ続けたのである。

 一方「1834年改訂稿」は長い間出版されることはなかったが、2001年にライヒュエルト社(J.M.クーパー校訂)、2009年にベーレンライター社(C.ホグウッド校訂)から出版され、その内容が明らかになった。上述のとおり第1楽章が書き直されなかったので、これはいわば「未完の改訂版」ということになるが、それでも作曲者自身が手応えを感じていたヴァージョンである。今後演奏される機会も増えていくことであろう。

 尚本日の演奏会ではベーレンライター版を使用し、第1楽章は従来どおり「1833年版」、第2,3,4楽章は「1834年改訂稿」が演奏される。録音が少なく(入手可能なCDの例として、1997-8年に録音されたJ.E.ガーディナー指揮、ウイーン・フィルハーモニ管弦楽団のが挙げられる。)演奏会でもまだまだ聴く機会が限られている「改訂版」ということで、「イタリア交響曲」に普段から慣れ親しんでいる方々にとっても、本日の演奏は大変興味深いものとなるであろう。

第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ、イ長調、8分の6拍子、ソナタ形式。メンデルスゾーンのイタリアの第一印象がそのまま音になったかのような、明るく力強い楽章である。鮮やかな第1主題、木管楽器による流麗な第2主題ののち、展開部では短調の主題と第1主題が対立し、劇的に展開していく。

第2楽章 アンダンテ・コン・モート、ニ短調、4分の3拍子。この楽章は、作曲者がナポリで見かけた重い足取りで道を行く巡礼の行列から着想したと思われる。2小節の序奏の後、オーボエその他の楽器が叙情的な主題を奏でていく。

第3楽章 メヌエット、コン・モート、グラツィオーソ、イ長調、4分の3拍子。1833年稿では「モデラート(中くらいの速さで)という表記があったが、改訂稿ではその代わりに「グラティオーソ(優美に)」という指示になっている。弦楽器による息の長い第1主題と、木管楽器を中心とした第2主題が対照的に歌われる極めて美しい楽章。

第4楽章 サルタレロ、アレグロ・ディ・モルト、イ短調、4分の4拍子。「サルタレロ」はローマで流行したテンポの速い舞踏である。ローマの町の広場で生き生きと踊る人の姿からインスピレーションを得たものと思われる。一方中間部のト短調の部分には「タランテラ」のリズムが使用されており、この2つの舞曲が巧に組み合わされて、息もつかせぬほどの勢いで曲が展開していく。

G.マーラー:歌曲集《少年の不思議な角笛》

 1.死んだ鼓手  2.この世の暮らし  3.徒労  4.塔の中の囚人の歌  5.この歌を作ったのは誰?  6.美しいラッパの鳴るところ  7.歩哨の夜の歌  8.ラインの伝説  9.魚に説教するパドヴァの聖アントニウス。  10。高い知性を讃える  11。少年鼓手  12。不幸の中のなぐさめ

 メゾゾプラノ:寺谷(てらたに)千枝子  バリトン:福島明也(あきや)

 オーケストラ:藝大フィルハーモニ(東京藝術大学管弦楽研究部)

 指揮:高関 健

 プレトーク:

 マーラーと『少年の不思議な角笛』

  おはなし:檜山哲彦(ドイツ文学者・本学音楽学部教授)

《印象 感想など》

1.死んだ鼓手

  まさにマーラーの音楽が鳴り響く。バリトン:張りのある素敵な声。伴奏、厚みのある音。

2.この世の暮らし

  メゾ・ソプラノ:艶のあるよく通る声。

3.徒労

  メゾ・ソプラノ、バリトン。少し不安感を漂わせた音楽。

4.塔の中の囚人の歌

  二人の歌唱。バリトンからメゾ・ソプラノへ。

5.この歌を作ったのは誰?

  少し愉快な歌。

6.美しいラッパの鳴るところ

  メゾ・ソプラノの歌唱。ラッパが鳴る。しっとりとした歌唱。

7.歩哨の夜の歌

  メゾ・ソプラノからバリトンへ。そして二人の歌唱。またメゾ・ソプラノからバリトンへ。

8.ラインの伝説

  メゾ・ソプラノの歌唱。ワルツ風の伴奏。

10.魚に説教するパドヴァの聖アントニウス

  バリトンの歌唱。コントラバスから少し滑稽味を帯びた伴奏が流れる。

11.高い知性を讃える

  バリトンの少し重い歌唱。ティンパニーを伴う。少しおどろおどろしい音楽。

12.不幸の中のなぐさめ

  メゾ・ソプラノからバリトンへ。二人の歌唱で終わる。

《曲目解説》 島野聖章(本学演奏藝術センター教育研究助手)

 『少年の不思議な角笛』は、アルニム(1781~1831)とブレンターノ(1778~1842)という2人の詩人が1805年から08年からにかけて、ドイツの民衆によって歌い継がれてきた伝説的な民謡の歌詞のみを編纂した民謡詩集である。19世紀初頭、ドイツの民衆芸能のあり方が議論される中、この作品の出版は、1つの大きな事件だったといわれる。

 マーラー(1860~1901)はこの詩を用いて、全く独自の方法で管弦楽伴奏つきの歌曲を創作した。もちろん音楽的要素の強調、レントラーなど民族舞曲のリズムの使用など、詩に内容を意識してはいる。しかし、形式構造、和声などで全く独自の大胆な手法を見せ、時には『角笛』歌詞にまで変更を加えて再解釈を施し、独自の境地を開拓したこれらの歌曲は単なる「おとぎ話」や「中世文化の復興」の域をはるかに越えた、まぎれもないマーラー自身の世界だと言えよう。

 因みにこれらの歌曲に対する当時の聴衆の反応は賛否両論であったといわれている。作品の独自性を感じ取ったのはほんのわずかで、大多数の人々は、マーラーが素朴な民謡の素材を、精巧に、時に皮肉っぽく扱うことに戸惑いを覚えたのである。

 なおこれらの歌曲は最初から1つまとまった作品集として出版されたわけではない。またはじめは歌曲として出版されたものが後に交響曲の一部に転用されて歌曲集からは削除されるなど、出版事情は少々複雑である。従って「歌曲集《角笛》というときに含まれる作品は、その時々によって多少異なっている。またこのような事情jから演奏順序が特に指定されているわけでもなく、その都度自由に決定されて演奏される。

1.死んだ鼓手:戦場で倒れた兵士たちが死んだ鼓手の起床合図とともに立ち上がって幻の演奏をするという歌。打楽器を多用した行進曲のリズムと「トララリ、トララライー~」という兵士が口ずさむ戦いの歌を模倣した歌詞が、軍楽のイメージを決定づけている。

2.この世の暮らし:「お母さん、パンをくれなければ死んでしまうよ!」と空腹を嘆く子供と、それをなだめる母親とのやり取りを描いた歌。全体を通して半音階の動きが支配的であり、不安で不気味な動きに満ちている。

3.徒労:「彼女」が「彼」を誘惑しようとあの手この手を尽くすが、その都度「彼」はすげなく断るというユーモラスな曲である。「彼女」の深刻な訴えをよそにオーケストラ・パートは軽快なワルツのリズムを刻んでいるというマーラー特有のアイロニーが印象的。

4.塔の中の囚人歌:もともとは「思想は自由だ“Die Gedanken sind frei” というタイトルの民謡で、政治活動家が弾圧に対して自由を叫ぶという内容だが、編者のアルニムとブレンターノが「少女」を登場させ、対話形式の曲にした。マーラーは囚人の部分に8分の12拍子で軍隊風の力強い音楽、少女の部分に8分の6拍子で間奏曲風の叙情的な音楽をつけて、明確な対比を形作っている。

5.この歌を作ったのは誰?:田舎の若い男女の恋をテーマにしたのどかな曲。レントラー調のゆったりとした作品に見えるが、序奏の複雑な複雑な拍節構造、失恋の内容に対してユーモラスな音楽がついていることなど、マーラーならではのアイロニーが織り込まれている。

6.美しいラッパの鳴るところ:戦死した兵士の霊が恋人のもとへ帰ってきて、「僕の家は緑の荒野、美しいラッパの鳴るところ」と告げる悲しげな歌。軍楽風のファンファーレのモチーフが用いられるが、弱音器をつけてホルンによって奏されるため、ノスタルジックな独特の味わいがある。因みに歌詞は、、起源を同じくする2つの詩をマーラーが切り貼りして作った。

7.歩哨の夜の歌:深夜、寝ずに番をしている兵隊と、その脳裏に浮かぶ恋人の幻影との間で交わされる対話であり、その対比は軍楽的な楽器構成やリズムが印象的な番兵の部分と、優美で夢想的な女の部分の対比によって際立っている。

8魚に説教するパドヴァの聖アントニウス:聖アントニウスが魚に説教を垂れ、魚は説教をよく聞いたが、説教が終わった途端に泳いでいってしまったという、ユーモラスな内容の歌である。流れるような弦の伴奏が、魚が泳ぐ川の流れを巧に描写しているが、説教が進むにつれて音楽も新しい素材が登場し、最後に説教が終わるところでまた冒頭の素材が回帰してもとの黙阿弥に終わるなど、音楽の付け方にも工夫がなされている。

10.高い知性を讃える:カッコーとナイチンゲールが歌合戦をするが、聴く耳のないロバが審判を務めたためにカッコーの勝ちに終わったという歌。古くからの民謡に基づく詩が歌われている。曲全体を通して鳥の鳴き声が様々な方法で模倣されている。また、ソリストがロバの鳴き声は、2オクターブと半音という非常に幅広い音程であり、印象的である。

11.少年鼓手:第1曲目の「死んだ鼓手」と同様、軍楽風の音楽であり、鼓手が主人公であるが、こちらはおそらく脱走を試みたために絞首台にかけられよういとしている少年鼓手の嘆きが、暗く重々しい葬送行進曲の音楽にのって歌われる。

12.不幸の中のなぐさめ:軽騎兵と恋人の少女の間の喧嘩別れの様子が、軍楽的な響きを伴って軽快に歌われる。対話形式の音楽である。

《プロフィール》

高関 健

 桐朋学園在学中の1977年にカラヤン指揮者コンクールジャパンで優勝。翌年同大学卒業後、ベルリン・フィル・オーケストラ・アカデミーに留学、1985年までカラヤンのアシスタントを務めた。1981年タングルウッド音楽祭で、バーンスタイン、小澤征爾らに指導を受け、同年ベルゲン交響楽団を指揮してヨーロッパデビュー。1983年ニコライ・マルコ記念国際指揮者コンクール第2位入賞、1984年ハンス・スワロフスキー国際指揮者コンクール優勝。1994年“プラハの春音楽祭”“ウイーン芸術週間”を含む群響欧州公演を成功に導いた。・・・・

 1986~90広響音楽監督・常任指揮者、1994~2000新日本フィル正指揮者、1997~03大阪センチュリー常任指揮者、1993.1~2008.3群響音楽監督を務め、現在、札響正指揮者。1996年6月渡邊暁雄音楽基金音楽賞。桐朋学園大学と東京藝術大学で後進の指導にもあたっている。

藝大フィルハーモニア(東京藝術大学管弦楽研究部)

 藝大フィルハーモニア(管弦楽研究部)は東京藝術大学に所属するプロフェッショナルオーケストラであり、オーケストラ演奏を専門とする研究部員によって組織されている。

 主な活動としては、毎年春と秋に開かれる定期演奏会、声楽科との合唱付きオーケストラ作品の演奏、オペラ研究部との共演、年度始めの新卒業生(各科最優秀者)紹介演奏がある。その他、年末には恒例のメサイヤ演奏会、第九公演などを行っている。教育面では、器楽科、声楽学生との協奏曲等の共演および作曲科学生との作品演奏(モーニングコンサート)、指揮科学生による演奏会・試験・演習など、学生の演奏経験の拡充に資している。さらに各地の音楽文化向上のための出張演奏も行っている。

 このオーケストラの前身である旧東京音楽学校管弦楽団は、わが国初めての本格的オーケストラであり、現在ではポピュラーに演奏されているベートーヴェン交響曲第5番「運命」、第9番「合唱付き」、チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」などを本邦初演し、日本の音楽界の礎石としての活動を果たしてきた。

ソロコンサートマスター:野口千代光

主席コンサートマスター:北村京子

コンサートマスタ:蒲生克郷、白井英治

メゾ・ソプラノ:寺谷千枝子

 東京藝術大学卒、同大学院修了。ハンブルク国立音楽大学声楽科、オペラ科共に主席で卒業。1981年ドイツ、プレーマーハーフェン歌劇場とソロ専属契約を結び、《バラの騎士》のオクターヴィアンでデビュー。1983年よりボン歌劇場とソロ専属契約。その後フリーの歌手としてハンブルク国立歌劇場、フラクフルト国立歌劇場などドイツを中心にヨーロッパ各地で活躍。・・・・・わが国を代表するメゾ・ソプラノとして常に高い評価と信頼を得ている。現在、東京藝術大学教授。二期会会員。

バリトン:福島明也

 東京藝術大学卒業、同大学院修了。文化庁オペラ研修所終了。第54回日本音楽コンクール第1位(福沢賞受賞)。文化庁オペラ研修所終了。文化庁派遣芸術家在外研修員としてミラノに留学。1992年イタリアにて第10回Corso di Canto で第1位。第17回ジロー・オペラ賞新人賞、第25回ジロー・オペラ賞大賞受賞。《ラ・ボエーム》ラ・マルチェッロでオペラデビュー。二期会デビューは、1986年《フィガロの結婚》アルマヴィーヴァ伯爵。以降「運命の力」フラット・メリトーネ、《ハムレット》タイトルロール、二期会創立40周年記念及びフィンランド・ソヴォリンア・オペラフェスティバル《蝶々夫人》ヤクシデで国際的評価を得た。・・・・・二期会会員、東京藝術大学準教授。

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2009年11月20日 (金)

演奏会にに行ってきました「東京音楽大学弦楽アンサンブル:指揮・ハープ:篠崎篠崎史子 バッハ、モーツァルト、ドビュッシー、池辺晋一郎、マーラー、メンデルスゾーン」(2009-43)

2009年10月22日(木)19:00開演トッパンホールJR飯田橋駅徒歩10分程度 ホールを間違い千駄ヶ谷まで行き、慌てて飯田橋に戻り遅刻

《プログラム》

[指揮・ハープ]篠崎史子

[演奏]アンサンブル・エンドレス

《プログラム》

J.S.バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068

W.A.モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136

第1楽章 Allegro    第2楽章 Andannte    第3楽章 Preasto

C.ドビュッシー:神聖な舞曲と世俗的な舞曲

池辺晋一郎:照葉樹林 弦楽オーケストラのために

G.マーラー:交響曲 第5番 嬰ハ短調 第4楽章 Adagieetto

F.メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲 第10番 ロ短調

《印象 感想など》

J.S.バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068

 遅れて聴けず。

《プログラムノーツ》 本田 茂(本学講師)

 《管弦楽組曲》の「アリア」と聞いてピンとこなくとも、これが《G線上のアリア》だといわれれば、ああ、あれか、と納得する方も多いと思う。低音の作る音の土台の上を、優雅なヴァイオリンの調べが舞う、あの曲である。とはいえ、《G線上のアリア》というのはバッハの音楽をとりわけロマンティックに解釈した、19世紀のさる編曲に由来するもの。ハ長調に移調すればヴァイオリンのG線だけでメロディーがかなでられる、ということであって、原曲のニ長調ではもちろんそんなふうにはいかないので、あしからず。ついでにいえば、「アリア」というかわりに、フランス語風に「エール」と喉を軽く振るわせるほうが通だ。

 J.S.バッハ(1685~1750)といえば、ドイツ・バロックの重鎮、それどころか「音楽の父」と名を与えられる歴史上でもっとも尊敬される音楽家のひとりである。しかし、当時の文化先進国はなんといってもイタリアとフランス。バッハは協奏曲の様式を前者から、この管弦楽組曲の様式を後者フランスから学んだのだった。であるから、管弦楽組曲はフランスぽくて当然。「フランス式」の序曲から始まり、フランス宮廷で流行した舞曲を続けるのがお決まりだった。この「アリア(フランス風にはエール)」も、歌の様式と考えるよりは、フランスの宮廷バレエにおけるアリアと同じく、定型のない舞踊伴奏として考えるほうがよいのだろう。当時の人々も、これを聴いて輝かしいフランス宮廷に想いを馳せたのである。正確な作曲は不明。最も古い筆写譜が1730年頃というから、それ以前であることは確か。

W.A.モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136

 第1楽章 Allgro    第2楽章 Andante      第3楽章 presto

 1、2楽章は遅れて聴けず。ロビーでテレビで観て聴く。3楽章のみホールで聴く。この曲を聴くために演奏会を予約したのに残念。

 私の席:M列15番(指定席)。女性のメンバーは、カラフルな衣装。学生オケとしては、かなりの水準のアンサンブル。篠崎史子は有名なハープ奏者だが、指揮を齋籐秀雄に師事したとのこと。テキパキとしたなかなかの指揮ぶり。なるほどと思わせる、とても充実した音が鳴る。キビキビとした演奏。よく流れる。

《プログラムノーツ》 本田 茂(本学講師)

 「ディヴェルティメント」という言葉は、かつては「喜遊曲」と訳されることもあったが、もっと平たくいえば「気晴らし」。つまり、真面目な宗教音楽からははずれる、人間のための気晴らしの音楽の総称なのである。「ディヴェルティメント」=「気晴らし」。それはそれで、このK.136の性格をよく表していていて、悪くない呼び名なのだけれど、学者たちにとっては、頭の痛い問題がある。つまり、「ディベルティメント」といわれるだけでは編成がよく分からないのだ。自筆譜を見てみれば、この編成は「ヴァイオリンⅠ、Ⅱとヴィオラ、パッソ」。各パートは、ひとりずつが担当するのか(ならばこの曲はオーケストラ曲だ)。そして、パッソというのは、具体的にどの楽器を指すのか、チェロなのかコントラバス。いまもって議論が絶えないという。モーツァルト(1756~1791)の生きた18世紀は、大きく見れば「ディヴェルティメント」という大きな括りから、しだいに弦楽四重奏曲が独立してくる過渡期でもあり編成も、パッソの楽器も上にあげたどちらでもよかった、という解答もありえる。

 というわけで、学者も頭が痛いが、演奏する側も相当大変だ。今回は、オーケストラ曲として演奏されるわけだが、急-緩-急の3つの楽章を通して、声部間の絶妙な掛け合いが命であり一糸乱れぬアンサンブルが必要なのは“一聴”瞭然。「ディベルティメント」=「気晴らし」とはいえど、音楽する側は大変なのだ。これもモーツァルトの茶目っ気か。作曲は1772年、ザルツブルク。つづくK.237(変ロ長調)、K.138(ヘ長調)とともに3曲セットで作曲された。

C.ドビュッシー:神聖な舞曲と世俗的な舞曲

 篠崎の弾き振り。ハープは抜群の出来映え。さすが。不安定な響きの音楽。弦は擦るような荒っぽい響き。不協和音ぽい音。粋な面もある。きしむような弦の音。少し唐突に終わる。

《プログラムノーツ》 本田 茂(本学講師)

 ドビュッシー(1862~1918)の時代に新たに開発された楽器に「クロマティック・ハープ」というものがある。わたしたちが普段、オーケストラの中に見かけるハープはペダル・ハープといって全音階に調弦された弦と、それらの音を半音上げるためのペダルがついている。ハーピストは、腕さばきのみならず、オルガニストさながらの足さばきでこれを操作しなければならず、大変。それなら弦の数をふやして半音階も弾けるようにしましょう、といって出来たのがクロマティック・ハープだった。当時はこれが結構な話題となり、ブリュッセル音楽院でもこの新ハープの講座が開かれることになった。そのための試験曲として書かれたのが今日の《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》なのである。弦楽オーケストラの伴奏を伴う。1904年春の作曲。

 この作品について、当時のある批評家いわく、「わたしはそれを愛さないようにできる限りのことをした。不可能だった・・・・打ち勝ちがたい魅力・・・・艶っぽい全音階。」。実際《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》は、同年11月にヴェユル・=デルクール夫人の独奏とコロンヌの指揮で公開初演されて以来、大変な人気を博し、ドビュッシーの生前には、彼の作品中、演奏されることの最も多い作品のひとつとなった。標題にも示されているように作品は2つの舞曲からなり、荘重なサラバンド(二分の三拍子)に軽快なワルツ(四分の三拍子)が続く。静と動の対比、といえようか。ちなみにドビュッシー自身は、結局のところ、新しいクロマティック・ハープよりも、使い慣れたペダル・ハープをのほうを評価したといわれ、この二つの《舞曲》は、現在はペダル・ハープで演奏されることが多い。

《プログラムノーツ》 本田 茂

池辺晋一郎:照葉樹林 弦楽オーケストラのための

 池辺晋一郎(1943~)を語るのは、たぶん、どんな作曲家を語るよりも大変だ。氏にはいくつもの顔がある。東京音楽大学教授としての教育者の顔、また、機関銃のようにダジャレを連発する名司会者・エンターテイナーとしての顔、どんな場面にもぴったりと合った音楽を見つける映画音楽家の顔、(もっとひろく、映像音楽家あるいはコーポレーターというべきか)、そして前衛とも前衛以後ともつながっているシリアスな作曲家としての顔、それらが一人の池辺氏という存在から放射状に広がっている。

 今日演奏される弦楽オーケストラのための《照葉樹林》は、池辺氏の感性がシリアスな方向に放たれたもの。1995年の新日鐵文化財団委嘱作品である。新設された紀尾井ホールにて、尾高忠明指揮、紀尾井シンフォニエッタ東京により初演された。池辺氏は語る「人類が最初に定住したのは照葉樹林帶なのだそうだ。たとえば宮崎県の綾町などへ行くと、その気候の温暖さと自然の豊かさゆえに、この事実を十二分に納得することができる。新しいホールと新しいオーケストラのスタートに際し、光沢と艶に満ちた照葉樹林の葉の連なりを音の世界と置換したいと願った。わたしとしては1982年の《エレジアック・ラインズ》以来久々の弦楽オーケストラ作品である。」(初演プログラムより)。神秘的な振動と豊かな響きが強い音楽を作る。池辺氏は、本人も述べているように、音楽で考える人だ。この《照葉樹林》によって確認された樹木への共感が、チェロ協奏曲《木に同じく》(1996)、オーケストラのための《悲しみの森》(1998)へと連なっていたというのは、大変に興味深い。

G.マーラー:交響曲 第5番 嬰ハ短調より アダージェット

マーラー(1860~1911)の第5番交響曲の第4楽章。交響曲の楽章として〈アダージェット〉というのは珍しいが、これはもちろんアダージョに縮小語尾がついたもの。「小さなアダージョ」とでも訳せよう。たしかに、全体で103小節というのは小さいものだし、また、ハープと弦楽だけという編成も控え目。この楽章だけを見れば「ふーん」といった程度のものだが〈アダージェット〉を交響曲の全体のなかに置きなおしてみれば、この「小ささ」は、ものすごく際立ってくる。そもそも、マーラーの交響曲第5番というのは、全体を演奏すれば一時間を超す大曲だ。つまり、その他の楽章はとても長く、第3楽章の「スケルツォ」など800小節を超える。また、全体の編成をみても壮大。フルートは4本、トランペットも4本、ホルンも6本、さらに大量の打楽器も投入される。そんななかに、この「アダージェット」は、いってみれば嵐のなかに現れた小さな空のようなものなのだ。

 1904年のケルンの初演以来、〈アダージェット〉は多くの人の心をうち、また、交響曲全体のなかでも明らかに異色の楽章であったため、しだいに、今日のように単独で演奏されることも増えていった。イタリアの映画監督ルキノ・ヴィスコンティが、マンの原作による映画『ヴェニスに死す』において、主人公アッッシェンバッハをマーラーに重ねつつ、その映像をこの「アダージェット」の音楽で満たしたことは有名だが、それも、この音楽が独立楽曲として演奏されていたからに他ならない。ちなみに、この交響曲全体は1901年から02年にかけて作曲された。同時期には、《リュッケルト歌曲集》も作曲されており、その第3曲〈私はこの世に忘れられ〉と〈アダージェット〉との親近性が指摘されている。

F.メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲 第10番 ロ短調

 メンデルスゾーン家がとりわけ裕福な家庭だったというのは本当で、どのくらい裕福だったかというと、家の中で自転車に乗れるほど裕福だった。そのような家の長男として生まれたために、フェリックス・メンデルスゾーン(1809~1847)がはやくから高い教養を身につけることができた、というのはなんと幸運なことだったろう。文学、絵画、そして彼の職業となる音楽。メンデルゾーンは、少し皮肉なところもあったというが、恵まれた環境のなかで、まさにすくすくと育ったのだ。

 今日演奏される《弦楽のための交響曲 第10番》は、そのようなメンデルゾーンの少年時代の作品。1823年、14歳のときに書かれた。《第10番》とあるように、メンデルスゾーンは、12歳から14歳までのあいだに、同種の作品を数多く完成させている。(計12曲)その多くは、メンデルスゾーン家で日曜毎に行われていた私的演奏会で初演されたものと考えられいる。この第10番もそうだが、メンデルスゾーンの一連の《弦楽のための交響曲》は、「交響曲」とはいえ、同時期に最後の交響曲を書いていたベートーヴェンの路線にのるものではない。ハイドンやモーツァルトの初期の交響曲、あるいはもっと古いタイプの交響曲がお手本になっている。だから、メンデルスゾーンの自筆譜にあるように「シンフォニア」といったほうが適切かもしれない。また、他の作品が、3楽章あるいは4楽章をとるのに、この《第10番》に関しては、一楽章しか残っていないから、他の楽章が失われたか、未完であった可能性がある。今年2009年は、メンデルスゾーン生誕200年。このような、ごく初期の作品が積極的に取り上げられるのはうれしい。

《プロフィール》

指揮・ハープ:篠崎史子

 桐朋学園大学を主席で卒業。J.モルナール氏に師事。桐朋学園在学中、高校3年の12月より大学卒業まで特別副科指揮を齋籐秀雄氏に師事。後、アメリカに留学し、M.グランジャニー、M.ディリングの両氏に師事。1970年イスラエル国際ハープコンクール第3位に入賞。

 1972年「篠崎史子ハープの個展Ⅰ」を開催。1973年小澤征爾指揮のベルリン・フィル定期演奏会に出演の他、ヨーロッパの各フェステバルに出演。・・・・1983年第1回中島健蔵音楽賞を受賞。・・・・第56回芸術祭優秀賞、第20回中島健蔵音楽賞、第1回佐治敬三賞を受賞。2005年第12回日本現代芸術振興賞受賞、2007年には計3夜にわたる「ハープの個展X]を開催、第17回朝日現代音楽賞を受賞した。・・・・現在、東京音楽大学講師。

演奏:アンサンブル・エンドレス

 このアンサンブルは、1990年兎束俊之(本学教授)の指導もとに組織され、演奏会を津田ホール、サントリー小ホール、カザルスホール等で行い、高い評価を得ている。

 レパートリーに於いても、モーツァルト、シューベルト、メンデルスゾーン、チャイコフスキー、レスピーギ、ブロッホにとどまらず、芥川也寸司、武満徹など古典派より現代音楽に至るまで広範囲にわたっている。

 2000年兎束教授による発足10周年演奏会を行い、その後、本学教授・準教授陣による演奏会を毎年行っている。

ヴァイオリン

阿部牧子(コンサートミストレス)(後半)

岩田 唯(コンサートミストレス)(前半) 計14名

ヴィオラ

 計 6名

チェロ

 4名

コントラバス

 2名

 

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2009年11月19日 (木)

演奏会に行ってきました「東京ハルモニア室内オーケストラ第39回定期演奏会「ヘンデル、バッハ、メンデルスゾーン、スーク」(2009-42)

2009年10月21日(水)東京文化会館小ホール(東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅徒歩8分)東京文化会館友の会プレゼント企画に当選したもの。私の席K列8番。

《印象 感想など》

ヘンデル:合奏協奏曲 ニ長調 作品6-5

Larghetto e staccato    Allego    Presto    Larugo    Allegro    Menuetto:Un  poco  largetto

 メンバーはベテランが多い。続けて演奏する。

 ①コンサートマスターは男性。なかなか上手い演奏を披露。アンサンブルは素晴らしい。  ②リズミックな弦楽器。  ③ゆっくりと入る。リズミカルな演奏。  ④テンポを上げて好ましいアンサンブル。  ⑤弦の美音が素敵に響く。  ⑥爽やかな演奏。

《プログラムノーツ》 (文責:青柳万紀子)

 オラトリオ『メサイア』、オペラ『ジュリアス・シーザー』など、声楽分野において大傑作を残したヘンデル(1685~1759)は、器楽分野においても『水上の音楽』をはじめ、その力量を余すところなく発揮し、数多くの作品を創作した。「合奏協奏曲」という分野については、その作品の数は実に30近くにものぼる。本日演奏される「作品6-5」は、全部で6つの楽章からなる。12曲からなる作品6の楽曲の中でも、勇壮で力強い響きが特徴的である。この作品の第一部が1739年にヘンデルが創作した世俗カンタータ『聖セシリアのための賛歌』に用いられたことから、ロマン・ロランが「聖セシリア協奏曲」と呼んだ。

 ところで、今日「協奏曲(以下コンチェルト)」と言えば、ピアノやヴァイオリンのなどの独奏楽器とオーケストラによって演奏される楽曲を意味することが多いのだが、実は「協奏曲」という言葉が意味する音楽は時代に応じて変化してきた。というのも、そもそもラテン語の「cocerto」とイタリア語の「cocertare」を基盤とする音楽用語としての「コンチェルト」は、元来のラテン語が「闘争・論争する」といった意味合いであったのに対し、イタリア語のそれは「調和・一致させる」という意味内容に転化したものであったため、「コンチェルト」と呼ばれる音楽作品が魅せる様相は一定ではなかった。協奏曲の歴史は、実はバッハやヘンデルの登場するかなり前まで音楽史を遡らなければならないほど深く、そして時代によりその音楽表現の幅を発展させてきたとも言えよう。

バッハ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 BWV1041

Alleguro    Andannte    Alleguro  assai

①アンサンブル、なかなか良い。弦の中低音、心地よい。ソロヴァイオリン、キビキビとした素敵な演奏。  ②少しゆったりとした楽章。  ③堂々とした楽章。テンポを速めて進む。

《プログラムノーツ》 (文責:青柳万紀子)

 バッハ(1685~1750)がヴァイオリン協奏曲を創作したのは、1717年にケーテンの宮廷楽長に任命されてから1723年までの期間(ケーテン時代)であると推定されている。当時の音楽家にとって宮廷楽長は共に作品を演奏する音楽仲間という面でも、作品を創作する環境面においても大変恵まれており、この時期のバッハの作品には3曲のヴァイオリン協奏曲以外にも6曲の『ブランデンブルク協奏曲』、『無伴奏チェロ組曲』など代表的な器楽作品が数多く見られる。

 本作品は全3楽章から構成されており、第1楽章では総奏部分と序奏部分が交互に演奏される「リトルネロ形式」を用いている。特別なテンポ指定がなされていないが、通常はアレグロで演奏されることが多い。第2楽章では、厳粛な主題を中心とする音楽が展開される。クーラント舞曲のような軽快透明な第3楽章では、第1主題と同様にリトルネロ形式がとられている。

 尚、この作品は後にチェンバロ協奏曲BWV1058に編曲された。

メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲 第10番 ロ短調

Adagio-allegro-Piu presto

①ゆっくりと入る。確かにロマン派の音楽。途中からテンポをあげて歌って流れる。キビキビとしたリズミックナ演奏。2楽章から3楽章へと続けて演奏。

《プログラムノーツ》 文責:青柳万紀子

 ユダヤ系ドイツ人の家系に生まれたメンデルスゾーン(1809~1847)は、比較的裕福な環境の下で、ベートーヴェンの友人のビゴーや、クレメンティの弟子のベルガーにピアノを、ベルリンではツエルターに作曲を学んだ。

 彼が本格的に音楽活動を展開したのは1825年からであると言われているが、その才能に注目が集まったのは1818年、彼が初めて公開演奏会を開催した時であった。言わば、作曲家として土台を築き始めようとしていた時期であったとも言えよう。

 本日演奏される《弦楽のための交響曲》は、全部で13曲あり、1824年から書かれた一連の交響曲とは異なるものである。メンデルスゾーンが《弦楽のための交響曲》の創作に着手したのは、1821年のことで、この年に第1番から第4番、翌年に5番から8番まで、そして1823年に残る5曲が書かれた。メンデルスゾーンが若干14歳の時のことである。

 《管弦楽のための交響曲 第10番》は、アダージョの導入部分とアレグロの主部から構成されている単一楽章の交響曲で、近年では本当は多楽章の交響曲の第1楽章として創作されていたと見られているが、その後、第2楽章以降の作曲の形跡は見られていない。

スーク:弦楽のためのセレナーデ 変ホ長調 作品6

Andannte con moto    Allegro ma non troppo  e grazioso    Adagio    Allegro giocoso,ma non troppo presto

①弦、刻んで入る。ソロヴァイオリンに素敵なテーマ。そして弦楽合奏。ロマンティックなテーマが流れる。細いヴァイオリンの音。  ②粋なテーマが弾むように出る。  ③チェロ・ソロがしっとりとしたテーマを奏でる。そしてヴァイオリンのアンサンブルが続く。またチェロのソロへ。ヴァイオリンのアンサンブルへ。  しっとりとソロヴァイオリン。ヴァイオリンとチェロのピチカート。しっとりとした音楽へ。 ④テンポを上げて生き生きとした音楽へ。チェロとコントラバス、ヴァイオリンの掛け合いが面白い。リーダー(指揮とヴァイオリン)ただ者ではない。弦の刻むような奏法、なかなか良い。大した演奏。

《プログラムノーツ》 文責:青柳万紀子

 作曲家、ドヴォルジャークの愛弟子であったスーク(1874~1935)は、1892年師匠の別荘に招かれる。この前後に結婚する師匠ドヴォルジャークの娘、オチリエとの出会いが、本日演奏される「弦楽のためのセレナーデ」への作曲動機を誕生させたのであった。スークの作品は器楽、声楽を問わず多岐に渡って遺されているが、本作品は、18歳の時の彼の出世作でもある。

 作品は弦楽器5部から構成されている。第1楽章は行進曲風の主題で開始され、ワルツ風の第2楽章とは対象をなしている。第3楽章では甘い旋律をチェロの柔らかい音色が展開している。第1楽章から第3楽章は、3部形式によって作品が構成されているが、第4楽章は主題が変奏を繰り返しを重ねるロンドのような自由な形式を持つ。

 尚、スーク自身、1892年にボヘミア弦楽四重奏団の第2ヴァイオリン奏者を務めていた経験も持っており、この演奏家としての血筋は、後に日本にも訪れることとなる、孫であり同名のヴァイオリニスト、ヨセフ・スークに引き継がれている。

アンコール 「ユモレスク」

 チェロのソロで入り、ピチカート奏法。素敵なテーマを奏でる。

       「赤とんぼ」

 ソロヴァイオリンで始まり、アンサンブルが続く。またソロヴァイオリンへ。

《プロフィール》

東京ハルモニア室内オーケストラ

 東京ハルモニア室内オーケストラの前身は、1968年以来日本国内のみならずヨーロッパにおいても評価の高い優れた合奏団として活動を続けていた東京アカデミー室内オーケストラである。創立以来の指揮者、朝妻文樹氏の逝去により1990年秋より東京ハルモニア室内オーケストラと改称し、10月に第1回定期演奏会、10月11月に第7回「箱根の秋」音楽祭、また特別演奏会など、活動を続けている。・・・・

 また、2002年3月(社)日本芸能実演家団体協議会より永年の演奏活動に対して平成13年度芸能功労者表表を授与された。

本日の出演者

〈ヴァイオリン〉西山昌子、有馬玲子、平岡陽子、片桐恵里、小池はるみ、山下真澄

〈ヴィオラ〉堀あゆみ、須藤三千代、千年美菜子

〈チェロ〉茂木新緑、松本ゆり子

〈コントラバス〉増山一成、桒形亜樹子

〈ステージマネジャー〉浅野武治

指揮・ヴァイオリン:エヴァルド・ダネル

 旧チェコスロヴァキア連邦共和国のシレジア生まれ。オストラヴァ音楽学校およびプラティスラヴァ音楽学校でヴァイオリンと指揮法を学ぶ。ヴァイオリン奏者のボフダン・ヴァルハルのもとでさらに研鑽を積む。1982年プラティスラヴァ音楽学校卒業、その後2年間スロヴァキア放送交響楽団のコンサートマスターをとして活躍。 

 退団後はソリストとして、また指揮者として同オーケストラと共演を重ねている。室内楽の分野においては、スロヴァキア弦楽四重奏団の第1ヴァイオリン奏者、スロヴァキアピアノ・ピアノトリオのメンバーとして精力的な活動を行う。1992年から1996年まで室内合奏団カペラ・イストロポリターナの芸術監督。1987年からプラティスラヴァ音楽学校で教鞭をとり、1999年からは愛知県立芸術大学で客員教授を務める。・・・・

 

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2009年11月17日 (火)

演奏会に行ってきました「オーケストラ・リベラ・クラシカ第24回公演 モーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン」(2009-41)

オーケストラ・リベラ・クラシカ第24回公演(都営大江戸線築地市場駅徒歩5分)2009年10月17日(土)17:00開演/浜離宮朝日ホール

《プログラム》

モーツァルト:交響曲 第29番 イ長調K.201

J.ハイドン:交響曲 第88番 ト長調 Hob.Ⅰ-88「V字」

      ・・・・・休 憩・・・・・

ベートーヴェン:交響曲 第1番 ハ長調 作品21

《印象 感想など》

 私の席:8列4番。メンバーの人数、久しぶりに多い。コントラバス3。

モーツァルト:交響曲第29番 イ長調K.201

 遅れて1・2楽章はエントランスのスピーカー。大好きな曲なのに残念。第3楽章 相変わらず素晴らしい古楽のアンサンブル。テキパキとしたテンポ。中間に素敵なテーマが少しゆったりと流れる。第4楽章 快調に進行。リズミックな音楽。しっとりとした旋律も。弾むような演奏。素敵な品のある演奏。

J.ハイドン:交響曲 第88番 ト長調 Hob.Ⅰ-88「V字」

 第1楽章 素敵なアンサンブル。テンポを上げて走る。ピッコロなど素敵な演奏。  第2楽章 ゆったりと入る。ゆるやかな進行。  第3楽章 メヌエットか?素朴なメロディーが流れる。活気ある演奏。  第4楽章 テンポよく入る。快活にリズミックによく走る。

ベートーヴェン:交響曲第1番 ハ長調 作品21

 リベラ・クラシカでベートーヴェンを聴くのは確か初めて。  第1楽章 少し大きな編成。聴衆はかなり入る。コントラバス3人。音楽は快調に流れる。古楽の響き、心地よい。クラリネットやフルートなどキビキビとした演奏。ティンパニー、きっちりと鳴る。  第2楽章 刻むような演奏。フルートなど木管楽器ベートーヴェンらしさがよくでる。第3楽章 トリオ素敵な演奏。  第4楽章 リズミックに軽快に走る。小気味良い音楽。快活に流れる。盛り上がりエンド。フレッシュなベートーヴェン。ブラヴォー。

アンコール ベートーヴェン:「メヌエット」

 終了後、エントランスで指揮者や奏者を交えてワインパーティー。心地よい演奏会でした。

ファンの皆様、鈴木秀美

 本日はオーケストラ・リベラ・クラシカ第24回公演にお出でいただき有り難うございました。

 チラシやホームページににも少し書きましたが、今日の「メイン・イヴェント」は何といってももベートーヴェンの交響曲です。OLCは2007年の7月に、大阪のいずみホールが企画したシリーズの皮切りとして第1番と3番を演奏し好評をいただきましたが、今まで7年間にわたってやってきた浜離宮では、そして東京の地域では今回が初めてのことです。

 世の中にベートーヴェンを毎日のように演奏する人は多数おり、何をそんなに改めてと訝しく思われる方もおありでしょう。しかし私達はまず古楽奏者としてバロック或いはそれ以前の音楽を経験し、OLCとしてはハイドンを中心とする18世紀中頃から後半の音楽をすこしずつ流れにしたがって追体験してきたのでありました。それがここに至って初めて、ベートーヴェンという大きな境目を越えるのです。むろんメンバーの中にはベートーヴェンを何百回も演奏してきた古強者もいれば、まだ全てが新しい若者もいますが、OLCというグループとしてベートーヴェンを経験するのは新しいことなのです。どんなアンサンブルでも、新たなメンバーと経験するときそのときその曲はまた新しくなるのですし、今日この日の演奏は一生に一度しか遭遇しない出来事なのです。

 そうベートーヴェンはそれほどに大変な存在です。J.S.バッハ以降、彼抜きに音楽を考えることができなくなったと同様、ベートーヴェン以降人はその影響を横に置くことができなくなりました。そしてまた、音楽をするということの目的が彼を境目に変わったとさえ言えるのです。演奏技術もこの頃から大きく変わってゆきます。

 何事によらず大きく括るのは危険ですし例外も当然ありますが、ベートーヴェン以前の音楽は、神様が創った宇宙の秩序と調和を、また「情感(アフェクト)」を音楽によって表そうとするものでした。「情感」は必ずしも自分のものとは限らず、強いて言えばある情感を心から取り出し、その有り様を音で表現するとでもいえるでしょうか。それに対してベートーヴェンの場合、その情感とはすなわちその音楽を演奏・経験する者のそれであり、取り出すのではなく心全部で体験しなければならないのです。音楽と共に歓び、苦悩し、躍動し、疲れ、憧れ、失望し、全人類に向けてメッセージを発する・・・・・「心理的に再び『経験』するのでなければ、ベートーヴェンを演奏したとはいえない」と言われるほどに共感を求める、いや共感せずにいられないエネルギーがあるのです。しかしそのような直截な感情表現をハイドンはそれほど好まなかったと言われ、彼はベートーヴェンがピアノ・トリオを出版するときにあたり、Op.1-3について「音楽家はこのように感情を露わにするものではない」と述べたと伝えられています。

ベートーヴェンが後年「ハイドンに学んだことは何もない」とか「彼が避けるように教えたことこそは私がやりたかったこと」などと述べているにも拘わらず、若かりし門を叩いて教授を乞うたハイドンの影響はいろいろなところに見られます。ハイドンが最後の交響曲を書いてからさらに数年後の1800年、30歳になってベートーヴェンは漸く交響曲を発表する決意に達したのですが、それまでに何度か交響曲の作曲を試みていたことがスケッチなどから判っています。当時の大モニュメントのようなハイドンの影響から逃れ、新たなものを作るのには、あのベートーヴェンでさえ時間が必要だったのかもかもしれません。

 時代を遡って至るのではなく、ハイドンの初期作品から順に経験した後ベートーヴェンに再び至ったとき、私達は何か違う発見が出来るかもしれない、少なくともはるかに新鮮な驚きをもって味わうことが出来るだろうし楽譜から違ったことが見えてくるかもしれない・・・そのような想いを持ってOLCは今までやってきたのでした。といってももちろん、ハイドンがただそのための道であったのではない、私達は聴衆の皆さんと共に多くの新鮮な驚きをハイドンの中に見だし、幸福な時間を過ごせてきたと信じていますが、その道を辿って、同じ場所で今ベートーヴェンをお聴きいただけることは、大きな喜びなのです。

 さてしかし、今日その前にお聴きいたく2作品は決して前座などではなく、「完璧」を音にしたようなものといってもよいでしょう。モーツァルトの第29番K.201は1774年、ザルツブルグの作で、オーケストラ・リベラ・クラシカでは2002年5月の旗揚げ公演に演奏した懐かしい嬉しい作品です。浄書のスコアで何の書き直しもなく作曲したという話が本当であれば、モーツァルトの頭の中には完璧な響きと各パートの働きが描かれていたのでしょう。それぞれの楽章は私達を、オペラのシーンや数枚の絵画のような情景の想像に誘ってくれます。

 ハイドンの第88番は1787年の作、彼の数少ない「有名曲」の一つで今もよく演奏され、録音も数多い作品です。「V字」という名前で呼ばれることもこともあるのですが、これはイギリスのフォスターという出版社がハイドンの交響曲23曲をまとめて出版したときに、Aは71番、Bは45番・・・・と各冊に数字の代わりにアルファベットを充て、そのうちのVだけがなぜか残っているものです。この曲に見られる厳格、調和、上品、幸福、安泰、躍動、ユーモア・・・・といった諸性格のバランスはまったく絶妙というほかなく、痒いところに手が届くようです。

 さて、諸事情もあり、オーケストラ・リベラ・クラシカの浜離宮朝日ホールでの公演はひとまず今回までとなります。もうここで演奏しないという意味ではありませんが、来年は試験的に上野の文化会館小ホールで公演を予定しています。しかし場所はどうあれ、今まで歩んできた道にますます歩を進め、有名曲に新しい側面を探し出し、無名曲にも光を当てて、私達に与えられた素晴らしい遺産を「現代の」糧としたいと思っています。皆様のますますのご声援・ご支援を心かお願い申し上げます。

《出演者》

指揮:鈴木秀美

 デン・ハーグ王立音楽院に留学、A.ビルスマ氏に師事。国内外でソロ、室内楽、指揮と演奏活動を展開し、数多くの話題CDも発表。1995年に日本人としては初めての、オリジナル楽器による「バッハ:無伴奏チェロ組曲」を録音、平成7年度文化庁芸術作品賞を受賞。著書に「『古楽器よ、さらば!』(音楽之友社)、「ガット・カフェ」「無伴奏チェロ組曲」(東京書籍)。第37回サントリー音楽賞受賞。

ヴァイオリン:若松夏美

 桐朋学園大楽卒。ヴァイオリンを鷲見三郎、江藤俊哉の各氏に師事。デン・ハーグ王立音楽院にてバロック・ヴァイオリンをシギスヴァルト・クイケンに師事。バッハ・コレギウム・ジャパン、オーケストラ・リベラ・クラシカのコンサートマスター。オランダの18世紀オーケストラのメンバー。・・・・東京藝術大学古楽課非常勤講師。

 高田あずみ、竹嶋祐子、荒木優子、山口幸恵、川久保洋子、高田はるみ、堀内麻貴、廣海史帆、天野寿彦、山内彩香

ヴィオラ:成田寛、深沢美奈、山廣みほ、藤村政芳

チェロ:エマヒュエル・バルサ、藤村修介、懸田貴嗣、山本徹

コントラバス:今野京、小室昌広、大石健次

フルート:管きよみ、前田りり子

オーボエ:エドゥアルト・ウェスリィ、ヤス・モイスィオ

クラリネット:柴欽也、山根考司

ファゴット:堂阪清高、村上由紀子

トランペット:神代修、霧生貴之

ホルン:エルメス・ペッキニーニ、ディメル・マッカフェーリ

ティンパニー:菅原淳

《レコードやCDのことなど》

ハイドン:交響曲第第88番「V字」

 レコードやCDは自分の気にいった物を聴いていればいいわけですが、「V字」は古楽器ではシギスヴァルト・クイケン指揮ラ・プティット・バンドのCDよく聴いてきました。

モーツァルト:交響曲第29番

 この曲は、最初ベーム指揮ベルリン・フィルの演奏をFM放送で聴き、一遍に気に入りました。レコードではオトマール・ズイトナー指揮ドレスデン国立管弦楽団を今でもよく聴きます。

ベートーヴェン:交響曲第1番

 ベートーヴェンの交響曲の録音はどの曲でも夥しい数のレコード、CDがありますが、私はいまだにカール・シューリヒト指揮ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団のモノーラルレコードを愛聴しています。音楽に興味を抱いた20代前半に買ったもので思い入れがあります。

 

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