演奏会に行ってきました「吉田優子ピアノリサイタル R.シューマン、A.ベルク」(2009-38)
2009年9月7日(月)東京文化会館小ホール 19:00開演 東京文化会館友の会プレゼント企画に当選したもの(東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅徒歩約8分)
《プログラム》
R.シューマン:フモレスケ Op.20
A.ベルク:ピアノ・ソナタ Op.1
R.シューマン:ファンタジー ハ長調 Op.17
《プログラムノート》 吉田優子
本日のプログラムでは、ベルクの作品をシューマンの2作品の間に据えて、同じシューマンの作品でありながら形式的に対峙する2曲が、より鮮明に表現出来ればと考えております。また時代の異なるシューマンとベルク、二人の作曲家の内なる感情を響きにのせて皆様の心にお届けできればと思います。
《印象 感想など》
R.シューマン:フモレスケ Op.20
私の席:H列26番(自由席) ピアノ:スタインウエイ。奏者:ピンクのスカートで登場。1楽章のみの曲。夢見るような出だし。弾むような音楽。つま弾くような流れの音楽。何ともロマンティックな調べ。シューマンらしさの横溢した曲。そしてダイナミックな展開もあり、情緒あふれるメロディーが多数現れる。最後は静かに終わる。
《曲目解説》 吉田優子
1839年、29歳のシューマン(1810~1856)がわずか8日間で完成させた。翌年に妻となるクララへの手紙に「この1週間ずっとピアノの前に座り、作曲し、笑ったり泣いたりを繰り返していました。そのすべてを君は作品20、つまり大きい《フモレスケ》の中に見つけるでしょう。」と書いている。
この頃シューマンは、ピアニストであるクララとの結婚を望んでいた。しかし、クララの父ヴィーク(シューマンの師でもある)の激しい反対を受け、別離を余儀なくされていた。その過酷な精神状態が、創作への想いを一層かきたてたといえるだろう。
また幼少から文学と音楽に深い関心を示していたシューマンは、若い頃から彼自身に内在する多面的な気質を、フローレスタン(衝動的で情熱的)と、オイゼビウス(夢想的で内省的)に代表される創作上の人物として、彼の作品の随所に登場させている。
フモレスケとは「夢想的な熱狂とユーモアというドイツの国民性に根ざした2つの特性を混合したもの」とシューマン自身が述べている。憂鬱、涙、喜び、可笑しみ等、情緒的機知的なものが巧に融合したドイツ人固有の性格と捉えられる。
曲は 7つの部分からなり、時には憂鬱に、時には快活に、日々刻々と揺れ動く心情を変ロ長調とト短調の2つの調性でモザイク模様のように紡いでいく。そして振り返ってみると関連性の深い、美しい情感溢れる作品となっているのである。
A.ベルク(1885~1935):ピアノ・ソナタ Op.1
1楽章の叙情的に聴こえる音楽。まさに現代音楽という印象。
《曲目解説》 吉田優子
1907年から1908年にかけて作曲され、1910年に作品として出版。当初3楽章からなる作品を想定していた。第1楽章が完成した後「なかなかふさわしいものが浮かばない。」と師であるアーノルド・シェーベルク(1874~1951)に相談したところ、「ではあなたは言われるべきことはすべて言ってしまったのでしょう。」という助言を受けた。それに納得し、1楽章で完結したという。
基調はロ短調となっているが、冒頭と終結に垣間見られる程度である。4度音程や増3和音、半音階を多用すること、また解決音を伴わない7度音程等、複雑な和声進行を使用することにより、調性は遠のき移ろいで、ほとんど感じられない。
長い旋律の中のモティーフは、対位法で書かれた各声部においてつねに展開の性質をもつ。pppからffff の振幅で、速度記号もことごとく指示が徹底して細かい。緻密に組織されながらも、抑揚のカーヴをドラマティックに描いていく。激動の中、神秘的な落ち着きと心をえぐる叫びが出現する。
R.シューマン:ファンタジー ハ長調 Op.17
《印象 感想など》
第1楽章 あくまで幻想的かつ情熱的に 第2楽章 中庸の速度で 第3楽章 穏やかに、どこまでも穏やかさを保って
第1楽章 幻想的な曲。ロマンティシズム溢れる曲。ダイナミズムも十分。低音の響きが印象的。最後は静かに閉じる。
第2楽章 元気よく活発なスタート。中間部はやさしくリズミック。
第3楽章 静かに始まる。そしてやさしくリズミックに。情緒的な音楽。そして盛り上がり、静かに曲を閉じる。
《曲目解説》 吉田優子
もともとボンのベートーヴェン没後10年記念碑建立基金のために作曲し、「フローレスタンとオイゼビウスのための大ソナタ」とした。のちに各楽章を「廃墟」「凱旋門」「星の冠」とし、最終的に「ファンタジー(幻想曲)」という名称になった。1838年完成。フランツ・リストに献呈された。
冒頭にロマン派の詩人F.シュレーゲル(1772~1829)の「夕映え」の一節を掲げている。
色とりどりの大地の夢のうちに
すべての音を貫いて
ただ一つの静かな音がひびいてくる
耳を傾ける人に
クララ宛の手紙の中で、この中の「静かな音」がまさしくクララであり、「きみをあきらめた1836年の夏の不幸を思わずに、この曲を理解できることはないでしょう。」と書いている。クララの頭文字CからC-dur(ハ長調)を基調に、クララの主題といわれる順次下降する5度音程が全楽章を通して現れる。
ベートーヴェンへの敬愛の念やクララへの想いをロマンティシズム溢れる壮大な作品へと転化させている。
全3楽章のうち第1、2楽章ではフロレスタン(情熱的)が主導権を握り、オイゼビウス(内省的)は瞑想的な第3楽章で姿を現す。
第1楽章 あくまで幻想的かつ情熱的に
ソナタ形式ではあるが、(伝説の音で)と題したC-moll(ハ短調)の挿入部を持つ。湧き上がる情熱や葛藤、静かな詩情、舞踏的な躍動感が交錯する。終わりにベートーヴェンの「遙かなる恋人に」のテーマが引用される。
第2楽章 中庸の速度で、終始精力的に
ロンド風行進曲。精神の高揚と生命の躍動に充ち溢れている。シューマンが好んだ付点リズムが多用される。
第3楽章 穏やかに、どこまでも穏やかさを保って
展開部を持たない自由なソナタ形式。分散和音が穏やかな波となって、美しい旋律が語りかける。最後に唯一のクライマックスをもつ。
《プロフィール》 吉田優子
国立音楽大学を経て、国立大学大学院を主席で修了。クロイツァー賞を受賞。大学院在学中、ヘルムート・バルト、ダン・タイソン各氏のレッスンを受ける。
国立大学および大学院新人演奏会、クロイツァー賞受賞記念演奏会出演。NHK洋楽オーディションに合格し、NHK-FM土曜リサイタル出演。日墺文化協会、北九州芸術祭等、各主催推薦コンサート出演。また、1990年ウイーン国立音大セミナー、1995年デトモルト国立音大セミナーに参加、推薦終了コンサート出演。ゲオルク・F・シェンク、アナトール・ウゴルスキ各氏の指導を受ける。・・・・・
ピアノを篠井寧子、クロイツァー豊子、管野洋子の各氏に師事。現在、国立音楽大学講師。(財)日本ピアノ教育連盟会員。
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