演奏会に行ってきました「ワーグナー:「リエンツィ」序曲、マーラー:交響曲第5番」(2009-4)
2009年1月31日(土)14時開演 すみだトリフォニーホール大ホール(東京メトロ錦糸町駅徒歩7~8分、JR錦糸町駅徒歩5~6分) 私の席1階26番(自由席)ど真ん中
《プログラム》
リヒヤルト・ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
マーラー:交響曲第5番
《曲目解説》 パンフレットより
1804年にベートーヴェンが作曲した交響曲第三番「英雄」で、交響曲は芸術作品の確固たる地位を確立しました。その後、楽器の改良、オーケストラの巨大化、音楽様式の多様化と作曲技法の進歩が進み、管弦楽曲は拡大・進化していきます。その中心人物がワーグナーで、その楽曲の巨大さ、管弦楽法の華麗さと巧みさ、斬新な音楽スタイルはヨーロッパ中の音楽家に衝撃ともいえる影響を与えました。
そして、ワーグナーの歌劇「ローエングリーン」でもってウイーン宮廷歌劇場常任指揮者としてデビューしたマーラーは、英雄交響曲から一世紀の1902年に、交響曲の頂点ともいえる交響曲第五番を作曲しました。本日は西洋音楽界の発展に多大な影響を与えた2人の「巨人」の作品が並ぶプログラムです。
《印象 感想など》
リヒヤルト・ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
アマオケとしては良い音を出す。アンサンブルもなかなか良い。ワグナーらしいスケール感を感じさせる曲、演奏。
《曲目解説》 パンフレットより
ワーグナー(1813年生1883年没)はまだ若くて無名の時期に、パリでの成功を目指してこの「リエンツィ」を作曲しました。パリでは上演の機会を得ませんでしたが、ドイツ帰国後ドレスデンで大成功を収め、彼の「出世作」となりました。この作品は、パリで当時流行していた「グランド・オペラ」の様式をそのまま取り入れており、まだまだ若さが目立つ作風ですがこの後、「さまよえるオランダ人」「タンホイザー」「ローエングリン」などの名作を次々に作曲して、音楽、文学、美術などの芸術を総合した総合芸術である「楽劇」を確立していきます。
「リエンツィ」は14世紀ローマに実在した護民官です。歌劇の筋は、リエンツィは貴族の圧政のもとにあった民衆を献身的に助けるが、最後には貴族はもとより民衆からも反感を持たれて、非業の死を遂げるという悲劇です。
序曲はゆったりとした序奏とテンポの速い主部より構成され、歌劇の中に出てくるテーマを中心に構成されています。冒頭にトランペットが、民衆解放闘争を呼びかける長い音を3音鳴らし、その後リエンツィの祈り「全能の父よ、護り給え」の堂々とした旋律が弦楽器によって流れます。主部に入り、全奏による激しい動きに続いて、金管楽器が「聖霊よ、護り給え」という民衆の叫びを教会風の旋律でたくましく奏します。チェロのゆったりとした動きで曲想が落ち着くと、冒頭の「全能の父よ、護り給え」が響いて、行進曲風の軽やかで明るいメロディ(反逆者を許すリエンツィの寛容をたたえる歌)が登場します。その後短く激しい展開部を経て、リエンツィをたたえる歌が再現されます。
グスタフ・マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調
第一楽章 「葬送行進曲」 第二楽章 「嵐のように激動して、極めて激しく」 第三楽章 「スケルツォ」 第四楽章 「アダージェット」 第五楽章 「ロンド・フィナーレ」
《印象 感想など》
第一楽章 出だしのトランペット、いまひとつ。トローンボーン、トランペットなどの金管、少しとちる。 第二楽章 マーラーらしい響きが随所に出てくる。ティンパニー小気味よい響き。チェロが良い音でメロディを奏す。 第三楽章 金管のとちり、少し気になる。ホルン、コンマス、チェロ主席ピチカート。そして弦のピチカート、金管のソロで繋ぎ、コーダへ。 第四楽章 何とも泣かせる曲、演奏。静かに終わる。 第五楽章 ホルンから入る。弦が続く。トランペットが高らかにテーマを吹く。全合奏でテンポを上げて、盛り上げていく。よく流れよく歌う。コーダへ。
《曲目解説》 Vc 佐藤玄士
マーラー(1860年生~1911年没)は1860年にチェコ・ボヘミア地方の小村でユダヤ人の子供として生まれました。
「私は三重の意味で故郷がない。オーストリア人の間ではボヘミア人、ドイツ人の間ではオーストリア人、全世界においてはユダヤ人として」。妻アルマが伝えるマーラーの言葉ですが、彼の持つ多様性、複雑性の一端が感じられます。生前は作曲家としてより指揮者として有名で、歌劇場(現在の国立歌劇場)の監督というヨーロッパ音楽界での最高峰の地位を獲得しました。(小澤征爾の大先輩)。そしてその後の10年間の監督時代に彼は数々の改革を行いました 。例えば、従来歌劇場は一種の「社交場」であり、演奏中の会話や入退場は自由でしたが、彼はそれらを一切禁止して今日の演奏会に見られるマナーを定着させました。また練習は極めて厳しく楽団員からはかなり不評でしたが、管弦楽団の演奏技術は極めて向上しました。
一年のうち3シーズンは(秋~冬~春)指揮者活動する傍ら、夏休みはもっぱら作曲に没頭して、「大地の歌」を含む11曲の交響曲と、多くの歌曲を残しました。作曲範囲は一部例外を除いてこの2分野に絞られており、豊かな叙情性を持った歌曲を作曲して、その旋律やアイデアを交響曲に取り入れていくパターンが基本です。交響曲第一番から第四番が初期の作品で、歌曲や声楽に多くを依っています。
第二のグループは第五番から第七番で、ここでは声楽は入らず純粋に器楽だけで構成されています。巨大な第八番を経て「大地の歌」最後の第十番(未完成)までは晩年の諦観が色濃く出ています。
マーラーの作風はまさしく多様・複雑です。叙情的・官能的で詩情に溢れている一方で、人生への怖れ・諦観といった深い闇が同居しています。軍隊の行進曲や民謡、小鳥のさえずり、信号音などが生の形で音楽の中に突然登場するのも伝統的なクラッシック音楽には珍しいことです。さらには皮肉やパロディーも随所に見られ、今回の第五交響曲もベートーヴェンの運命交響曲のパロディーが登場します。「崇高な悲劇性と軽薄な娯楽性が心の中で分かちがたく結びつくようになった」という趣旨のことをマーラー自身が述懐しています。
第五番の作曲当時は彼の生涯の絶頂期であり、仕事面ではウイーンの宮廷歌劇場監督に就任しており、私生活では妻アルマと結婚して長女が生まれています。
作品の全体的な流れは「苦悩から歓喜へ」で、ベートーヴェンの交響曲第五番「運命」や第九番「合唱」に見られるストーリーとなっています。楽章構成は、表面上は五楽章になりますが、全体的には大きく3部構成と考えられ、第一楽章と第二楽章は苦悩、第三楽章は中間部のスケルツォ、第四楽章を序奏部として第五楽章は歓喜を表現しています。
第一楽章「葬送行進曲」
緩-急-緩の構成です。冒頭トランペットが葬送を告げるファンファーレを奏しますが、これはベートーヴェンの運命交響曲で有名な「運命の動機」でこののち第二楽章にわたり随所に登場します。その後弦楽器が悲しみの主題を奏して葬送の行進が続きます。中間部は「情熱的に荒々しく」と指定されたテンポを急激にアップしますが、しばらくして落ち着いて再び葬送の行進となります。
第二楽章「嵐のように激動して、極めて荒々しく」
ソナタ形式です。冒頭まさしく嵐のように第一主題が荒れ狂いますが、第二主題は第一主題の葬送行進のリズムに乗って、チェロがゆったりと悲しげな旋律を奏でます。
第三楽章「スケルツォ」
やや遅めの長いスケルツォで、「苦悩」から一転して穏やかで明るい曲想となります。印象的なホルンの導入動機に続いて、穏やかな舞曲風の主題が流れます。その後はさまざまなスタイルの主題が次々と登場して曲が展開していきますが、冒頭のホルンの動機とともに第一主題が再現されます。最後はテンポが急激に速くなり、まさに「乱舞」のうちに終結します。
第四楽章「アダージェット」
ヴィスコンティ監督の映画「ヴェニスに死す」で使われて有名になりました。世紀末ウイーンの官能的・退廃的な雰囲気に満ちています。
第五楽章「ロンド・フィナーレ」
マーラーは第五番作曲当時、バッハの作品の研究をしていました。その影響か、この第五楽章は複数の旋律が絡み合って進行していく「対位法」の技法が多用されています。冒頭いろいろな楽器で主要旋律の断片が奏されたのち、ホルンが明るく豊かな主題を提示します。すぐにチェロによるバッハ風のフーガ主題が現れ、長大なフーガが進行していきます。そしてマーラーの絶頂期を表すような歓喜のコラールを経て終結します。
《プロフィール》
指揮者:富平恭平’(とみひら きょうへい)
東京生まれ。東京藝術大学音楽学部指揮科卒業。これまでに指揮を高関健、田中良和、小田野宏之、ピアノを安芸彊子、迫昭嘉、奏はるひの各氏に師事。現在、群馬県の移動音楽教室にて群馬交響楽団を指揮している。これまでに東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、錦織健リサイタルにてニューフィルハーモニー千葉を指揮している。・・・・・オペラでの活動が多く、東京二期会、新国立劇場、藤原歌劇団、錦織健プロジュース、日生劇場などでの公演で副指揮者、合唱指揮者、コレペティトウァ、ピアニスト、プロンプターなどオペラに関わるあらゆる仕事を務めている。・・・・・
2007年10月には急遽代役にてクーラウ作曲のオペラ「魔法の竪琴」の日本初演を指揮。現在、東京二期会専属スタッフとしてオペラの制作に携わり、東京藝術大学大学院オペラ科非常勤講師としてオペラの指導も行っている。
《レコード CDのことなど》
マーラー:交響曲第5番
レコード、CDは自分の気に入ったものを聴いていればいいわけですが、私はジョン・バルビローリ指揮:ニューフィルハーモニア管弦楽団のCDを聴いてきました。
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