2008年9月21日(日)15:00開演 東京文化会館大ホール (JR上野駅公園口横断歩道渡り2、3分 東京メトロ日比谷線上野駅徒歩5、6分)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルト 歌劇「魔笛」全2幕
原作:クリストフ・マーティン・ヴィーラント 台本:ヨハン・エマヌエル・シカネーダー 初演:1791年9月30日 ウイーン郊外ヴィーデン劇場 作曲者自身の指揮による(シカネーダ座)
《登場人物》
タミーノ(テノール) 王子。パミーナに憧れ、ザラストロから救い出すために試練の旅に出る。
パパゲーノ(バリトン) 鳥刺し。お調子者の愛すべき俗人。恋人を探すためにタミーノとともに試練の旅に出る。
夜の女王(ソプラノ) 夜の世界を支配する女王。最初は娘をさらわれた哀れな母親として登場するが、第2幕では悪の象徴と化す。
パミーナ(ソプラノ) 夜の女王の娘。一目でタミーノと恋に落ち、彼と結ばれるために試練にたえる。
パパゲーナ(ソプラノ) パパゲーノの女房になる若い娘。パパゲーノの心を試すために最初は老婆の姿で現れる。
ザラストロ(バス) 古代エジプトのイシス、オシリスの両神に仕える高僧。最初はパミーナを誘拐した悪者として登場するが、後に徳の高い叡智の人であることがわかる。
モノスタトス(テノール) ザラストロに仕えるよこしまなムーア人。後半で夜の女王に寝返る。
《キャスト》
ザラストロ:イヴァイロ・グベロフ 夜の女王:エレナ・ガズディーコヴァー タミーノ:オトカル・クレイン パミーナ:イヴェタ・イルジーコヴァー パパゲーノ: イルイー・クビーク パパゲーナ:リブシュ・ミリャースカー モノスタトス:イルジーブルークラー ほか
《印象 感想など》
序曲 第1幕
私の席 B席3階R1列7番 ほとんど満席。
音楽はとても良いテンポで、快適に流れる。オーケストラは多すぎず、最適の規模で、アンサンブル、バランスがとても良い音、響きで鳴る。
夜の女王、アリアでコロラチューラ・ソプラノの素晴らしい歌声を聴かせてくれる。
《魔笛をみる人へのノート》 小山 晃
《時と所》
架空の時代のエジプト。となっているが、日本のおとぎ話にもよくある昔々あるところに・・・・。
「序曲」
モーツアルトのオペラの序曲中で、もっともポピュラーな1曲。曲の冒頭でひびく力強い和音が、正義の力を表現しているように感じられる。
序曲の中で3度奏でられるこの和音は、第2幕でも響く。この和音は“自由・平等・博愛”を示すとされているが、その解釈は別としてもアレグロの主部などまことに輝かしい。
《第1幕》
あらすじ
王子タミーノが、大蛇のような竜のようなえたいのしれない怪物に追われて逃げてくる。王子は恐怖のあまり失神したが、夜の女王の3人の侍女が現れ、怪物を倒す。タミーノを見て一目惚れした侍女たちが名残惜しそうに立ち去ると、鳥刺しパパゲーノが現れた。
気がついたタミーノは、この男が怪物を退治したと思いこむ。パパゲーノもいい気になって自慢するが、再び現れた侍女たちに嘘言のかどで口に錠をかけられる。
タミーノは夜の女王の娘パミーナ救出を侍女たちに誓い、魔法の笛をうけ、パパゲーノも行動を共にするようようにと銀の鈴をうける。
■見どころ聴きどころ
「オレは鳥刺し」
パパゲーノが登場しつつ歌う自己紹介の歌。陽気で軽やか、自然児で生き生きとして健康なキャラクターが、この1曲で即座にしれる。
「何と美しい絵姿」
タミーノのアリア。パミーナの肖像画を見せられたタミーノが一目で恋し憧れる。絵を見ただけで好きになるとはえらく単純だが、俗人とちがってそれが王子さまなのだろう。シンプルな旋律だが情熱を秘めながらとても初々しい。
「恐れるな若者よ」
夜の女王のレシタティーボとアリア。難曲の一つで、コロラチューラのハイテクをクリアしながら娘を奪われた母の悲憤を歌いだす。劇的なレシタティーボ、アリアで母の痛みのコントラストもすばらしい。夜の女王の最初のきかせどころであり、ハイテクが見事にキマると快感。!!
「フム、フム、フム」
タミーノ、パパゲーノ、3人の侍女による5重唱。嘘をついたパパゲーノの口に錠がかけられ・・・・。アンサンブルの傑作の一つ。パパゲーノとタミーノの掛け合いに3人の侍女が加わる。そしてここで魔笛と鈴が与えられる。モーツアルトの親しみとユーモアが充ちたナンバーである。
あらすじ
さて、ザラストロの館では、捕らわれの身のパミーナが召し使いモノスタトスに言いよられ、驚愕と悲しみで気絶。そこへ忍び入ったパパゲーノはモノスタトスをやりすごし、パミーナに王子タミーノが助けると告げる。
一方タミーノは3人の少年に案内され神聖な森へ到着した。と、弁者が現れ、ザラストロは正しき者と語る。パミーナがこの館にかくまわれているのは、邪心ある母から護るためと話す。
タミーノが入るとパミーナ、パパゲーノが現れ、追手のモノスタトスとその手下たちを魔法の鈴で酔わせ難を避ける。
人々の喚呼の声に迎えられザロストロが現れた。ザラストロはパミーナを許し、タミーノを捕らえてきたモノスタトスは下心をザラストロに知られ、逆に罰を受ける。
タミーノとパミーナは、愛を成就させるには試練を受けなければならず、科せられた厳しい3試練に立ち向かう。人々のザラストロを讃える声がひびいてくる。
■見どころ聴きどころ
「ここへ来い」
緊迫感を増してゆく3重唱。邪しまな想いで迫るモノスタトス、追いつめられるパミーナ、パパゲーノ登場で一転コミカルに。鉢合わせした男2人は互いの奇妙な姿にそれぞれが化け物かと思ってしまう。これも大傑作で腕達者な歌手が演じると、緊迫しながらも滅法可笑しい。
「恋をしるひとには」
パミーナ、パパゲーノの2重唱。パパゲーノからタミーノの愛を知らされたパミーナは、その未知の若者に憧れる。非常に美しい愛の賛歌であり、ここにもモーツアルトの真髄があると云える。
「見知らぬ旅人よ」
弁者とタミーノの問答。タミーノがザラストロ邸に近づくと、弁者が現れ問答となる。弁者はザラストロの偉大さを説き、しかしタミーノは容易に納得しない。2人の問答は、永遠なるものへの教え、とでも云えようか。
「オレにまかせろ」
邸を忍び出たパミーナとパパゲーノ、モノスタトスらが追ってくる。一計を案じたパパゲーノが鈴を振ると・・・・。まことい珍妙無類なシーンだが、モーツアルトは絶妙な音楽をはめた。
「フィナーレ」
理屈でいうと、タミーノやパミーナが急にザラストロに傾く心理が、とってつけたようで矛盾だらけだが、何だか変だゾ、と観客が考える前にモーツアルトの傑出した音楽に押しきられてしまう。
フィナーレではザラストロの哲学、モノスタトスの罰、顔を初めて見合わせるタミーノ、パミーナなどの件があるのだが、ザラストロノ讃の合唱でパミーナ救出は大詰めとなる。
第2幕
あらすじ
ザラストロが祭司たちと現れた。ザラストロは彼らにタミーノへの助力を依頼する。ほどなくタミーノは試練を受ける資格を認められ、第1の試練に向かい、3人の侍女の誘感も退けた。
パパゲーノはというと自分には試練などとんでもないと考えている。怖いことをさせられるなら、独りで過ごしたほうがいい。でも、愛らしいパパゲーナを彼女にできると聞くと、やっぱりその気になってしまう。
話しは変わって、夜の女王がパミーナのもとへこっそり現れ、ザラストロへの復讐を、と娘に短剣を渡し暗殺を命じた。恐ろしいことだがパミーナは母にさからえない。途方にくれるパミーナだったが、ザラストロはすべてお見通しだった。
いよいよ試練に入ったタミーノ、沈黙の試練である。が、口から先に生まれたようなパパゲーノは黙ってなんかいられない。
そんな彼の前に1人の老婆が現れた。あんたの恋人よと、と云われて驚くパパゲーノだったが、千年も生きたような老婆はすぐに姿を消す。3少年が現れ、ザラストロから取り上げられていた笛と剣を2人に返す。タミーノ吹く笛の音にひかれパミーナが現れたが、一言も物を云わないタミーノに、彼女は嫌われたかと悲観する。そこへ現れた3少年から、無言の行は試練のため、彼はあなたを愛している、と聞き、パミーナは自分も試練を、と決心する。そして2人は次々と試練をまっとうしてゆく。
酒を手にしたパパゲーノはすっかりごきげんである。やっぱり恋人がほしいとも思う。と、さっきの婆さんだ。しぶしぶ愛を誓うと、とたんに婆さんは美女に変身、だがまた姿を消した。パパゲーノは絶望し首をつろうと考えた。ちょうど枝ぶりのいい樹もある。その寸前、また3少年が現れ、鈴を振ってごらんと云う。験しに振ればなんとパパゲーナが現れた。有頂天のパパゲーノは2人で沢山こどもを作ろうと抱き合う。
一方では、復讐をしようと忍び入った夜の女王一行が、突然の雷鳴に打たれ、永遠の闇の底へ落ちた。
輝かしい太陽の世界になり、ザラストロはタミーノへ、パミーナを従えて現れ、試練をしっかり遂げた2人を祝福する。全員がイシスとオシリスを讃えて唱和する。
《印象 感想など》
舞台や演出は、オーソドックスと思った。モーツアルトの音楽、曲作りに感動。モーツアルトはやはり凄い。オペラって凄い。「魔笛」を堪能。
見どころ聴きどころ
「マーチ」
ザラストロに従う祭司たちの入場。そしてザラストロの説教、祭司、弁者などとの問答があり、3回の和音も響く。
「神よ聞き給え」
合唱を伴った壮大なアリア。タミーノ、パミーナの試練の成果をザラストロが神に祈る。荘厳で華麗なナンバーせあり、唱和する男性合唱に強くふちどられる。
「アララ、こんなところで」
タミーノ、パパゲーノ、侍女たちの5重唱。無言の行を続ける男2人を陥落させよう、と侍女たちが現れる。女たちの誘惑にノリそうになるパパゲーノ、必死にそれを止めるタミーノ。どうにか無視しとうすことができる。
「誰でも楽しく恋が」
モノスタトスのアリア。彼が官能の疼きを歌う。ささやくように忍び声で歌うところに体のほてりが表されている。うっくつした情慾を示すモーツアルトの卓抜な手法があり、音楽で物の見事に心理を演じさせている。
「わが怒りの火は」
夜の女王のアリア。ザラストロへの激しい憎悪と復讐を歌う。高度の声の技を聞かせつつ執念の沸りを歌い、壮絶な劇的効果がある。コロラツーラの難曲中の難曲である。
「この清き世界は」
ザラストロのアリア。広い人間愛を示し、大変荘厳だが人間的な温かさをにじませる。広大な愛を感じさせる1曲。
「この国へ2人ともようこそ」
大変ナイーブな音楽で書かれ、ここで魔笛と鈴がタミーノ、パパゲーナに返される。
「幸せは永遠に帰らず」
パミーナのアリア。無言の行に入ったタミーノとは知らず、彼にふられたと誤解し、失恋の嘆きと死の決意を歌う。切実な、そして美しい旋律の間に絶望感が書き込まれている。
「何と幸せ」
祭司たちの合唱。タミーノの試練の成功を祈る、スケールある男声合唱である。
「恋人か女房が」
パパゲーノのアリア。おかしくてちょっぴり悲しい自然児の人生観である。金も財産もいらない。可愛い恋人か女房がいれば、それがおいらには一番。パパゲーノの心情が心憎いほど表されている。
「パ、パ、パ」の2重唱
パパゲーノは女の子に消えられ、もう首を吊るしかない、と絶望に襲われる。枝ぶりのいい樹も目の前にある。ラッキーな?ことに綱もぶらさがっている。
3つ数えても誰も止めてくれない。もう駄目だ、と思ったとたんパパゲーナが現れた。2人はしかりと抱き合う。人生捨てたもんじゃない。子どもを沢山つくろう。最高に愉快な二重唱であり、見聞するほうも人生が愉しくなる。人生謳歌の名ナンバーであり、《魔笛》の白眉のシーンである。
「闇は消え、陽は昇り」
オペラの大詰め。夜の女王たちは永遠の闇の底に落ち、陽がさんさんと輝く。強く幸せな者たちはみな太陽の世界に迎えられ、イシスとオシリスの神を讃えるフィナーレの合唱が、壮大にひびきわたってゆく。
《プラハ室内歌劇場》
プラハ国立歌劇場やプラハ国立劇場、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団などのの中心メンバーで構成されrている。
古い習慣に捕われない進歩的なオペラ・カンパニーを目指し、プラハ音楽院およびプラハ音楽芸術アカデミーの若い芸術家達によって1965年に立ち上げられた。チェコに息づく音楽遺産を重んじ継承しようと熱心な取り組みが注目を集め、その若々しい気迫溢れる演奏は聴衆の心を掴み、プラハの音楽界で重要な地位を確立するのにそう時間はかからなかった。
設立当時は創立者の一人でもある芸術監督ペトル・ヤナーシュのもと、チェコの芸術の根底に流れるモーツアルトの伝統を再認識し、モーツアルトオペラの上演に力を注いだ。その真摯な活動は、若い音楽家達を中心にチェコのクラシック界を大いに活気づけた。
1968年、旧ソ連の軍事介入(「プラハの春」)により活動は大幅に制限されたものの、その後の社会主義体制崩壊により、前衛的な作品も取りあげながら再び精力的な活動を展開した。
現在は、鬼才演出家マルティン・オタヴァに率いられ、その完成度の高さは数あるオペラ団体の中でもトップクラスに位置付けられ、大きな注目を浴びている。・・・・・(以下、略)
《プラハ室内歌劇場総裁・主席演出家・プラハ国立劇場主席演出家:マルティン・オタヴァ》
チェコが誇る気鋭の舞台演出家。
祖父はプラハ国立劇場の名バリトン、母は同劇場のバレリーナという芸術一家に生まれる。
プラハ音楽院で声楽を、プラハ音楽芸術アカデミーでオペラ演出を学ぶ。在学中より歌手および俳優として主にオペレッタ、ミュージカルなどに出演。演出にも早くから関心を、プラハの小劇場で研鑽を積んだ後、1991年にプラハ国立歌劇場の演出家としてデビューし、《愛の妙薬》《ファウスト》《イル・トロヴァトーレ》《こうもり》などを次々に手がけた。
プラハの他、アルノ、リベレツで《ドン・ジョバンニ》《アイーダ》他、さらに国外でも演出家として招かれ、バイロイトで《ドン・ジョバンニ》、モンテカルロで《セビリアの理髪師》、ミュンヘンで野外オペラ《アイーダ》、カンヌで《ワルキューレ》、また日本でもプラハ国立劇場《アイーダ》《トスカ》などが好評を博した。
野外劇場オペラ制作も得意とし、1995年から2001年までプラハ野外オペラ・フェスティバルの総合演出家として、毎年夏の舞台を制作、《椿姫》《リゴレット》《魔笛》などを手がけた。奇をてらわず、台本の本来のおもしろさを追求する機知に富んだ演出は、世界中で脚光を浴びており、そのオファーはとどまることを知らない。
《プラハ室内歌劇場音楽監督、スロヴァキア国立歌劇場主席指揮者:マルティン・マージク》
東スロヴァキアのプレジョヴ生まれ。ブラチスラヴァ音楽院にてクラリネット、ピアノ、作曲、指揮を学ぶ。その後、ブラチスラヴァ音楽芸術アカデミーにてL..スロヴァーク、B.レジュハに、作曲ををJ.ハトリークの各氏に師事。同時期にウイーン国立音楽大学にてK.エースターライヒャーに、K.シュヴェルトシクの各氏に師事。その他、A.チェッカート、S.チェリビダッケの各氏に師事。
アカデミー在学中よりコシチェ国立フィルハーモニーへ客演を重ねる。スロヴァキア国立歌劇場アシスタント・コンダクター、コシチェ国立劇場指揮者を経て、1996年よりスロヴァキア国立歌劇場の指揮者を務める。・・・・・・
2005年に行われた《こうもり》のアメリカ・ツアーではアメリカの各紙で高い評価を得る。2006年はドイツ、オーストリア、スイス、フランスにて《メリー・ウイドウ》のツアー(全30公演)、プラハ室内歌劇場の初来日ツアーで大絶賛される。2007年にはアメリカ、ドイツ他、日本へはメラニーホリディのツアーに同行し東響、九響などを指揮。
次世代を担う逸材として注目を集めている。
《レコード CDのこと
歌劇「魔笛」
レコード、CDは自分の気に入ったものを聴いていればいいわけですが、わたしは以前からオトマール・スイトナー指揮ドレスデン国立管弦楽団ライピティヒ放送合唱団 ザラストロ:テーオ・アダム、タミーノ:ペーター・シュライヤー、夜の女王:シルヴィア・ゲスティー、パミーナ:ヘレン・ドナート ほか のLPレコードをよく聴いてきました。
私はアナログレコードの柔らかい音が好きで、今でもアナログをまず聴きます。しかし今はCDの時代ですから、CDではオットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団および合唱団 タミーノ:ニコライ・ゲッダ、パミーナ:グンドラ・ヤノヴッツ、パパゲーノ:ワルター・ベリー、夜の女王:ルチア・ポップ、ザラストロ:ゴットローブ・フリックス ほか と カール・ベーム指揮ウイーンフィルハーモニー管弦楽団、ウイーン国立歌劇場合唱団 パミーナ:ヒルデ・ギューデン、夜の女王:ヴィルマ・リップ、タミーノ:レオポルド・モノー、パパゲーノ:ヴァルター・ベリー、パパゲーナ:エミー・ローゼ ほか
のCDを楽しんできました。
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