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2009年1月 7日 (水)

演奏会に行ってきました「モルゴーア・クァルテット  ドヴォルザーク、林 光、ベートーヴェン『ハープ』」(2008-37)

2008年7月2日(水)午後7時開演 浜離宮朝日ホール(地下鉄都営大江戸線築地市場駅下車すぐ)  室内楽や室内オーケストラ、チェンバロなどには抜群に良い音、響きの良いホール。

モルゴーア・クァルテット 第29回定期演奏会

ベートーヴェン中期弦楽四重奏曲ツイクルス[4]

モルゴーア・クァルテット

第1ヴァイオリン:荒井英治(東京フィルハーモニー交響楽団ソロ・コンサートマスター) 第2ヴァイオリン:戸澤哲夫(東京シティフィルハーモニック管弦楽団コンサートマスター)

ヴィオラ:小野富士(ひさし)(NHK交響楽団フォアシュピーラー)

チェロ:藤森亮一(NHK交響楽団主席奏者)

《プログラム》

ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第8番ホ短調 Op.80 B.57

林 光:インテルメデイオ[2002]

林 光:ラメント(悲の曲)[1999/2000]

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番変ホ長調 Op.74「ハープ」

《印象 感想》 私の席:C列13番(自由席)

ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第8番ホ短調 Op.80 B.57

Ⅰ.アレグロ Ⅱ.アンダンテ コン モト Ⅲ.アレグレット スケルツアンド Ⅳ.アレグロ コン ブリオ(ファイナル)

 1楽章 出だしから、よく歌う。抜群のアンサンブル。 2楽章 チェロのピチカートで始まる。 3楽章 第1ヴァイオリン、素敵な良い音を奏でる。 4楽章 緊迫した演奏。

林 光る:インテルメデイオ[2002]

 弦のピチカートで始まる。珍しく、第1ヴァイオリンの弦が切れ、ヴァイオリンをステージの外に戻って交換し、演奏を中断。活発な曲。曲の途中に、何度か休止がある。終了後、作曲者の林 光が客席で立って紹介される。

林 光:ラメント(悲の曲)[1999/2000]

 ロマンが感じられる、少し悲しい雰囲気の曲。終了後、林がステージに登り紹介される。

         ・・・・・・・休 憩・・・・・・

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番変ホ長調 Op.74「ハープ」

Ⅰ.ポコ アダージョ-アレグロ Ⅱ.アダージョ、マ ノン トロッポ Ⅲ.プレスと-ピュウプレスト クワジ ピレステッシモ Ⅳ.アレグレット コン ヴァリアチオーニ

 緊密なアンサンブルで、よく歌い流れるすごい演奏。クァルテットを堪能する。

アンコール

 林 光のピアノ曲を荒井が弦楽四重奏に編曲したもの。元は沖縄で歌われた愛の歌とのこと。

《プログラムノート》 林 光

ドヴォルザーク:(1841~1904):弦楽四重奏曲第8番 変ホ長調Op.80 B.57

 第一楽章:アレグロ 4分の4拍子

 ミ・レ#・ファ#ミ・レ#・ド#・ミ・レ#・ド#シと、行きつ戻りつしながら4分音符でゆったりと4度下降する第一ヴァイオリンの旋律は、2小節ずつずれて第2ヴァイオリンへ、またチェロへと受け継がれていく。その展開には、半音階進行やエンハーマニック転調の多用が目立つ。

 第二主題は主調の3度下の嬰ハ短調である。そこにはシューベルトのソナタ書法がちらつくがメロディーはスラブ調だ。

 展開部が始まると、第一主題の4分音符を8分音符に書き換えた縮小型があらわれて、主役を演じる。

 元調にもどって第一主題の帰途、続いて第二主題がホ短調で再起したあと、曲頭の四つの音符を念入りにちりばめた長めのコーダがあって終わる。

 第二楽章:アンダンテ・コン・モート 8分の3拍子

 チェロのピチカートにのってヴァイオリンが奏でる、ちょっと悲しくちょっと弾むメロディーはドゥムカ調だ。ウクライナ起源といわれ、15年のちの「ドゥムキー三重奏曲」で私たちの記憶に刻まれることになるドゥムカの予告編。

 長調に転じての二つめの主題には、どことなくヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタの第二「バラード」を思わせる(これも8分の3拍子)ものがある。

 第三楽章:アレグロ・スケルツァンド ホ長調 4分の3拍子

 第1拍のウラから始まる主題が、なんとなく躓く(るまず)くような感じでユーモラスな気分を醸しだす。嬰ハ短調のトリオは、三連音符のはげしい動きで盛り上がる。

 第四楽章:アレグロ・コン・ブリオ 4ブンノ拍子

 いきなり嬰ト短調、つまりホ長調の第3度上につくられる和音に始まり、転調に転調をかさねてやっと主調に達するのは、何と32小節めという、意表をついたはじまり。さてその32小節めからの第一主題は、ホ長調にはじまり二小節単位で嬰ハ短調へと解決するという、典型的なスラブ風の音楽だ。

 対する第二主題は、78分音符と4分音符で組み立てられた静かな曲想なのだが、その中枢の4個の4分音符は、正確にではないがどうやら第一楽章の4分音符主題の上下をひっくりかえしたもののようだ。こうして、意識してのことではないだろうが、ⅠからⅣへとアーチがかかる。

 ドヴォルザークがこの曲を作曲したのは1876年、35歳。「スタバート・マーテル」を書くのは翌年、「スラブ舞曲・第1集」はさらにその翌年である。

林 光(1931~)

「インテルメディオ」

「ラメント(悲の曲)」

 モルゴーア・クァルテットのプログラム・ノートを書きはじめたとき、自作の解説がまわってくるというのは想定外だった。

 さて。

 作曲家たるもの、せめて30代でクァルテットの一つも書くもだと思っていたぼくだが、さいしょのクァルテット、「弦楽四重奏曲(レゲンデ)」を書いたのは60歳を目の前にした1980年だった。

 モルゴーアの<レゲンデ>を聴きたいきもちも強いが、きょう聴いていただくのは、その時からほぼ10年経って書いた、二つのクァルテット。

 二つのうち、あとから書いた「インテルメディオ」(2002)が、まず演奏される。

 東京クァルテットがこの年にはじめたプロジェクトが、ブラームスの四重奏と六重奏を一晩でというコンサートで、その真ん中にはさむ新曲というのが注文。演奏時間7分という条件は、ブラームスの<ソナタ>の長さを考えればまあ当然だし、それにこういった条件についノッて、張り切ってしまうのが作曲家の業(ごう)というものですね。

 ピッチカートの堆積がいつのまにかグリッサンドのストレッタに移行するイントロ。五音音階のモチーフが積み重なる第一主題、食いちがう手拍子みたいなリズムに乗った第二主題、やがて第一主題が回帰し、さらにイントロが戻ってきて、つまりABCBAという感じで曲が終わる。

 「ラメント(悲の曲)」は、1999年から2000年かけての作曲。長くニューヨークで日本現代音楽の紹介を、クニに頼らないでNPO的孤軍奮闘でつづけてきた、三浦尚之さん主催の「ミュージック・フロム・ジャパン」 が、ぼくの作品コンサートを企画してくれた。三浦さんの悲願であった、「原爆小景」全曲(この時は第3部まで)演奏が、米人の合唱団の原語(!)によって実現した、記念すべきコンサートだった。

 このコンサートのための委嘱作品が「ラメント」で、東京クァルテットがすばらしい初演をした。 

 曲は、4分の6拍子8小節の主題にもとづくシャコンヌで、その主題は、前年にオーケストラ・アンサンブル金沢と岩城宏之によって初演された「トレヌス(哀歌)」のそれと同じ。第三変奏あたりまで同じように進む展開は、やがて楽器編成のちがいもあって、いつのまにかまったくちがった音楽になっていく。

 「悲歌」(ヴィオラ協奏曲)、「レゲンデ」、「八月正午に太陽は・・・」(第三交響曲」とつづく、ぼくの一連の曲に共通する「少し悲しい」音楽。

ベートーヴェン(1770~1826):弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調Op.74「ハープ」

 1809年、38歳のベートーヴェンは10番目の弦楽四重奏曲を作曲、前の年に第5・第6の二つの交響曲を初演、二年後には26番めのピアノソナタ「告別」が書かれているという時期である。

 第一楽章:ポコ・アダージォ、変ホ長調の序奏での冒頭で、第1ヴァイオリンはミ♭・ソ・♭・レ♭という旋律を二度繰り返す。半音下げた属音レ♭は、当然ドに下りてサブ・ドミナントに解決するかと思うとさにおあらず、レ♭は強引にレに戻って主音レに帰り着いてしまう。

 この進行、どこかで聴いたと思ったら、1曲まえの第9番(ラズモフスキー第3番)にあった!お気に入りだっただろう。

 主和音を分散させたニ♭・ソ・シ♭ではじまる、アレグロ4分の4拍子のテーマの11小節めから、ヴィオラとチェロのかけあいのピチカートごっこが4小節、そのあと二挺のヴァイオリンのかけあいが4小節つづく。ここを書きながら作曲家は、のちに〈ハープ〉というあだ名のもとになるピチカートを思いついたのだろう。

 けれどもそのあと、ピチカートはぴたっと止んで、16分音符が活躍する第二テーマ、そして展開部へと、何くわぬ顔で曲は続く。

 以上は展開部の後半で起こる。第一テーマへの回帰を目指しているらしい転調が、徐々に強から弱へ、密から粗へと、あの〈英雄〉交響曲第一楽章の第一テーマ再起直前に似た雰囲気になったところで、ピチカートづくしははじまる。徐々に音符が細かくなり、これ以上速く撥かせられないよとアルコに切り替わったところで、クレッシェエンドがかかり、第一テーマが戻ってくる。が、〈ハープ〉はこれで終わりではない。

 ほんらい、短いシメの言葉であったはずのものを、第二の展開部にふくらませてしまったベートーヴェン型のコーダで、〈ハープ〉はもういちど鳴る。

 第一楽章に手間をかけすぎた。

 第二楽章:アダージョ・マ・ノン・トロッポ 変イ長調、8分の3,終始おだやかな歌謡楽章、

ABACAという形式も、まことに均衡がとれ明確な音楽。

 第三楽章:プレスト

 激しい第一ヴァイオリンのテーマのリズムはタタタターで、まぎれもなく〈運命の扉叩き〉のそれ。しかもハ短調という調性のためにいっそう類似性が増す。〈熱情〉ソナタにも通底する扉叩きで構成された激しい音楽は、中間部を二度はさんで三たびくりかえされる。

 休まず続く第四楽章:アレグレット・コン・ヴァリアチオーニ

 整然とした20小節の主題にもとずく六つの変奏(とコーダ)を、変奏曲の王様は、第一楽章のハープづくしの余韻を消すような大わざを見せつけることもなく、悠々と展開して曲を終わらせる。

《演奏者プロフィール》

モルゴーア・クァルテット

 MRGAUA QUARTET(モルゴーア・クァルテット)は、ショスタコーヴィチの遺した15曲の弦楽四重奏曲を演奏するため、第1ヴァイオリン荒井英治、第2ヴァイオリン青木高志、ヴィオラ小野富士、チェロ藤森亮一によって1992年秋に結成された弦楽四重奏団。翌1993年6月に第1回定期演奏会を開始。1996年6月に東芝EMIから《モルゴーア・クァルテット ショスタコーヴィチVol.1》でCDデビュー。・・・・・・

 ジャンルの壁を超えた音楽シーンを創造する団体としての活動を展開する。1998年1月、第10回“村松賞”受賞。2001年1月の第14回定期演奏会でショスターコーヴイチの残した弦楽四重奏曲全15曲を完奏。同年4月、第2ヴァイオリンを戸澤哲夫に交代。2003年6月にはベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲を完奏。2001年11月からは「トリトン・アーツ・ネットワーク」との共催公演で《モルゴーア・クァルテット ショスターコーヴィチ・シリーズ》を5回に亘って行い、2003年12月に2度目の完奏。

2004年1月の第20回から2006年6月の第25回定期演奏会までの6回でバルトークの弦楽四重奏曲全6曲を完奏。2006年9月には「トリトン・アーツ・ネットワーク」との共催でショスタコーヴィチ生誕100周年記念弦楽四重奏曲全曲演奏会行い、僅か3日間で全曲を演奏し話題を呼んだ。2005年4月、マイスター・ミュージックから《ボロディン:弦楽四重奏曲集》を発売。 

 モルゴーアという名称ははエスペラント語(morgua=明日に)に原意を持つ。

《CDのことなど》

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲

 CDは自分の気に入ったものを聴いていればいいわけですが、世評では、アルバンベルク弦楽四重奏団の新旧盤が評判がいいようです。私は、ウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団のCD(タワーレコード(株))のCDボックス「ベートーヴェン弦楽四重奏曲全集」をよく聴いてきました。メンバーは第1ヴァイオリンはライナー・キュッヒル、第2ヴァイオリンがエクハルト・ザイフェルト、ヴィオラがハインツ・コル、チェロがフランツ・バルトロメイという面々です。

 ライナー・キュッヒルはウイーン・フィルのコンサートマスターで、今年(2009年)のニューイヤーコンサート(指揮はダニエル・バレンボイム)でも、コンサートマスターを務めているのがテレビに映っていました。

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