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演奏とお話 野平(のだいら)一郎
2008年3月28日(金)18:30開演 水戸芸術館コンサートホールATM 水戸駅からバスで7~8分さらに徒歩5分。
一番前の席(A列29番)。中央のピアノの真ん前。よく見え、よく聴こえる。ピアノはスタインウエイ。
《プログラム》
ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルト(1756~1791):
ピアノ・ソナタ第6番 ニ長調 K.284(205b)〈デュルニッツ〉
ピアノ・ソナタ第7番 ハ長調 K.309(284b)
・・・・・・休憩・・・・・・
ピアノ・ソナタ 第8番 ニ長調 K.311(284c)[旧全集第9番]
「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」による12の変奏曲 ハ長調 K.265(300e)(通称〈きらきら星変奏曲〉
ピアノ・ソナタ 第9番 イ短調 K.310(300d)[旧全集第8番]
《アンコール》 8つの変奏曲
モーツアルト:ピアノソナタ全曲演奏会へようこそ 水戸芸術館音楽部門 関根哲也
クラシック音楽の世界は、私たちが一生かけても探りきれないほどに、果てしなく広がっています。さまざまな名曲にいざなわれ、あちこちを旅することは、とても楽しいことですよね。
しかし、あまりに広大なクラシック音楽の世界で、道に迷ってしまったことはありませんか?ここはすでに来たことのある道だったか、そして、この道はどこに通じる道だったか・・・・。
そんなとき、頼りになるのは、よく通る重要な道をしっかりとおぼえておくことです。そうしておけば、たとえ細い道や曲がりくねった道に出会っても、自信を持って足を踏み入れることが出来るからです。
「モーツアルト:ピアノソナタ全曲演奏会」は、そんなことを考えながら作られたシリーズです。(1年に2回ずつ/全6回)。ご案内役は、当代きっての知的ピアニスト、野平一郎さんにお願いしました。ピアノの演奏だけでももちろん素晴らしいのですが、日本を代表する作曲家の一人でもある野平さんですから、曲の理解を深めるのに役立つさまざまなお話もしてくださることでしょう。
この企画ではモーツアルトのピアノソナタの創作を、ひとつの“道”にたとえています。研ぎ澄まされたすばらしい演奏で曲を聴き、モーツアルトの人生の歩みや変転などにも思いをめぐらせることで、その“道”がどこから来て、どこに通じているのかがしだいに見えてきます。
このシリーズをお聴きいただけば、モーツアルトのピアノソナタという“道”の初めから終わりまでが、くっきりと見渡せることでしょう。そしてこの“道”を足がかりに、皆様がご自分の手で、モーツアルトの他のジャンルの作品や他の作曲家の作品に手を広げて旅をひろげていけたら、どんなに素晴らしいことでしょう。どうぞご期待ください。
《印象 感想 野平の話しなど》
ピアノ・ソナタ第6番 ニ長調 K.284(205b)〈デュルニッツ〉
とても響くホール。ホールがよく鳴る。21歳の時、ミュンヘンで作曲。モーツアルトのピアノ・ソナタの中で、最も長く、規模の大きな曲。モーツアルトの最初のクラヴィコードの曲。クラヴィコードは、当時は1、2列目ぐらいしか音が聞こえなかった。
シュターミッツとか出て、音楽が格段にシンフォニックになる。マンハイム学派の影響。減七和音を使う。
ピアノ・ソナタ第7番 ハ長調 K.309(284b)
マンハイムで作曲。マンハイム学派のフォルテ・ピアノが出てくる。シンフォニックで明るい曲。最後は静かに終わる。
・・・・・・休 憩・・・・・・
ピアノ・ソナタ第8番 ニ長調 K.311(284c)[旧全集第9番]
1楽章 歌のある楽章。 2楽章 表情豊かな、祭典的な要素が見える。ピアノは素晴らしい演奏。 3楽章 跳ねるようなロンド。
「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」による12の変奏曲 ハ長調K.265(300e)(通称〈きらきら星変奏曲〉)
元はフランスの民謡。研究によると、1778年23歳の時、ウイーンで書いたと言われている。当時ウイーンでフランスのものが流行っていた。
ピアノ・ソナタ第9番 イ短調 K.310(300d)[旧全種第8番]
パリ旅行に、母が初めてついて来て、旅先で母が死ぬ。曲と因果関係があると言われている。1楽章 イ短調だが、深刻になりすぎず、良い演奏。憑かれたような出だしが、曲想に合っている。2楽章 少しテンポを落として、歌う素敵な演奏。3楽章 テンポを速めて、短調ぽい楽章。大変な名演。
モーツアルト:ピアノ・ソナタ全曲演奏会にむけて 野平一郎
モーツアルトのピアノ作品は、私にとって永遠の愛の対象。子どもの頃から親しんできたこのレパートリーへの愛は、50を過ぎた今でも全くもって変わりません。その全ピアノ・ソナタをはじめとして、変奏曲や小品、また四手連弾や二台ピアノのための曲など、重要な作品のすべてを演奏できるというには、この上ない法外な喜びです。2008年の最初の2回のコンサートのために、今着々と準備作業を進めていますが、楽しくて仕方がありません。
モーツアルトの音楽というのは、感情表現が多彩なのに、これほど自然に淀みなく流れ、屈託のないように聴こえる・・・これが魅力。モーツアルトを演奏する時、まず求められるものは「優雅さ」、そして何より「遊び」の精神がないとさまにならないでしょう。モーツアルトがそれを作曲した時に持っていたであろう「喜遊」の精神が、演奏の時によみがえるようにようにしたいと思っています。この「遊び」の精神を持てるかどうか、そしてそれが音楽の内容と照らしてふさわしいものであるかどうかに、モーツアルト演奏の一つの秘密が隠されていると思うからです。また「喜遊」の精神とともに「生成」の概念、すなわち正に演奏の現場で音楽が作られていくという感覚を持つことなしに、モーツアルトの演奏は成功しないと思うのです。
全部で6回からなるこの全曲演奏会シリーズでは、ピアノ・ソナタを作曲された順番に演奏しながら、モーツアルトが体験した道を、皆さんとご一緒に巡っていきます。1月と3月の2つのコンサートで演奏するソナタは、モーツアルトが19歳から22歳にかけて書いた最初の9曲。青年から大人になろうとするこのたった3年の間の、モーツアルトの音楽の発展と進化には驚くべきものがあります。ヨーロッパ各地をまわる天才ピアニストの作曲は、次第にピアニストとして活躍する天才的作曲家の作品へと脱皮、変貌していきます。
まず1月の第1回では、5曲のソナタをまとめて、その間にナント10歳で書いた2つのいずれも見事な変奏曲と、おそらく15歳で作曲されたと観られている小さく愛らしいメヌエットを挟み込んで演奏します。このようにして、モーツアルトのピアノ作品が、どこから来て、どこに向かおうとしているのかを明らかにしようと思っています。
3月の第2回のコンサートでは、いよいよ皆さんがよく聴かれているであろうピアノ・ソナタがいくつも登場してきます。第6番から第9番として知られる4曲で、いずれ劣らぬ傑作揃いですが、特にマンハイムで書かれた第7番のハ長調の両端楽章の群を抜いた優美さや、パリで書かれた第9番のイ短調の持つ疾走する悲しみの表現はどうでしょう。さらに、この4曲のソナタに加えて、25歳の時ウイーンで書かれた有名な変奏曲を1曲、通称「キラキラ星」変奏曲と言われている曲を演奏します。元の主題は、パリで当時はやっていた民謡「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」をモーツアルトとは別の作曲家がオペラの中のアリアで使ったもの。モーツアルトはパリジャンが愛好していた流行歌の旋律を使っていくつも変奏曲を書きましたが、その中で最も親しまれているものがこの12の変奏曲です。またこの曲は第3回、第4回で取り上げる曲、すなわち故郷のザルツブルグを離れ、いよいよウイーンで一躍時の寵児となるモーツアルトの作品群の予告するものでもあります。
ぜひとも一緒に水戸芸術館でモーツアルトの辿った軌跡を旅してみませんか。きっと、あなたの知らないモーツアルトが、いくつも発見できること間違いありません。(2007年11月)
曲目解説 安田和信(音楽学)
今回のプログラムは、ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルト(1756~1794)が1775年から1778年まで、つまり19歳の誕生日を迎えた頃から22歳の年まで作曲したソナタ4曲を中心としています。そのうちの1曲k..284は、前回の演奏会で取り上げられた3曲のソナタ(k.279~283)とともに、1775年初頭にミュンヘンで作曲されています。この時のミュンヘン滞在は、同地の宮廷劇場のためにオペラ(ラ・フィンタ・ジャルニィエラ(偽りの女庭師))k.198を作曲・上演することが主な目的でした。モーツアルト一家の書簡で「難しいソナタ」と呼ばれていた、このミュンヘンのソナタ集は、作曲者の生前にはまとまった曲集としては出版されることはありませんでした。しかしk.284のみは、ソナタ変ロ長調k.333、ヴァイオリン・ソナタ変ロ長調k.454とともに3曲1セットのソナタ集として、ウイーン移住後の1784年に同地の出版業者クリストフ・トリチェッラから出版されています。k.333とk.454はいずれも規模が大きく華やかな作品であり、これらの作品と組み合わせて出版するソナタとして、旧作のk.284が相応しいとモーツアルトには思われたのかもしれません。
他のソナタ3曲、ハ長調k.309、ニ長調k.311、イ短調k.310は1777年9月から1779年1月にまでに及ぶ「マンハイム・パリ旅行」の往路で書かれています。この旅行はザルツブルグに辞表を提出し、いわば退路を断ったうえでの求職旅行でした。この旅行でモーツアルトに同行したのは父親のレーオポルトではなく母親マリーア・アンナで、青年期に入った作曲家にとって、父親からの精神的な独立が促された旅でもあったでしょう。すでに高度な作曲技術を身につけ、多くの経験を積んでいたモーツアルトでしたが、能力だけで就職できないのは今も昔も変わりません。求職旅行としての「マンハイム・パリ旅行」は失敗に終わってしまいました。パリでは母親の死という悲痛な出来事も体験しなければなりませんでした。しかし、青年モーツアルトが、音楽の先進地であるマンハイムやパリの地を踏んだことは、さらなる音楽的な成長を促したに違いありません。
k.309の作曲が往路のマンハイム滞在中に書かれたことは、1777年11月初旬から12月初旬の父親宛の書簡で明らかです。これらの書簡によると、モーツアルトは、マンハイム宮廷楽団指揮者クリスティアン・カンナビヒの娘ロジーナ・テレジア(通称ローザ)のために書き、レッスンもしたようです。なお、k.311もk.309とほとんど同時期に作曲が進められたと推測されています。k.310だけが、マンハイムを去り、最終目的地であったパリに滞在していた時、1778年夏に作曲されています。モーツアルトはパリ滞在中に、ドイツ人出版業者ゲルハルト・ハイナと出会い、親交を深めましたが、これらの3曲は1782年頃になってから、ハイナによってまとめて出版されています。最初から計画的に3曲のソナタを作曲し、1セットの曲集として出版する意図があったかどうか定かではありませんが、母親の死に際し面倒を見てくれたハイナへの感謝の念が、ソナタ集の提供という形で示された可能性は大いに考えられるでしょう。
本日のプログラムは、前回と同様に変奏曲を1曲含んでいますが、〈きらきら星変奏曲〉という名前で親しまれているk.265は、フランスの俗謡を主題としているためか、以前はパリで作曲されたと推測されていました。しかし、近年ではウイーンに定住して間もない頃の1781年から1783年の間に書かれたと結論づけられました。先に触れたk.284と同じく、この作品がウイーンのクリストフ・トリチェッラから出版されたのは1785年です。したがって、奇しくも本日のプログラムは1780年代に前半に出版された作品をあつめたことになります。
ソナタ ニ長調 k.284は、「ミュンヘンのソナタ」のなかでも最も規模が大きく、また華やかな性格をもっており、ソナタ集の最後を飾るに相応しい作品と言えるでしょう。
第1楽章(アレグロ、4/4)は交響曲の冒頭を飾ってもおかしくない同堂々とした身振りの主要主題を持って始まります。第二の主題は弱音で繊細な動きを持っており、主要主題とは対比的です。「ポロネーズ風ロンドー」と題された第2楽章(アンダンテ、イ長調、3/4)は、フレーズの最後が3拍目に来るポロネーズの特徴を示したロンド形式の楽章。全体を図式化すれば「主要主題→第1エピソード→主要主題→第2エピソード(短調で始まり、後半は第1エピソードを利用)→主要主題→コーダ」となりますが、主要主題は現れるたびに変奏されていきます。
第3楽章は、2拍目からフレーズを開始することが特徴的な主題(アンダンテ、2/2)の後、12の変奏が続きます。モーツアルトの変奏曲における変奏の数はこの楽章のような12が最大ですが、中頃の変奏に短調の変奏(第7変奏)、最後から2番目の変奏にゆっくりしたテンポの変奏(第11変奏、アダージョ・カンタービレ)を置き、テンポを速めた最終楽章(第12変奏、アレグロ、3/4)で閉じるという、変奏曲全般に見られる全体の流れが、この楽章にも認められます。
ソナタハ長調 K.309の第1楽章(アレグロ・コン・スピリート、4/4)は、モーツアルトがウイーン時代を迎える前に書いたソナタの第1楽章としては最大の小節数を持っています。最初の主題はフォルテとピアノの対比が明確なもので、これは「展開部」で活用されるばかりか、楽章の終結部分でも利用されています。
第2楽章(アンダンテ・ウン・ポコ・アダージョ、ヘ長調、3/4)は二つの主題を使い、「主要主題→主要主題→第二の主題→主要主題の一部→第二の主題→主要主題」という構成を採っています。K.284の第2楽章のように、二つの主題は登場するたびに変奏が加えられていくのです。なお、モーツアルトの書簡には、この楽章が先述の「ローザ孃そっくりに」作曲されたとあり、音楽による肖像画として聴くこともできるかも知れません。「ロンドー」と題された第3楽章(アレグレット・グラツィオーソ、、2/4)は流麗な旋律を持つ主要主題を中心として、大まかにみて「主要主題→第1エピソード→主要主題→第2エピソード→→第1エピソード→主要主題→コーダ」という構成になっています。最後のコーダで静かに閉じられるのは、モーツアルトのソナタでは初めての試みです。
ソナタニ長調 K.311の第1楽章(アレグロ・コン・スピリート、4/4)は、同じ調で書かれたK.284の第1楽章にも似て、華麗な性格を基調に据えています。この楽章の再現部は非常に変わっていて、主要主題の再現が第二主題の後に置かれているのです(これは、マンハイムで活動していた作曲家たちがよく用いた構成方法でした)。第2楽章(アンダンテ・コン・エスプレッショーネ、ト長調、2/4)は、K.309の第2楽章と同じく、二つの主題が交互に現れます。最初の主題はフォルテの和音が愛らしい旋律に突然乱入することが特徴的なものですが、これは第二の主題でも姿を見せます。「ロンドー」と題された第3楽章(アレグロ、6/8)は、「主要主題→第1エピソード→主要主題→第2エピソード→主要主題→第1エピソード→主要主題→コーダ」と図式化出来る構成を採っています。第2エピソードは嵐のような激しい短調で始まりますが、次の主要主題の再現に入る前に、協奏曲を思わせるアインガング(小規模なカデンツァ)が置かれているのが特徴的です。
〈きらきら星変奏曲〉K.265の主題は、「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」という歌詞で始まる、18世紀後半に流行したフランス語の俗謡で、モーツアルト以外にも多くの作曲家たちがこの主題で変奏曲を書いています。K.284の第3楽章のように、この変奏曲も、モーツアルトとしては最大の12の変奏を持っています。シンプルな主題が多様なリズムや音型によって変化していきますが、ここでも短調の変奏(第8)、テンポを落とした変奏(第11)が組み込まれ、最後に拍子を3/4、テンポをアレグロにしたコーダ付きの最終変奏で閉じられます。
ソナタイ短調 K.310の第1楽章(アレグロ・マエストーソ、4/4)は、テンポ指示にあるように、「マエストーソ(荘厳)」な性格を持つ行進曲風の、しかし哀感漂う溜息のような音型も盛り込まれた主要主題に始まります。第二の主題は16分音符の動きがそれこそ休みなく続き、通常の第2主題とは趣を異にしているのです。
第2楽章(アンダンテ・カンタービレ・コン・エスプレッシーネ、3/4)やや遠隔なハ長調を採って、イ短調による両楽章との響き、性格の対比をまず強調します。起伏の大きい旋律が繊細な装飾音、細かく記譜された強弱やアーテキュレーション(語り口)によって色づけられていることも特筆されます。展開部において突如として噴出する激しい情念は穏やかさを基調とする楽章に強烈なインパクトを与えるでしょう。
第3楽章(プレスト、2/4)は絶え間ない8部音符の旋律が異様さを演出するロンドで、「主要主題→第1エピソード→主要主題→第2エピソード→主要主題→第1エピソード→コーダ」5と図式化できます。第2エピソードは安定したイ長調の楽節で、束の間の安息をもたらしますが、ここにおいても律動が止むことはないのです。
野平(のだいら)一郎(演奏とお話)
作曲家・ピアニスト。1953年東京生まれ。東京藝術大学、同大学院修士課程修了後、フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に学ぶ。
ピアニストとしては、国内外の主要オーケストラにソリストとして出演する一方、ミシェル・デボスト、アラン・マリオン、ピエール=イヴ・アルトー、ピエール・チボー、佐久間由美子、今井信子、竹澤恭子、など内外の多くのソリストと共演、室内楽奏者としても活躍。古典から現代まで幅広いレパートリーを得意としている。
作曲家としては、フランス文化庁をはじめ、スペイン文化庁、IRCAM、アンサンブル・アンテルアンテルコンタンポラン、ベルリン・ドイツ交響楽団などから数多く数多くの委嘱作品がある。2005年にはオペラ〈マドルガーダ〉(シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン音楽祭でケント・ナガノ指揮により初演)、2006年には歌曲集〈悲歌集〉(津田ホール委嘱)、チェロのための〈謎〉(ハンブルク・ムジークハレ委嘱)、チェロと管弦楽のための〈響きの連鎖〉(サントリー音楽財団委嘱)などが初演され、いずれも絶賛を博す。
2007年にはバッハ〈平均率クラヴィーア曲集〉をピアノ、チェンバロ、オルガンで演奏し、全曲録音を行った。3月にはロサンゼルスのMonday Evening Conncertsシリーズに指揮者、作曲家、ピアニストとして登場。8月にはザルツブルク・モーツァルテウム音楽院のレジデンス・コンポーザーとして招かれた。
水戸芸術館では、水戸室内管弦楽団の定期演奏会のシュニトケ〈合奏協奏曲第1番〉、バルトーク〈弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽〉(いずれも小澤征爾指揮)でピアノ奏者を務めたほか数々の企画に出演。毎年恒例のニュー・イヤー・コンサートでも冴えたピアノを聴かせている。
第13回中島健蔵音楽賞(1995年)、第44回尾高賞、芸術選奨文部大臣新人賞、第11回京都音楽賞実践部門賞(1996年)、第35回サントリー音楽賞(2004年)、第55回芸術選奨文部科学大臣賞(2005年)を受賞。2005年より静岡音楽館AOI芸術監督。
《レコード CDのことなど》
レコード、CDは自分の気に入ったものを聴いていればいいわけですが、評判のいい盤などを紹介します。モーツアルトのピアノソナタの盤は、古くはワルター・ギーゼキングの盤が好評でした。その後リリー・クラウス(ステレオ録音もありますが、モーツアルト生誕200年を記念してシャルランが録音したモノーラル録音が好評です。後、バレンボイムやピリスなどが全曲を録音しています。
今回のプログラムにあったピアノ・ソナタ第8番イ短調は、以前からディヌ・リパッテイ盤が圧倒的人気でした。私もこれは名盤だと思いますが、もう一つ、イ短調に限って言えば、グレン・グールドを推したいと思います。この曲は、モーツアルトが母の死を契機として作曲したという説もあります。グールドはモーツアルトのピアノソナタを全曲録音していますが、曲の解釈は独特です。有名な第11番「トルコ行進曲付き」K.331などはテンポが普段聴く弾き方とは大分違います。しかしイ短調はグールドはとても良いと思っています。あの有名な出だしからして、せっぱ詰まった感じが、曲の特徴をよく捕らえていると思います。いかがでしょうか。
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