演奏会に行ってきました「紀尾井シンフォニエッタ東京定期 ハイドン モーツアルトP協奏曲 バルトーク」(2007-46)
紀尾井シンフォニエッタ東京 第62回定期 紀尾井ホール 四谷駅 徒歩8分
2007年12月8日(土)2:00PM開演
指揮:広上淳一 ピアノ:伊藤 恵(けい) 紀尾井シンフォニエッタ東京 コンサートマスター:澤 和樹
《プログラム 印象 感想など》 プログラムノート:東条 碵夫
ハイドン:交響曲第60番 ハ長調 Hob.I-60「うかつ者」
モーツアルト:ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466 ピアノ:伊藤 恵
バルトーク:弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽 Sz.106
プログラムノート:東条 碩夫
広上淳一が紀尾井シンフォニエッタ東京(KST)の指揮台にに登場するのは、これが4年ぶり、2度目になる。
前回の演奏会を記憶だろうか?・R・シュトラウスの『クープランのクラヴサン曲による舞踏組曲』に始まり、トランペットのハーデンベルガーを迎えてのハイドンの協奏曲とハルトマンのコンチェルテイーノ、それにハイドンの『軍隊』という、一癖も二癖もあるプログラミングだった。ハイドンと近代の作品を組み合わせるのは、どうやら広上の好みらしいが、聴いてみると、これがなかなか好いものである。
今回も、ハイドン-モーツアルトのあとにバルトークへ飛ぶのは意外な感なきにしもあらずだろう。が、バルトークの『弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽』は、民族色をたたえながも、古典的秩序を回帰させたともいえる形式や響きの透明度を備えている。その意味でもこれを前2作と並べて聴いてみると、一種のおもしろさを感じさせるかと思う。
また、ハイドンの交響曲は広上が昔から得意としていたレパートリーで、日本フィルや札幌交響楽団などを指揮した見事な演奏を、これまで筆者も何度か聴く機会があった。今回の『うかつ者』ではちょっとしたコミカルな演出が見られるかもしれない。
そして伊藤恵は、意外にも今回が初めてのKST登場とのこと。ライフワークとして取り組んで来たシューマンのソロ作品レコーデイング・シリーズ「シューマニアーナ」も、先日第13集を出して、全巻を完結させた。相変わらず波に乗っている。今日の聴きどころの一つは、モーツアルトの「短調の協奏曲」での陰影を彼女がいかに表現してくれるか、という点にもあろう。
ハイドン:交響曲第60番ハ長 Hob.I-60「うかつ者」
Ⅰ. アダージョ-アレグロ デイ モルト Ⅱ.アンダンテ Ⅲ.メヌエット-トリオ Ⅳ.プレスト Ⅴ.アダージョ Ⅵ.フィナーレ:プレシッシモ
弱音がきれいな演奏。活気あるハイドン。6楽章で不協和音が響く。
ウイーンから約50キロ離れたアイゼンシュタット。そこにハンガリーの名門貴族エステルハージの館がある。その代々の君主は、芸術と音楽に並々ならぬ理解と情熱を持つ人であったという。
ハイドンは1761年(29歳)、領主パウル・アントン候に迎えられて同家の副学長となり、翌年同家を継いだニコラウス候のもとで1776年、楽長に昇進した。彼はそれ以降24年もの間、候の厚い庇護を受けながら、存分の作曲活動と演奏活動を展開していくことになる。
エステルハージ家所属のオーケストラは、20名を若干上回る程度の基本編成で、今日から見れば室内管弦楽団程度の規模だが、ホルン4本を擁していた時期もあり、当時としては決して小さくないオーケストラであった。しかもハイドンの厳しい薫陶の甲斐もあって、演奏水準もすこぶる高かったと伝えられる。
彼がこの時期に書いた交響曲が、いずれも当時としては大胆で斬新な作風を示していることからも、それは推察できよう。
1774年、客演の劇団により、ここで『うかつ者』というフランスの喜劇が上演された。ハイドンはその劇のために序曲や幕間(まくあい)の音楽、後奏の音楽などを作曲したが、そこから6楽章にまとめたのが、この『交響曲第60番』であった。この劇は、自分が花婿であることをすっかり忘れていたおっちょこちょいの男が、結婚式の当日になってそれを思い出す、というストーリーだそうだ。が、その他にも、そそっかしい連中が大勢いたことを描くかのように楽士たちが調律を忘れたまま演奏(スコルダトウーラ=調子外れ=変調弦で演奏)を開始してから、あわててチューニングを行い、また最初から演奏をやり直すという、コミカルな音楽も折り込まれている(第6楽章冒頭)
ともあれこの交響曲には、ハイドンならではの温かいユーモアが存分に示されている、といって誤りではない。いつまでたっても終止しないフレーズ(第1楽章)や、一種滑稽な主題(第2楽章)などもその一例といってよく、のちの『驚愕交響曲』にも通じる愉しさがあふれている。が、その一方第5楽章のアダージョには、夢のように美しい旋律の主題も登場するのである。これは実に印象深いだろう。
モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466
Ⅰ.アレグロ Ⅱ.ロマンス Ⅲ.アレグロ アッサイ
伊藤恵、赤味がかった、素敵な衣装で登場。30人規模のオケ、モーツアルトの協奏曲の伴奏にはちょうどよい規模。ホールに適した音量。キビキビした指揮、演奏。ころがるような、流れるようなきれいなピアノ演奏でとても良い。
モーツアルトのピアノ協奏曲は、旧モーツアルト全集では第27番を数えるが、このうち最初の4曲は他の作曲家のものからの編曲であり、彼の自作のピアノ協奏曲は、いわゆる『第5番K.175』から始まることになる。(この旧モーツアルト全集の番号は、その後の研究の過程で疑義も生じたため最近では使われないケースもある)。
それらの中で、いわゆる「短調による協奏曲」は、この『第20番』と『第24番ハ短調K.491』のみである(転調による個所や、第2楽章として挟まれた部分を除くことはいうまでもない)。モーツアルトの短調には、特別な意味と存在意義がつきまとう。特に器楽曲では、それが異様に強いインパクトを生んでいるため、そこにはなにか魔性的な、衝撃的なものを感じさせる、と昔から言われてきたものであった。ト短調の交響曲『第25番』と『第40番』、弦楽五重奏曲の『K.516』、そして2曲のピアノ協奏曲などはその好例であり、それらに触発された文学作品まで生まれているほどである。
この協奏曲『ニ短調K.466』にしても同様だ。冒頭シンコペーション(拍をずらせたリズム)で奏されるヴァイオリンと、幽かに行進曲調のリズムで入ってくる低弦とが醸し出す、神秘的で不安な雰囲気はいかばかりだろう。「モーツアルトの短調」の中でも、これほど暗鬱な気分に満ちた曲想は他に例を見ない。この行進曲調リズムは、第1楽章全体を通じて重要な役割を持つ。
第2楽章は「ロマンチェ」と題され、変ロ長調に転じてロマンテイックな曲想を示し、ひとときの安息を感じさせるが、第3楽章では再びニ短調に戻って嵐のように進む。ベートーヴェンがこの激しい精神力を持った作品に共感し、自らこの曲のためのカデンツアまで作曲したというのも、理解できよう。
もっとも、作曲当時のモーツアルトが、特に暗い状況にあったわけではない。これが書かれたのは、彼がウイーンに定住して4年後、1785年2月10日のことで作曲と演奏の両面に絶好調の時期であった。書いた翌日には、かねて予定されていた予約演奏会が開催され、彼は自らこの曲を初演した。翌日にはハイドンが訪ねてきて、父レオポルド・モーツアルトに「あなたの息子さんは、私の知る最も優れた音楽家です」と絶賛する。ハイドンはその1ヶ月前にも、モーツアルトの弦楽四重奏曲を聴いていたのだった。
バルトーク:弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽 Sz.106
Ⅰ.アンダンテ トランクイロ Ⅱ.アレグロ Ⅲ.アダージョ Ⅳ.アレグロ モルト
弦楽器、2群に分かれて配置。チェロは後方に。弦楽器が緊張した出だしを奏する。チェレスタが印象的。緊迫した演奏。4楽章は、ハンガリーの民謡の調べ?が聴こえる。テインパニーとピアノが印象的。すごい演奏でブラヴォーがかかる。
ハンガリー生まれのバルトーク・ベラ(日本と同様、姓が先に来る)は、若い頃から民族音楽に強い関心を抱き、その一方パリで聴いたドビュッシーの作品から印章派音楽の影響を受ける。そしてストラヴィンスキーの荒々しい原始主義、シェーンベルクの理論的な作風などからも、時期によってさまざまな形で影響を受けた。1930年代半ばには、彼の創作力は著しく高揚し、アメリカ移住(1939年)までの間、それは絶頂期に達していた。
そのさなか、1936年に作曲されたのが、彼の最大傑作の一つと呼ばれる、この『弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽』だったのである。これは現代音楽の紹介に功績を示した伝説的な指揮者、パウル・ザッハーの援助を受けて作曲された。
楽器構成は、ハープとピアノも加わっての、かなり多彩なものである。弦楽器群が二つのグループに分かれているのも特徴だ。作曲の技法も、当時のバルトークの張り切った感覚を反映して、実に緻密極まるものである。
アンダンテの第1楽章では、主題が最弱奏の第1・第2ヴィオラにはじまり、これに次々と弦楽器が加わって量感を増していくが、新しく入ってくるパートは、それぞれ5度ずつの音程で上下に拡がっていくという趣向が採られている。
第2楽章ではアレグロに変わり、テインパニーの活躍が目立ち、主題も目まぐるしく飛躍を続ける。第3楽章はアダージョとなり、シロフォンが雅楽の拍子木にも似たリズムを打ち出すのも面白く、チェレスタやハープ、ピアノのグリッサンド(音階を滑らせるように急速に奏する方法)に弦のトレモロが加わるあたりには幻想的な雰囲気があふれるだろう。そしてこの楽章から強くなりはじめたハンガリー音楽の民族的なカラーは、急速な第4楽章にも引き継がれる。
なお付記すれば、第1楽章では「黄金分割」の手法が活用されているという指摘が昔からなされている。これは2つの部分の比が、a:b=b:(a+b)となる分割法で、数列に置き換えれば、2項の和が次の項になるということから「1、3、5、8、13、21、34、55・・・・」となるのだが、バルトークはこれを主題の入りに応用した。つまりクラシック音楽の定型である2、4、8、16小節ごとの変化でなく、開始から5小節目で第2声が入り、8小節目第3声が、13小節目で第4声が入り、21小節目で推移部に入り、34小節目で弦が弱音器を外すと同時にテインパニーが入り、55小節目に頂点に達する・・・・という仕組みである(実際には少しずれがあるのだが)。
第2楽章でも、スコアの視覚の上では、図形が規則正しく順番に積み重ねられ、連続していくような感をあたえている。バルトークはこのように、すこぶる凝った趣向を折り込んでいたのであった。
《演奏者 プロフィール》
指揮:広上淳一
東京音楽大学指揮科に学ぶ。1984年第1回キリル・コンドラシン国際青年指揮者コンクール優勝。・・・・・以降フランス国立管やベルリン放響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、モントリオール響、イスラエル・フィル、ロンドン響、ウイーン響など世界的なオーケストラに客演。1991~95年にはスエーデンのノールショピング響、1998~2000年にはオランダのリンブルク響の各主席指揮者、1997~01年ロイヤル・リヴァプール・フィル主席客演指揮者を歴任。・・・・また1991~2000年には日本フィルの正指揮者を務めて、1996年の欧州演奏旅行を指揮。これまでにヴァンクーバー響、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルデイ響、サンクトペテルブルク・フィル、ボルテイモア響、N響、シンシナテイ響、ライプテイヒ・ゲヴァントハウス管、ポーランド放響、スロヴァニアフィル、サン・パウロ響等を指揮。また今年はサイトウ・キネン・オーケストラにも客演した。
一方オペラ指揮の分野でも1989、90年シドニー歌劇場におけるヴェルデイの《仮面舞踏会》や《リゴレット》が高く評価されたのをはじめ、最近では藤原歌劇団公演《椿姫》、関西二期会公演《フィガロの結婚》、日生劇場《後宮からの逃走》、《利口な女狐の物語》等が記憶に新しい。
現在、コロンバス交響楽団音楽監督、東京音楽大学教授、2008年より京都市交響楽団常任指揮者に就任予定。
ピアノ:伊藤 恵
幼少より有賀和子氏に師事。桐朋学園高校を卒業後、ザルツブルク・モーツアルテウム音楽院、ハノーファー音楽大学でハンス・ライグラフ氏に師事。1979年エビナール国際コンクール第1位、1980年J.S.バッハ国際音楽コンクール第2位、クルト・ライマーコンクール第1位、、1981年ロン=テイボー国際音楽コンクール第3位、及び特別賞と数々のコンクールに入賞。1983年第32回ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ部門で日本人として初の優勝、・・・・・
録音では、ライフワークとしてシューマンを追い続け、「シューマン:ピアノ曲全曲」「シューマニアーナ」1~13をを発表。・・・・・1993年日本ショパン協会賞、1994年横浜市文化賞奨励賞受賞、2003年より東京藝術大学助教授。
紀尾井シンフォニエッタ東京
1995年、紀尾井ホールのオープニングと同時にレジデント・オーケストラとして設立。初代主席指揮者/ミュージック・アドヴァイザーの尾高忠明のもと、国内外の第一線で活躍する日本人演奏家たちが終結した。
本番会場でリハーサルを行うという理想的な条件を生かした、極めて精度の高いアンサンブルを誇り、わが国を代表する室内オーケストラとして高い評価を得ている。2000年に初のヨーロッパツアーを敢行、2005年にドレスデン音楽祭への招聘等、国内はもとより近年は海外への演奏活動も積極的に行っている。
桂冠名誉指揮者:尾高忠明
リーダー:澤 和樹、豊嶋泰司、原田幸一郎
《レコード CDのことなど》
レコードやCDは、自分の気に入ったものを聴いていればいいわけですが、私の知っている範囲で少し紹介します。
ハイドンの交響曲
以前は、後期の名前付きの交響曲の録音や演奏が多かったようです。トスカニーニ、クレンペラーやクナーパーツブッシュ、セル等の評価が高かった記憶があります。最近では古楽器による演奏や録音が増えてきて、評価が高くなっているようです。また初期の交響曲の録音も増えてきています。
S.クイケン指揮ラ・プチットバンドやブッリュッヘン指揮18世紀オーケストラ、アーノンクールの指揮などが評価が高い。しかし、ラ・プチットバンドと18世紀オーケストラでチェロを弾いていた鈴木秀美が創設し、音楽監督・指揮をしている古楽器の室内オーケストラ「オーケストラ・リベラ・クラシカ」が注目できると考えています。鈴木秀美は、ハイドンの交響曲全曲演奏を目指しており、リベラ・クラシカの定期では必ずハイドンの交響曲をプログラムに組み、毎回演奏し、次回の演奏会までにCDにしています。私も定期会員で聴いていて、数回ブログで紹介しましたが、いつも生き生きした演奏で素晴らしい。街のレコード・CD店でも買えますが、リベラ・クラシカの演奏会場では概ねCDの出張販売があり、求めやすくなっています。
モーツアルト:ピアノ協奏曲
夥しいCDが出ていて、自分の好きな演奏を聴いていればいいわけですが、20番ニ短調の協奏曲は、「21世紀の名曲名盤」音楽之友社(2003年10月刊)では10人の音楽評論家の評価では、1位が17点でピアノ:クララ・ハスキル、指揮:マルケヴイッチ、ラムルー管弦楽団、2位が15点でピアノ:グルダ、指揮アバド、ウイーンフィル、3位が10点でピアノ・指揮バレンボイムとなっています。
バルトーク:弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽
バルトークの曲の演奏では、やはりハンガリー系の指揮者の演奏が評価が高いようです。以下「クラシックのCDの名盤・演奏家篇」文春新書(文藝春秋社 平成12年10月刊)中野雄(たけし)記より
「ハンガリー系の指揮者群像~フリッチャイ、ライナー、セル、オーマンデイー、ショルテイとその名を連ねると、自ずから特定の指揮者像が浮かび上がる。仮借ない完全主義者であること、抜群の耳と統率力の持ち主であること、フリッチャイを除く5人が音楽の新興国アメリカにおいて瞠目に値する成功を収め得たこと、そして6人全てがハンガリー出身であること。この現象はたして偶然であろうか。これに継ぐ成功者であるドラテイ、ドホナーニと、「この人が生きていたら指揮界の地図が変わっていたろうにと~」と今もって哀惜の想いで語られるケルテスを加えたら、20世紀中葉においてハンガリー系の指揮者が楽壇でどれだけ大きな地位を占めていたか、驚かない愛好家はいないだろう。(それに比べ、現状の何と寂しいこと!)」
「21世紀の名曲名盤」音楽之友社(2002年10月刊)では、10人の音楽評論家の評価では、ブーレーズ指揮シカゴ響が18点で1位、フリッツ・ライナー指揮シカゴ響が15点で2位となっています。なお「管弦楽のための協奏曲」では、ライナー指揮シカゴ響が19点で1位、ショルテイ指揮シカゴ響が15点で2位となっています。
私はピエール・モントウーの次に好きな指揮者はフリッツ・ライナーでした。今も変わりませんけど。「クラシック 不滅の巨匠たち」音楽之友社(1993年7月刊)(諸石幸生記)によると「楽員を最小限の動きで自分に集中させるという独特の指揮法を身につけ・・・・」ということで眼で指揮したと言われていたそうです。「ライナーは、オーケストラにいささかも妥協することがなく、ミスは一切認めず、リハーサルもトスカニーニばりの厳格さが求められたといわれている。」
前出の「21世紀の名曲名盤 究極の決定盤」(音楽之友社 2002年10月刊)によると、この曲(バルトークの曲)の場合、選び方が難しいのは録音がある程度新しくないと作品的に辛いところがあることで・・・1955年録音のライナー盤が入ってきたのはこの演奏がXRCDで発売されて、その録音の良さが見直されたということによる影響があるのでしょうか。
「管弦楽のための協奏曲」について。(前掲書 柴田龍一記)「ライナー時代のシカゴ響は、トスカニーニ/NBC響にほとんど切迫する水準に達していたと言っても過言ではないだろう。そして不世出のバルトーク指揮者であったライナーが、手兵の奇跡的アンサンブルをあますとろなく活用して綴りあげたこの演奏では、厳しくコントロールされた表現のなかで繰り広げられる高次元の音楽的遊びがすばらしく、さらに管楽器奏者たちの見事な名人芸の開陳もが光彩を放っている。
「弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽」について。(前掲書 柴田龍一記)「筆者は、ライナーこそこれまで最高のバルトーク指揮者であったと考えているが、これは彼のそうした資質が最高度に発揮された超ド級の名演である。この演奏では、単にアンサンブルがパーフェクトなだけでなく、テンポとデユナーミクの設定や音色配合のバランスもがパーフェクトであり、アーテイキュレーションの精確さも非の打ちどころのないものになっている。まさに歴史的名演であり、最も理想に近い演奏にほかならない。
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